ヘドロ
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第六章
「ヘドロになってもな」
「まだですね」
「最初の頃はいるけれどな」
「ヘドロがどんどん腐っていくと」
「遂にはな」
達也は唯和に真剣な顔で話した。
「どんな生きものもな」
「いなくなるってことですね」
「細菌も何もなくなってな」
その腐った中でというのだ。
「それでな」
「誰もいなくなる」
「ああしてな」
「そういうことですか」
「ああ、だからな」
それでというのだ。
「最後の最後にはな」
「誰もですね」
「いなくなるんだよ」
「それで係長も言われたんですね」
「最初にな、じゃあ後はな」
「どうしますか?」
「マンションの管理人もな」
肝心のこの人物もというのだ。
「マンションに住んでいてな、生きていた頃は強盗と強姦を繰り返したらしいけどな」
「管理人も大概だったんですね」
「酒で死んだらしい」
「そうですか」
「管理受け継ぐ人もいなくなった、都庁の管理になった」
「じゃあ」
「中を掃除してな」
そしてというのだ。
「後は取り壊しだ」
「そうなりますか」
「跡地はまたな」
「おいおいですね」
「別の人がマンションを建てるかどうなるか」
「それはですか」
「またこれからのことだ」
そうなるというのだ。
「本当にな」
「そうですか」
「けれどあのマンションはな」
「中を掃除されてですか」
「流石に死体とかばかりだとどうにもならないだろ」
「ですね、やっぱりほったらかしなんですね」
死体やそうしたものがとだ、唯和も言った。
「殺し合ったりエイズとかで死んだままで」
「ああ、腐った死体とかもな」
「本当にほったらかしだったんですね」
「だから変な病気も流行ったんだよ」
マンションの中でというのだ。
「そこからもどれだけ酷い場所だったかわかるだろ」
「はい、よく」
唯和は達也に顔を顰めさせて答えた。
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