レーヴァティン
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第百三十一話 追撃戦その五
「奇襲を返り討ちにしてな」
「そのうえで」
「さらにだ」
「追撃を行いますね」
「そうしてな」
「敵を叩き」
「ここで敵の軍勢に大きな打撃を与え」
またこう言うのだった。
「以後の九州攻めを楽にする」
「そうしますね」
「ではな」
英雄はあえて軍勢を進ませた、そうして森と森の間の道に軍勢が入り森の端から端にまで至ったところで。
英雄は撃て、と命じた。すると。
森の方に炮烙が放たれた、そして術や弓矢も。
それで森の中に攻撃を仕掛けそこから悲鳴が聞こえる中で。
今度は鉄砲、炮烙と弓矢の攻撃の間に弾を込めさせていたそれを撃たせた、そうして敵に大きな一撃を与え。
その後で森から逃げる兵達はあえて逃がさせて敵の主力への追撃を速めた、すると遂に英雄の目の前に。
敵軍が見えた、それで英雄は言った。
「よし、ではだ」
「これからですね」
「敵軍を叩く」
こう良太に答えた。
「一気にな」
「そうしますね」
「そしてキリのいいところまでな」
「敵を倒し」
「徹底的に叩く、倒した兵は後で蘇らせて」
そうしてというのだ。
「自軍の兵に入れる」
「いつも通りそうしますね」
「捕虜にした敵もだ」
彼等もというのだ。
「こちらの兵に組み入れる」
「そうしますね」
「そしてだ」
「敵の戦力を奪い」
「こちらの戦力はな」
「増やしますね」
「俺は兵を殺すことはしない」
これまでもそうだったしこれからもというのだ。
「決してな」
「それはですね」
「俺にとっては論外だ」
「では」
紅葉が言ってきた。
「降った敵兵や城の敵兵を皆殺しにすることは」
「一切しない」
「左様ですね」
「そんなことをしてもな」
それこそという言葉だった。
「こちらの戦力が増えない」
「だからですか」
「しない、それに殺す労力も無駄だ」
こうも考えているのだった。
「そんな労力があればな」
「味方に組み入れる方にですね」
「使う」
その労力をというのだ。
「そうする」
「左様ですね」
「戦国時代でも大抵そうしていた」
「はい、多くの戦国大名は」
紅葉も答えた。
「そうしてです」
「領地を手に入れてな」
「兵も増やしていきました」
「そもそも兵は領民だしな」
「浪人を雇い入れる場合もありましたが」
多くは領民であった、領民をみだりに殺しては誰が土地を耕し商いをするかとなるから領民である兵も殺さないのだ。
「しかし」
「大抵は領民だった」
「その領民を殺すことにもなりますし」
「俺は兵農分離だがな」
「それでもですね」
「兵は貴重だ、その兵を殺すなぞ」
それこそというのだ。
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