戦国異伝供書
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第六十四話 婚礼の話その六
「よいな」
「何かことが」
「どんどん動いておるな」
「そう感じております」
「そういうものじゃ、世の中は」
雪斎は竹千代にまた優しい声で話した。
「動く時はな」
「この様にですか」
「どんどんとな」
今竹千代が言った様にというのだ。
「動くものでもある」
「そうなのですか」
「人だけでなく世もな」
「世もですか」
「先の幕府が倒れた時を見るのじゃ」
「鎌倉の」
「あの幕府は瞬く間に滅んだであろう」
「はい、そして」
竹千代は雪斎のその言葉に静かに答えた。
「室町にです」
「幕府が立ったな」
「一度後醍醐帝の親政となり」
「ここまで僅か数年であった」
「そのことを見ますと」
「まさにじゃ」
人だけでなく世もというのだ。
「動く時はな」
「瞬く間にですか」
「動いてな」
そうしてというのだ。
「変わったりするものじゃ」
「そうなのですか」
「そしてお主もな」
竹千代もというのだ。
「然りじゃ」
「変わる時は急に変わるのですな」
「そういうことじゃ、そしてよいものなら」
「変わることが」
「それなら受け入れることじゃ」
「そうしてよいですか」
「うむ、ただそれが悪いものなら」
雪斎はこの時のことも話した。
「己の力で変えよ」
「その悪い運命を」
「そうせよ、運命は絶対のものかというと」
それはとだ、雪斎は竹千代に今度は神妙な顔で話した。
「そうでもない」
「変わるものですか」
「変えられるものでもある、堕落すればな」
「その運命は悪くなり」
「努力すればな」
「よきものとなる」
「そういうことじゃ、だから悪い運命はな」
それに対してはというのだ。
「努力してじゃ」
「変えるとよいですか」
「うむ、是非な」
「さすれば」
「お主はよい運命を進める」
それが出来るというのだ。
「悪い運命を変えてな」
「左様ですか」
「だから努力せよ、よい運命の流れの時も」
「その時もですか」
「努力すれば尚更な」
「よいものになりますか」
「左様じゃ、だからな」
それ故にというのだ。
「お主は常に努力せよ」
「わかり申した」
竹千代は雪斎の言葉に確かな顔で頷いた、その後は義元そして雪斎と共に茶を飲み話を進めた。妻を迎えるのは彼だけでなく。
彦五郎もで彼は竹千代に笑って話した。
「助五郎殿の姉妹の方をな」
「彦五郎様のですか」
「正室にとな」
「お話が来ましたか」
「うむ」
その通りという返事だった。
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