| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

戦国異伝供書

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第六十四話 婚礼の話その四

「とりわけ」
「良縁の中でもですか」
「うむ、特によいな」
 そうしたというのだ。
「それを用意しておこう」
「左様ですか」
「そしてじゃ」
 雪斎は竹千代にさらに話した。
「幸せになるのじゃ」
「それがしは」
「そうじゃ」
 まさにという言葉だった。
「家のことでもな」
「その為にも」
「よき縁を用意しておく」
「家柄だけでなくな」
 義元も優しい笑みで話す。
「顔立ち、心もじゃ」
「どれもですか」
「よき者を考えておる、そしてじゃ」
「それがしは」
「その奥と共にじゃ」
「よき家をもうけ」
「子も多く為すのじゃ」
 やはり優しい顔で言う。
「よいな」
「はい、それでは」
「しかしどうもお主は」
 ここで義元は竹千代の顔を見てこうも言った。
「おなごが好きな様じゃな」
「はい、この者の相を見ますと」
 雪斎も義元に述べた。
「どうもです」
「おなごが好きじゃな」
「その相です」
「やはりそうか」
「かといって軽はずみではなく」
「節操もでおじゃるな」
「備えている様なので」
 それでというのだ。
「深く思うことはないかと」
「あくまで好きなだけじゃな」
「それこそ殷の紂王の様にです」
「そうしたな」
「乱れたものではない様なので」
 それでというのーだ。
「特にです」
「気にすることはないか」
「女色も。男色もですが」
「とかく色はでおじゃるな」
「はい、乱れていなければ」
「好きでもでおじゃるな」
「かえってよいものかと」
 こう義元に話した。
「それは子を為すことになりますので」
「だからかえってよいのでおじゃるな」
「拙僧はそう考えます」
 まさにというのだ。
「その様に、そして竹千代には」
「よき奥と結ばせ」
「子もでおじゃるな」
「多くもうけてもらいましょう」
「それがいいでおじゃるな、しかし和上は」
 義元は笑って雪斎にこんなことも言った。
「随分と竹千代のことにも世話を焼いているでおじゃるな」
「そう思われますか」
「その通りでおじゃるな」
「自慢の弟子であります故」
 それでと言うのだった。
「ですから」
「それで、でおじゃるか」
「はい、弟子は公平にですが」
「竹千代はでおじゃるな」
「今川家の執権となる者なので」
「念入りにでおじゃるな」
「教え」
 そしてというのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧