恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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第七十七話 ビリー、丈に挑みかかるのことその十二
「俺達の世界じゃな」
「普通にやってるけれどな」
「そうなの?こんな面白いのが普通になの」
「そうだけれどな」
「普通にな」
「ううん、あっちの世界って凄いの」
于禁はあちらの世界にだ。興味を見せていた。
そしてだ。こんなことを言うのだった。
「沙和もあっちの世界に行ってみたいの」
「ほんまやな」
李典も彼女のその意見に同意して頷く。彼女もトランプに興じている。
「あっちの世界もごっついおもろいみたいだしな」
「ああ、はっきり言って面白いぜ」
「かなりな」
「そうか。面白いか」
楽進もいた。彼女も一緒に遊んでいる。
「なら一度縁があれば」
「ああ、来るといいさ」
「あっちの世界でも楽しくやろうな」
「そうするとしよう。ただ、だ」
ここで首を捻る楽進だった。そうして言う言葉は。
「貴殿達がこうしてこの国に来ている理由はわからないがな」
「どうしてだろうな、それ」
「本当にな」
それはだ。誰にもわからなかった。
ただこのことはだ。ケンスウこの言葉で終わった。
「まあそれはそのうちわかるやろ」
「そのうちか」
「わかるか」
「ああ、わかるで」
能天気に言う彼だった。
「何も理由なくてこんなに大勢来る筈ないしな」
「まあそやな」
それはその通りだと頷いたのは李典だった。
「理由なくてこんだけうじゃうじゃ来ましたってある意味怖いで」
「そやろ?そやったら今はや」
「面白おかしく過ごすのがええな」
「そういうものか?」
真面目な楽進は彼等のそうした話には眉を少しばかり顰めさせて言う。
「何故来ているのか。考えなくていいのか」
「ええって。考えてわかるもんでもなさそうやし」
だからだと返す李典だった。
「考えてわかるんやったらええけれどな」
「そうなるか。それではだ」
「ああ、トランプだけやたったらあれやし」
ケンスウが笑いながら話す。
「何か食うか?」
「では麻婆豆腐でも」
楽進が言うのはこれだった。
「食べるか」
「それかいな」
「駄目だろうか。若しくは益州風のラーメンだが」
「凪は相変わらず辛いの好きやなあ」
李典がそんな楽進に呆れた様な笑いで言う。
「こうしてトランプしながらそういうのはちょっとなあ」
「では何がいいのだ?」
「肉饅やろ」
ケンスウはそれを推した。
「それがええやろ」
「ふむ。肉饅か」
「それかサンドイッチだな」
ブラックホークはそれを出す。
「そういうのでどうだ?」
「餅もいいぞ」
リョウが言うのはこれだった。
「あれは手軽に食べられるしな」
「とにかくあれなの。トランプしながら食べられるのがいいの」
于禁はそれだというのだった。
「そういう食べ物がいいの」
「とにかく何か食おうで」
ケンスウがまた言った。
「肉饅あるか?」
「ほい、どうぞ」
李典は何処からともなくだ。皿に盛り上げられた肉饅の山を出してきた。
「食おうか」
「サンドイッチあるか?」
「これやろ?」
今度はだ。皿に盛り上げられたサンドイッチが出た。
「サンドイッチって」
「そうだよ、それだよ」
ブラックホークは笑顔でそのサンドイッチに応えた。
「それがサンドイッチなんだよ」
「そうやねんな。何か色々な食べ物があるんやな」
「あるんだよ、これがな」
ブラックホークは楽しげに笑いながら応える。
「俺達の世界にもな」
「美味いな」
楽進はそのサンドイッチを食べながら話す。
「手も汚れない。いいものだ」
「餅もどうだ?」
リョウは餅を出していた。つきたての丸いそれをだ。笑顔で食べている。
「美味いぞ」
「餅は二種類あるの」
于禁はまた話す。
「お米の餅と麦の餅なの」
「これは米の餅だけれどな」
「どっちも美味しいの」
于禁は笑顔で話しながらその米の餅を食べている。そのうえでの言葉だった。
「じゃあ食べながらなの」
「よし、トランプな」
「やろうで」
こうしてだ。出陣を前にしてリラックスしている彼等だった。その彼等にも不安はあった。だがそれ以上にだ。仲良く楽しく過ごしている彼等だった。
第七十七話 完
2011・4・17
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