魔法少女リリカルなのは~とある4人の転生者~
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第7話 一難去ってまた一難
前書き
今回から数話はオリジナルです。
「テメェらふざけてんじゃねぇぞ!」
「あり?どうしてこうなったんだろ」
「調子に乗って笑いすぎたさ…」
「この馬鹿共が…」
マジギレ状態の自己陶酔者にこの状況を作り出した張本人、調子に乗って火に油を注いだ馬鹿。…そして帰ろうと思ってたら巻き込まれた俺。…欝だ。
「とりあえず落ち着いた「うるせぇ!」…もう帰って「お前もさっき俺のこと馬鹿にしただろうが!」鬱だ」
「うわぁ、サクやんがばっさりと…」
「相当怒り心頭みたいだね」
「やい、そこの馬鹿2人!元はといえばお前らのせいなんだが!?お前らが余計なことしなけりゃ帰れたんだぞ俺!」
そろそろ、本格的に逃走したくなってきたんだがなぁ。窓から出たいがここから飛び降りたら間違いなくセカンドの奴に絡まれる理由が増えるよなぁ。…しかたない。もう一方のほうを使…
「サクヤ君まだいる?」
「あれ、トウカ?」
おうと思ったら、聞きなじみのある声と共に扉が開いた。声の主は、悲しいことに離れ離れになってしまった我が友人だった。
「まだいたんだね」
「まあ、色々あってな。にしてもどうしたんだ?」
トウカは教室に入ると俺の姿を認めて近づいてくる。…この空気に何のためらいもなく。
「一緒に帰ろうと思って。あとサクヤ君の友達にあってみようと…3人(・・)が?」
3人…多分俺の後ろでさっきまでにらみ合っていた奴らのことだろう。
「南海海斗さ」
「西嶋晴信。よろしくね」
喧嘩してる最中だったのも忘れたのか二人とも暢気にトウカに自己紹介してやがるし。
「俺は北郷一輝って言うんだ。よろしくな(ニコッ」
ついさっきまで険悪な雰囲気出してたセカンドがトウカに笑顔を向けていた。…お前変わり身早すぎだろ。いや、確かにトウカを前にすれば取り繕うのも分かるが、お前嫁がいるんじゃなかったのか?まあさっきの雰囲気が立ち消えになったのは助かったが。
「わたしは神咲冬華。サクヤ君のお友達です。みんなよろしくね」
「違う。2人だ。ついてない人間と大馬鹿野郎は許容範囲でもナルシストは許容範囲外だ」
「…っ、なんだと!誰がナルシストだ!」
「今日の行動を振り返ってそれでも思い当たらないなら筋金入りのナルシストさ」
「自覚できないほど酔ってるって言うのが一番性質が悪いよね」
「俺としては異常という点から見るとお前らもコイツとそうは変わらん気がするが」
「サクヤ君も千秋さんのこと言える立場じゃなくなってきたね」
「それだけは勘弁して!!」
トウカさんやい、人が考えないようにしていることをズバッと言わないでいただけませんか?
「ああ、それはいえてるさ」
「というよりも東堂家の交友関係が異常なんじゃない?」
「否定できない!」
てか、お前ら!言っておくけどお前らもその変人コミュニティに含まれてんだぞ?特に俺個人に限ればダントツだからな!?と心の中でつっこんでおく。
「って、あれ?電話だ」
ちぃさんに緊急用と言われて持たされていた携帯電話が鳴り出した。
「もしもし、ちぃさん?」
『あ、朔也。今日これから大事な(・・・)用があるから急いで戻ってきてくれる』
「え、分かった。今から学校出る」
『出来る限り急いでね!』
ちぃさんの急かす声を最後にブツっと音を立てて電話が切れる。
「すまんが俺は用事が出来たんで急いで家に戻る。というわけで事態の収拾はお前らに任せる!トウカ途中まで帰ろう」
「あ、うん」
トウカの手を掴んで走り出す。その後ろから…
「あ、テメ、逃げんのか!」
「サクやん!?丸投げは無しさ!って、ハルまで何逃げようとしてるんさ!?」
「アディオス!トウ!!」
そんなにぎやかな声と何かが広がる音が聞こえたがそのまま外に出てトウカと分かれ道まで来る。
「何とか逃げ切れたか」
「やっぱり喧嘩してたんだ」
トウカがジト目を向けてくるが、気づかないフリだ。
「今日は忙しくてあんまり話せなかったけど、明日はいっぱい遊ぼうぜ!」
「はぁ、なんか無理やり話を逸らそうとして…まあいいか。ちなみにサクヤ君明日休日だよ?」
トウカがさらにジト目を向けてきてとうとうお手上げになった。
「…スイマセン。さっきは助かりました。今後は口に気をつけます」
実際に原因となったのは馬鹿2人なんだが、助けてもらった礼と反省はしておく。でないとトウカの機嫌を損ねてしまう。
「わかればよろしい。って、そういえばサクヤ君急いでるんじゃなかったの?」
許してもらえた様で何よりだが…そういえばそうだった。
「サンキュー、すっかり忘れてた。じゃあなトウカ!」
「さよなら。気をつけてね!」
「おう!」
トウカの挨拶を背に受けて走って家に向かう。たどり着いたのは先程の電話からそう時は経っていなかったがついたときにはちぃさんは準備が出来ているようで黒いコートを着ていた。
「ただいま」
「おかえり。ハイ、コレに着替えてね」
と黒い服っぽいものの一式を渡された。
「わかった。すぐ着替えてくる」
「あと、危なからあまり邪魔になるようなものは持っていかないようにね!」
服を抱えて階段を上っている俺の背から聞こえた声に若干ではあるがいやな予感がした。
「危ないね…そういえばこの間ハルから『黒鍵』とか言う試供品の装備渡されたっけ?」
カソックっぽいものに着替えた後先程のちぃさんの言葉を思い出しソレと同時にハルからもらった装備―――ファーストの発案―――を引っ張り出してくる。それは剣の『柄』の部分だった。
「魔力を流すと発動するんだったっけ」
事前に受けた説明を思い出して柄に魔力を注ぎこむと刀身が一瞬にして形成される。ファースト曰く投擲用の剣だそうだが柄が短いのだ。ソレはそうだろう。あと、フォースが改造したせいか投擲後の魔力による内部破壊機能もついたらしい。一応折れても魔力を注ぎ直せば使い回しできるとのことなのでいくつか持っていくことにしてカソックの内側に十数本ほど収納する。
「こんなもんか。危険なことってなんだ?」
心当たりがないわけではない。むしろ一つある。だが、本人も説明せずに連れて行くことはないと断じて部屋を出て玄関に向かう。
「遅くなってゴメン。こっちは終わったよ」
「あら、予想より少し早いくらいよ。気にしなくていいわ」
玄関には俺を待っていたであろう、ちぃさんが先程まではなかった竹刀袋を肩にかけていた。ふと、ちぃさんが俺の顔を見て何かに気づいたようだ。
「聞きたいことはあるかもしれないけどまずは急いで移動するわ。人を待たせているから」
と言っていつもとは違った雰囲気でテキパキと外に出る。…今回は鍵をかけ忘れなかった。その後家を出た俺達は庵治戸につながるマンホールがある臨海公園に辿り着いた。
「目的地ってここ?」
「正確には集合場所よ。もう着てるはずなんだけど…」
とちぃさんが辺りを見回してある一点で目を留める。そちらの方向を見るとそこにはカソックに身を包んだ銀髪の青年が立っていた…巨大な棺桶を持って。
「ハァイ、レオ!」
「…久しいな東堂千秋」
元気にあいさつをしたちぃさんに対して嫌そう(そう見えた)に返事を返すレオ神父。
「なにをそんな嫌そうな顔をしてるのよ」
「…自分の胸に手を当ててよく考えてみろ」
「…セクハラ?」
「くたばってしまえ。で、そちらが?」
ちぃさんとの応酬に心底疲れたと言った風にため息をついたレオ神父が俺に目を向ける。
「そう、わたしのかわいい甥っ子の東堂朔也」
「東堂朔也です。心中お察しします」
「この町の教会に赴任しているレオンハルト・ブロウニングだ。…なるほど君も被害者か」
「2人とも人をなんだと思ってるのかな?」
いや、アンタの被害にあっているであろうレオ神父にシンパシーが芽生えて…俺の場合は主にちぃさんの交友関係でだけど。
「それよりも、急ぐとしよう。足は用意してある。ついて来い」
レオ神父が身を翻して海のほうへ向かう。
「ここだ」
と言ってそのまま柵を飛び越えて海に落ちた…のではなく海に浮かんでいた大き目の船の上に飛び降りた。
「…」
「いくわよ、朔也!」
そのまま勢いで飛び乗る俺とちぃさん。正直言うとツッコミたい。色々と。だがそんな間もなく船は出る。
「さてと、乗ったわけだし着くまでに朔也に軽く現状の説明をしておこうかな」
「…ちょっと待て。お前何も教えずにこの少年を連れてきたわけではあるまいな?」
ちぃさんの一言に凍りついたように固まるレオ神父。…嫌な予感しかしないのだが。てか、ちぃいさん目逸らしてるし、ソレ見たレオ神父が青筋浮かべてるし。
「えっと、どういうこと?」
「ああ、簡単に言うとね今からゾンビ狩りにいきます!」
俺が問いを投げかけると、ちぃさんが俺に振り向いてとんでもないことを抜かしてきた。
「…はぁ!?」
「や、だからゾンビ狩りだって…イタッ!」
あまりにもいい加減な説明に腹に据えかねたらしいレオ神父の鉄拳が落ちた。
「馬鹿もんが。いきなりこんなこと説明してついていけると思ったのか?」
「でも、朔也は異形とかの事情知ってるし基本的なことは大丈夫なはずだよ?」
「ッ!?」
頭を抑えながらちぃさんが言った言葉に動揺が走った。
「なんで、ちぃさんがそれを知ってるの!?」
「さすがに素人の隠し事なんてプロからすればバレバレだよ?」
「どこまで?」
「公園で初めて海斗君たちと会った時に海斗君が結界使ってたのとか毎朝神社でやってる朔也の修行とか冬華ちゃんが君に退魔師について話したのはあらかた知ってるよ。まあ、わたしの人脈下に限るけど」
…しまった。そういえばこの人の交友関係が俺の交友関係に食い込んでいるのをすっかり忘れていた。
「なるほどね…てか、ちぃさん何者?」
「それは後でね。というわけだから私見とはいえ実力は申し分ないと思うんだけど」
ちぃさんは俺の質問をはぐらかしてレオ神父に目を向ける。
「しかし、朔也君は実戦を積んでいないだろう?」
「だからこその今回の投入なの。あの町にいる以上絶対に巻き込まれる。だったら今の内に慣れさせておいたほうがいいと判断したのよ」
「まあ、そうだが…初実戦がこれとは」
ちぃさんが不吉なことを言っているがレオ神父は釈然としていないようだ。
「さっきから気になってるんだけど、何しにいくの?」
さっきの大雑把と言うにも遠い説明では待ったく分からないのでもう一度聞く。
「簡単に言うと吸血鬼のせいで島全体がゾンビ化してるところに殴り込みに行ってその原因ぶっ潰そうみたいな?」
スゲェ笑顔で言い切りやがったよこの人!疑問系でも絶対内心ではぶっ潰すで言い切ってたって!
「…島全体ですかぁ。軽くバイオハザードですね」
「そこは普通ゾンビかよとかではないのか?」
「悲しいかなもうそういうことには耐性が出来てるみたいです」
「…」
レオ神父が無言で肩を叩いてくれる。うん、泣きたくなるんでやめてください。
「島全体っていうとどんくらいいるんですか?」
「もともと人口はそんなに多くないから、食屍鬼自体はせいぜい200から300に届かないくらいね。ただ、それに加えて元凶の死徒たちもいるだろうから結構いるわね」
「食屍鬼?死徒?」
いきなりさっきまでなかった分からん単語が飛び出してきた。
「簡単に言うとゾンビ的な奴が食屍鬼、吸血鬼的な奴が死徒っていうのよ。で、全部まとめて吸血種って呼ばれてるの。まあ後もう一種『真祖』って言うのがいるけどそっちは今は気にしないでいいかな」
真祖…トウカの話にも出てきてたな。にしてもそんな区別があったとは。
「まあ、厳密に言うと色々と細かいのだが大雑把に言えばそんなものだ」
「へぇ。じゃあその死徒を狩って終わりなの?」
だったらさっさとそいつらを狩って帰ろうと目論見を立てる。全部殺せとかだと夢見が悪くなりそうだからな。だが、ちぃさんが首を振る。縦ではなく横に。
「違うわ。今回の目的は島にいる全ての吸血種の抹殺及びこの事態の原因となった何らかの存在への即時対処よ!」
この言葉を聞いて即刻帰りたくなったのは言うまでもない。
後書き
吸血種、死徒、食屍鬼についてはFATE準拠ではなく結構オリジナルな設定が入っています。
吸血種、死徒、食屍鬼についてはFATE準拠ではなく結構オリジナルな設定が入っています。
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