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戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~

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第6楽章~魔塔カ・ディンギル~
  第61節「Synchrogazer」

 
前書き
ラストバトルと相成りました。
ベイバロンフィーネとの決戦、五人はどう戦うのか!?

サブタイは主題歌を選びました。しかし流れるのは本家そのままの『Synchrogazer』ではなく……。
どうぞお楽しみください! 

 
『逆さ鱗に触れたのだ……相応の覚悟は出来ておろうな?……フフ、ハハハハハハッ!』
 赤き蛇竜と化したフィーネは、今度は装者達に狙いを定め、先程街を焦土に変えた魔光を放つ。
「まずい、避け──ああああッ!?」
「うわああああッ!?」
「ぐあああああッ!?」
「くうッ!?」
 五人は紙一重で避けたものの、一撃の余波でそれぞれ吹き飛ばされた。

「くっそッ!少しくらいデカくなった程度で、調子に乗ってんじゃねぇッ!」
 クリスがアクロバット飛行で転回しながら、アームドギアによる一斉射撃でフィーネ本体を狙う。
 しかし、フィーネの座する聖堂のような頭部の外殻が、なんと城門のように閉じてしまったではないか。
「なッ!?」
 クリスの放ったビームは全て、その強固な外殻に阻まれ無力化されてしまう。
 代わりに、蛇竜の背から広がった羽のような器官から乱射されたビームが、ホーミングミサイルのようにクリスを襲った。

「クリスちゃんッ!させるかああああああッ!」
 純は右手に盾を構えると、クリスの元へと飛び、バリアを展開してそれらを防ぐ。
「うおおおおおおおおおおッ!これでッ……どうだああああああッ!」
 蛇竜の放ったビームを全て防ぐ……のではなく盾へと吸収すると、純は盾の装着された右腕を立て、左腕を肘に当ててL字を組むと、盾から先程吸収したエネルギーを倍に増幅して解き放った。

〈Shooting×スターライト〉

 蛇竜の頭へと命中する光線。だがそれは、蛇竜の表皮に傷をつけ、城門を突き破るもフィーネには届いていない。
 それどころか、その穴は即座に塞がってしまう。

「はあッ!」

〈蒼ノ一閃〉

 翼の一閃も深手には至らず、その再生速度が上昇しているのは目に見えて明らかであった。
「はああッ!」
 響は繰り出した拳をめり込ませ、敢えてその拳を再生に巻き込ませると、その瞬間にパワージャッキを打ち込み、右腕に集中させたエネルギーを体内で爆発させた。
 吹き飛んだ箇所へ翔からの剛射が命中するも、やはりどんどん再生し、一向にダメージを受けている様子が見受けられない。
「5人がかりで手数が足りない、だと!?」
『いくら限定解除されたギアであっても、所詮は聖遺物の欠片から作られた玩具ッ!完全聖遺物に対抗出来るなどと思うてくれるな』
 勝利を確信したフィーネの言葉。しかし──

「はッ──」
「あ──」
「って事は──」
「なるほどな──」
 その慢心は、窮地に陥った装者達に一筋の希望を……勝利の鍵の在処を閃かせた。

「皆、今の聞いたよね?」
「ああ。念話のチャンネルをオフにしろ」
「よし、もっぺんやるぞッ!」
「でも、その為には……」
 純、翼、クリス、そして翔は共に響の方を見る。
「……あ、ええと……?」
「響……一番重要な役、頼めるか?」
 翔に真っ直ぐ見つめられ、響は頷いた。
「何だかよく分からないけど、やってみるッ!」

 ∮

 蛇竜の出現、そして街を焦土にした一撃の影響で、シェルターの中は大きく揺れていた。
 棚が倒れるほどの強い揺れの中で、弦十郎、藤尭、友里以外は皆、二段ベッドに乗り、頭を抱えて蹲っていた。
「響……翔くん……皆……」
「ビッキー達、きっと大丈夫だよね?」
「うん……」
 響を、翔を、翼を、クリスを、純を信じて、未来達は五人の勝利を祈り続ける。

 そして弦十郎は、ディスプレイに表示される赤き蛇竜を見て呟いた。
「黙示録の赤き竜、緋色の女ベイバロン……。伝承にあるそいつは、滅びの聖母の力だぞ……了子くん」
 ネフシュタンとデュランダル。そのふたつが意味するのは『不滅』、そしてフィーネは『永遠の巫女』。しかし、今のフィーネは『滅びの聖母』を意味する蛇竜の姿となった。
 それは彼女の結末を暗示しているようで……いてもたってもいられなくなった弦十郎は、傷の痛みを堪えながら立ち上がり、部屋を飛び出した。

 ∮

「ええいっ、ままよッ!」
「私と雪音で露を払うッ!」
 ベイバロンの羽から放たれるビームを避けながら、翼とクリスは突撃する。
「純ッ!合わせられるな?」
「勿論だ!」
 翔はアームドギアを弓から双刀へと切り替えながら、純と共に構えた。

「手加減なしだぜッ!」
「分かっているッ!」
「でりゃああああッ!」
 ビームの合間をすり抜け、突き進んでいくクリス。
 翼は大剣へと変形させたアームドギアを握り締め、意識を強く集中させる。
 すると刃は更なる大きさへと巨大化し、普段の倍の刀身へと変化した。
「はああああッ!」

〈蒼ノ一閃 滅破〉

 威力と範囲を増した斬撃が、ベイバロンの身体を斬り裂き、爆煙を上げる。
 再生しようとした瞬間、クリスは聖堂の内部へと侵入した。
「ぐ、くうう……ッ!?」
「──フィーネぇッ!」
 侵入したクリスは、閉じられた外殻の内部で、アームドギアの全砲門からビームを一斉掃射する。

「ううぅりゃああああッ!」

「くッ……だが所詮は聖遺物の欠片ッ!たかが一匹で何が出来るッ!」
 爆煙に包まれる外殻内部。煙を追い出し、クリスを外へと追い返すべく外殻を解放した瞬間、その一撃は放たれた。

「一人じゃないッ!僕達はッ!」
「俺達は五人でッ!」
 翔が投擲した二本の刀。純はエネルギーを脚へと集中させ、その刀を、炎を纏った蹴りで打ち出した。
「「シンフォギアだッ!」」

〈Tactical×双刃脚〉

「もう一撃ッ!」

〈蒼ノ一閃 滅破〉

 フィーネが結界を張り、二つの攻撃を防ごうとする。
 しかし、最初の刀は結界へと突き刺さり、もう一本の刀がその刀のピッタリ真後ろに命中して、それを押し込んだ。
 砕ける結界。遂に命中した一閃が、爆煙と共に強い衝撃波を放った。

 そして、その衝撃波に吹き飛ばされ……最後の切り札は宙を舞う。

「立花ッ!そいつが切り札だッ!」
「ッ!デュランダル……!」
 宙を舞うデュランダルが、響の方へと向かっていく。
「勝機を零すな、掴み取れッ!」
「ちょっせぇッ!」
 その重さで落ちそうになるデュランダルを、クリスがハンドガン型に変形させたアームドギアで撃ち、弾かれたデュランダルは空中でバウンドするような軌道を描いて響の元へと真っ直ぐに飛んでいった。
(翼さんとクリスちゃんが、翔くんと純くんが繋いでくれた希望ッ!この手で──掴み取るッ!)
 その手に再び飛んで来たデュランダルを、響はしっかりと掴み取った。

 次の瞬間、周囲の景色が暗転する。
「デュランダルをッ!?」
「ぐ、うウウ、ウウウウウ……ッ!」
 デュランダルを掴んだ瞬間、響の瞳が赤く染まり、純白のエクスドライブが黒一色の影に包まれる。
 羽は悪魔を思い起こさせるように禍々しいものになり、響の意識は再び暗闇の底へと──堕ちるかと思われていた。

「Listen to my song──」

 戦場に響き渡ったその旋律は、愛の詩を乗せた音楽として広がった。
 響その場にいる全ての者の目が、それを奏でる者へと向けられる。
 響がその隣を見ると、そこには……アームドギア・天詔琴を手に伴奏する翔の姿があった。

 翔はただ何も言わず、響を真っ直ぐに見つめ返すとそのまま伴奏を続けながら、胸の歌を唄い始めた。
「僕の声は聴こえていますか──」
 その歌に答えるように、翼は響の元へと向かう。
「答えのない虚構の空目指し──」
 それに続いてクリス、純もまた、その後へと続いた。
「言葉じゃ足りないから──」
「僕の全て受け止めて──」
 歯を食いしばっていた響の顔から、影が剥がれる。
 しかし、その身はまだ殆どが黒に覆われており、デュランダルの制御にはもう少しかかると思われていた。

 その時、シェルターへと続くシャッターが轟音を立てて破壊され、中から何人もの人々が飛び出す。
「正念場だッ!踏ん張り所だろうがッ!」
「……ッ!」
 第一声を放ったのは弦十郎だった。力強い声で、響を奮い立たせる。

「強く、自分を意識してくださいッ!」
「昨日までの自分をッ!」
「これからなりたい自分をッ!」
 続いて緒川、藤尭、友里の三人が、真っ直ぐな声で呼びかける。

「……ッ!みんな……」

 辿り着いた翼とクリスが、響の隣に並び、聖剣を握る響の手に自分達の手を添える。
「屈するな立花。お前が構えた胸の覚悟、私に見せてくれッ!」
「お前を信じ、お前に賭けてんだッ!お前が自分を信じなくてどうすんだよッ!」

 更にそこへ、クリスの肩に手を添えた純が加わる。
「仲間が、友達が、君が助けた人達が!何より、君を愛する人が傍にいるッ!だから負けるなッ!」
「グう、うウウううゥうゥゥ……ッ!」

 再び地上から、聞き慣れた声が聞こえてきた。
「あなたのお節介をッ!」
「あんたの人助けをッ!」
「今日は、わたしたちがッ!」
 詩織、弓美、創世の懸命な声が届く。

「負けんな!」
「進め!」
「諦めるな!」
「乗り越えて!」
 紅介、恭一郎、飛鳥、流星の熱い声がそれを後押しする。

「──かしましいッ!黙らせてやるッ!」
 フィーネは苛立ちを極限まで募らせ、羽を触手状に変化させると何度も装者達へと叩きつけようとする。
 その触手は直撃することなく、デュランダルから放たれるエネルギーに弾かれる。
 しかし衝撃は伝わるらしく、響の顔は再び影に覆われていき──
「ぐウウウウ……ッ!」

「響ぃぃぃぃぃぃぃぃぃッ!」

(──はっ)
 再び暗闇に墜ちかけた響の耳に届いたのは、未来の願いが込められた叫びだった。
(……そうだ。今のわたしは、わたしだけの力じゃない……ッ!)
「ビッキーッ!」
「響ッ!」
「立花さんッ!」
「響くんッ!」
「響さんッ!」
「「響ちゃんッ!」」
「…………ッ!」
 大切な人達が、名前を呼んでいる。期待を胸に、希望を託して、その帰りを待っている。

「この身朽ち果てても、伝えたいものがある──」
 翔の歌声が、更に大きなものになる。
 エクスドライブモードになった今、その気になれば唄いながらでも、念話で直接語りかけることも出来るだろう。
 しかし、翔は敢えてそうしない。全力全霊で唄い、奏で、胸の想いを叫び続ける。
 装者・立花響を支える為に、彼女を大切に思う人達の言葉を届ける為に、彼女に伴い生命の歌を響かせ続ける。
 その姿こそ正しく……“伴装者”。
「彼方……“翔いて”──」

(そうだ……ッ!この衝動に塗り潰されてなるものかッ!)
 次の瞬間、響を覆っていた黒い影が剥がれ落ち、胸の傷へと集まっていく。
 全ての影が剥がれた時、胸の傷は一瞬、一筋の光を放った。
 そして決意を固め、顔を上げた響の方を見て……翔は優しい歌声と共に微笑んだ。

「"だから、笑って……"──」

「…………ッ!」
 誰よりも熱く、誰よりも強く抱き締めてくれる人の声を受け、震える心を揺さぶられて、顔を上げた響の翼が大きく広がり、聖なる輝きを放つ。
 クリスは響の手に添えていた自分の手を、今度は響の肩へと添えて背後に回る。

「翔ッ!お前も来いッ!」
 翔は頷くと翼と響の間に入り、響と共に二人でデュランダルを握る。

 翼は翔の肩に手を添えて……自分の肩にも、誰かの手が置かれた気がして振り返った。
「ッ──奏……」
 振り返った翼の肩に手を添えているのは、この場にいないはずの人物。
 死してなお、何度も彼女の前に現れては支えてくれる彼女の姿だった。
 顔を見合わせ頷き合い、翼は共に前を向いた。

「その力──『何』を束ねたッ!?」
「──響き合うみんなの歌声がくれたッ!」
 デュランダルの刀身から、天高く伸びる光の刃。
 それは天を、地を、戦場に立つ全てのものを照らし、黄金の輝きを放つ。
「風の鳴る夜は思い出して、共に紡いだ奇跡──天を描くよ!」

「シンフォギアでええええッ!」

〈Synchrogazer〉

 五人……いや、六人の手で振り下ろされた聖剣は、滅びの聖母を真っ二つに斬り裂いた。
「……完全聖遺物同士の対消滅……ッ!?どうしたネフシュタンッ!?再生だッ!?」
 爆散していくベイバロンの体内で、フィーネは叫んだ。
「この身、砕けてなるものかぁッ!!」

 そして、ベイバロンはリディアンの敷地内全域に広がる程の、キノコ状の爆煙を噴き上げて、いつの間にやら広がり始めていた夕暮れの下に爆散した。 
 

 
後書き
ベイバロン撃破ッ!今回はラストバトルなので、翔の『伴装者』としての面を強く押し出す展開となりました。
奈々様だけじゃなくて、悠木さんとあやひーさん、イメージCV梶さんと宮野さんを加えたSynchrogazer(男声込みの合唱Ver.)とか豪華だなぁ。

あと皆さんご期待の光線技!敵の攻撃のエネルギーを吸収し、盾の中で反響させて増幅し、腕から放つカウンター技となりました!

次回、いよいよ最終回!
果たしてなにが起きるのか……最後までお見逃し無く! 
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