戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~
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第5楽章~交わる想い、繋がるとき~
第52節「繋いだ手だけが紡ぐもの」
前書き
さあ、いよいよ原作無印10話までやって来ました。
果たして純クリはどうなるのか……。ドキドキしながらお読みください!
「純……!?なんで、どうしてお前が……!?」
現れた鎧の少年は、ただ無言でこちらを見ている。
翔は、こちらの声に答えない親友に問いかけ続ける。
「その沈黙は何だよ……答えろよ!なぁ!?」
「まさか……あのマスクで喋れないんじゃないかな?」
響の言葉にハッとなる翔。
「そうなのか、純!?」
その瞬間、純の鎧を虹色の保護膜が包み込む。
「ッ!?あの光は……」
「まさか、RN式!?」
純は拳を握り、こちらへと向かって駆け出す。一瞬にして、純の姿が消えた。
「ッ!消え……」
気がつけば、翔の身体が宙を舞っていた。
あまりの速さに、勢いを乗せて飛び蹴りされたのだと気付くのにしばらくかかった。
「翔くんッ!」
「翔ッ!」
「くッ!?」
吹き飛ばされる身体に向けて、前転からの踵が振り下ろされる。
防御の姿勢を取った直後、交差させた腕で踵を受け止め直下のビル屋上へと叩きつけられる。
ビルの天井と床に穴を開けながら2、3フロア分ほど落下し、ようやく止まる。
空いた穴から見上げた友の顔は、仮面の裏に隠され、見る事は適わない。
「純……お前、いったい……」
「アウフヴァッヘン波形確認……こっ、この反応は……!」
二課本部のモニターに表示されたその聖遺物の名前に、弦十郎が驚きの声を上げた。
「“アキレウスの鎧”……だとぉ!?」
アキレウスの鎧。それはかつて日本政府が、国外から研究の為に譲り受けたものであり、RN式回天特機装束の開発に使うため、了子が利用を申請した聖遺物だ。
それがいつの間にやら、未知のRN式回天特機装束として、敵の刺客に与えられているという現状。
弦十郎は確信する。この一連の流れ、黒幕は友人にして二課の科学部門を担当する彼女……櫻井了子の仕業であると。
「アキレウスの鎧、か……。なるほど、その俊足も納得だ……」
立ち上がると、穴からこちらを覗き込む親友を真っ直ぐに見据える。
翔は彼の姿に、まるで自分が登ってくるのを待っているよう感じた。
(どうやら、操られているってわけじゃないらしいな……。って事は、何かワケありでフィーネ側についている、って事か。その上、マスクで口が聞けない。立花や姉さんを狙わず、わざわざ俺を狙っている辺り、俺に何かを訴えようとしているって考えてよさそうだな……)
やがて、友は穴の縁から飛び込み、目の前に着地する。
翔は通信機能で、他の面々に連絡する。
「皆、純は俺が何とかする。皆はノイズを殲滅してくれ」
『しかし、相手は未知の聖遺物を持つ相手だぞ?』
「親友の事は、俺が誰より分かってる。こんな事をするのは、何か狙いがあってやっているはずだ。だから1発ぶん殴って、あのマスクぶっ壊してみる」
『翔くん……無茶はしちゃダメだからね?』
響の声に、翔は力強く答える。
「ああ、無茶するほどの事でもないさ。響、君は雪音を頼む。多分、激しく動揺しているはずだから、落ち着かせてやって欲しい」
『分かった!何とかしてみる!』
通信を終えると、翔は両拳を握って構える。
「純、これで俺とお前の1対1だ。……お前が自分の意思で本気をぶつけて来てるんだ。手加減はしない、本気でかかってこい!」
向き合う2人はしばらく睨み合い、やがて床を蹴るとそれぞれの拳を繰り出した。
∮
「そんな……ジュンくんが……」
クリスは酷く動揺していた。
助けようとしていた相手が、敵からの刺客として現れたのだ。しかも、その責任の一端が自分にあるとすれば、戦意を喪失するのも無理はない。
引き金にかけていた指が離れ、クロスボウが足元に落ちる。クリスはそのまま膝を屈し、項垂れた。
「あたしの……あたしのせいだ……。あたしがあの時、シンフォギアで戦って、ジュンくんを助けていれば……こんな事には……」
「おい雪音ッ!」
翼の声が響く。声の方向を見たクリスの目に映ったのは、新たに呼び出されたノイズ達を斬り伏せていく翼だった。
「何を項垂れている!お前がやらねば、誰があの親玉を倒すというのだッ!」
「ッ……!」
「お前とあのアキレウスの鎧を着た者が、どんな関係なのかは知らん!だが、あいつは翔が……私の自慢の弟が、必ず連れて戻るッ!だからお前は、お前の成すべき事を成せッ!」
「あたしの……成すべき事……」
クリスは視界の端に転がるクロスボウを見る。
(あたしのやるべき事……やらなくちゃいけない事……。そうだ、やっと分かったんだ。あたしの夢は……あたしのやりたい事は……)
「クリスちゃん!」
今度は響の声に振り向く。
響もまた、クリスを狙おうとするノイズを片っ端から殴り倒していた。
「さっきの人、クリスちゃんにとって凄く大事な人なんだよね?」
「えッ!?あ、いや、その……」
大事な人。そう言われ、反射的に誤魔化そうとして……そして気が付いた。
(いや……こんな風に素直じゃないから、自分の本当の気持ちに気付くまでこんなにかかっちまったんだよな……。別に否定する必要も無い事実だし、これはあたしがやりたい事にも関わってくる事だ……。なら、否定していいわけねぇよなッ!)
「……ああッ!あたしの帰りをずっと待ち続けて、待てなくなったからって態々迎えに来てくれるような大馬鹿野郎だッ!」
「へへっ、じゃあ、その人がクリスちゃんと帰れる場所、ちゃんと守らなくっちゃね!」
響はクリスに向かって微笑むと、再びノイズ達へと向かっていく。
周囲に敵はいない。今なら存分に、イチイバルの全砲門へとエネルギーをチャージ出来る。
クリスはクロスボウを拾うと、その手に握り直してガトリング砲へと形状を変えさせる。
(……ったく、そこまで言われたら、あたしも引き下がれないじゃねぇか──)
胸の歌が聴こえる。さっきまでの、荒んだ心から生まれた激しい歌とは違う、優しくて温かい、新しい歌が。
(なんでなんだろ?あんなにグシャグシャだった心が、今じゃこんなにも温かい……。あいつらから差し伸ばされた手を握ったからか?……でも、あの時握った手は、そんなに嫌じゃなかったな……)
両肩に4本の巨大ミサイル。変形したスカートからはミサイルポッドが展開され、背中のミサイルは発射台の下にアンカージャッキが展開され、身体を支える。
クリスの身体中に光が、力が溢れ満ちていく。クリスの胸に燃える魂を形にしていく。
(こいつら倒して、純くんをこっちに引き戻すッ!そして、あたしは……ッ!)
発射までは、もう間もなくだ。
(誰も、繋ぎ繋がれる手を持っている……。わたしの戦いは、誰かと手を繋ぐことッ!)
殴り、蹴り、受け流して更に殴る。響はクリスの邪魔に入ろうとするノイズらを蹴散らしながら、胸の中で宣言する。
(叩いて壊すも、束ねて繋ぐも、力……。ふふ、立花らしいアームドギアだッ!)
決意に満ちた眼差しで戦うその姿に、翼もまた、研ぎ澄まされた刃で答える。
やがてクリスのギアに蓄積されたエネルギーが臨界を迎える。
2人はクリスの方を振り向くと、同時に叫んだ。
「「──託したッ!」」
(託されて──やらぁッ!)
「ぶっ放せッ!激昴、制裁、鼓動!全部ッ!」
空を見上げて胸に誓う。もう、自分の弱さに涙は零さない。だって、やっと見つけたんだから……自分の、本当にやりたい事を!
〈MEGA DETH QUARTET〉
「嗚呼ッ!二度と……二度と迷わない!叶えるべき夢をッ!」
嵐のように撃ち出される弾丸と無数のミサイルが、断罪のレクイエムとしてノイズ達へと向かって行く。
雑音共を千切り、爆ぜさせ花火とする。しかして穏やかで明るい、未来への歌が戦場には広がっていた。
残っていた2体の空中要塞型ノイズも粉々になり、街の空からは風に飛ばされていくばかりの炭塵が舞っていた。
やっと見えたと気が付けた、両親から託されたその夢を胸に、クリスはようやく全ての弾を撃ち尽くして銃口を下ろす。
この歌はきっと、彼にも届いているだろう。そして、天国から見守っているであろう両親にも……きっと……。
∮
翔と純の戦いは、傍から見れば接戦であった。
アキレウスの鎧の性質により、高速戦闘で畳み掛けようとする純。更に、その左腕から展開された盾が、翔の得意とする打撃技を的確に弾き返し、拳を弾いたその隙に、その盾を鈍器に殴り付ける。能動的カウンターと素早い動きを組み合わせた、素人とは思えない戦法で翔を追い詰めようとしている。
しかし、速さと手数で上回ったところで翔も負けてはいない。ギアの扱いに加え、実戦経験では護身術を習っていただけの純よりも、何度もノイズと戦い、敗北が死に直結する修羅場を潜り抜けてきた翔の方が上だ。
殴打での攻撃を盾でカウンターされる事に気がつくと、フェイントを仕掛け、盾を構えた瞬間に押し蹴りで体勢を崩させ、その隙に素早い蹴撃を叩き込む。
ビル内を吹き抜ける風と、一撃一撃が決まる度に広がる衝撃波。既にオフィス内は散らかり放題。室内を台風が抜けていったような有様だ。しかし、接戦に見えた戦いも、スピードを除けば実の所純の方が押され気味であり、やがてその差はどんどん如実になっていく。
やがて、翔の蹴りが純の胸部アーマーのど真ん中に突き刺さり、純は後方へと勢いよく吹き飛ばされる。
壁にめり込み、そのまま崩れるように床へと落ちる。しかし、気絶することはなく、何とか意識を保って地に足を付けたその時だった。
純のRN式回天特機装束のメットパーツ、その耳当て部分が赤く発光し、音を立てて点滅し始めたのだ。
「ッ!?なんだ……!?」
翔は困惑した。まさか、自爆装置では……!?
しかし、その不安は直ぐに不要なものへと変わる。なんと、純の身を包むRN式の効力を表す虹色の保護膜が、揺らぎ始めたのだ。
(保護膜が消えかけている?……まさか、時間切れッ!)
翔の表情から、もう自分が戦える時間は長くない事に気が付いていると察した純は、人差し指を立てて翔へと向ける。
(あれは……メッセージ?人差し指を立てて……挑発するハンドシグナル……。『あと一撃で決着を付けよう』って事か……)
「いいぜ……。そのマスク、この一撃で破壊するッ!」
両者拳を握り締め、互いに睨み合う。
示し合わせたかのようなタイミングで駆け出すと、2人は互いの顔へと向けて、その拳を突き出した。
クロスカウンター……それぞれの腕が交差し、相手の顔へと放たれる渾身の一撃。
相手の顔に拳を入れる事に成功したのは……翔だった。
次の瞬間、メットのマスク部分に亀裂が走り、破損して床へと落ちる。やっと口を聞けるようになった純は、勝利した親友へと賞賛を送る。
「やっぱり翔はすごいや……。僕の意図をちゃんと把握して、それに応えてくれた……。本気でぶつかった価値はあったよ……」
「まったく……無茶振りしやがって……。俺がお前の意図を読めず、困惑していたらどうするつもりだったんだ?」
「それはないよ……翔なら絶対気付いたはずさ。僕が本気で殴って来るなら、君は僕に何かあるんだって察してくれるだろう?」
「やれやれ……この王子、俺の性格読んだ上で本気で殴ったのかコノヤロー」
苦笑いしながら、そのメットを外させる翔。
「あ……何かフラフラする……。ちょっと無茶したかな……」
「7分も戦ってたからな、お前」
「7分も!?そっか……4分も限界を超えたんだ……」
翔に肩を貸されて、純はビルの外へと出ていく。
すると、その耳には懐かしく、ずっと聴きたがっていた歌声が響き渡っていた。
「……この歌は……ああ、クリスちゃんの……!」
最愛の姫君の歌声に、ようやく魔女から解放された王子は心を躍らせた。
∮
「やった……のか?」
最後のノイズにトドメを刺し、翼が空を見上げて呟く。
「ったりめぇだッ!」
「あはッ!」
空から地上へと降り注ぎ、風に吹かれて消えていく燃え滓と炭塵。
スカイタワーの下で、ギアを武装解除した3人は合流した。
「やったやった~ッ!」
響が勝利を喜び、飛び跳ねながらクリスへと抱き着く。
「やめろバカッ!何しやがるんだッ!」
響を引き剥がすクリス。
「勝てたのはクリスちゃんのお陰だよ~!うひひひひ~!」
もう一度抱き着く響。再び引き剥がすクリス。
「だから、やめろと言ってるだろうがッ!いいかッ!お前達の仲間になった覚えはないッ!あたしはただ、フィーネと決着を付けて、やっと見つけた本当の夢を果たしたいだけだッ!」
「夢?クリスちゃんの?どんな夢?聞かせてよっ!」
またしても抱き着く響。
「うるさいバカッ!お前、本当のバカーッ!」
三度響を引き剥がし、クリスは響から離れて叫んだ。
「えへへへ~」
「立花、あまり過度なスキンシップはそこの2人を嫉妬させるぞ?」
「ほえ?」
響が振り向くと、そこにはギアを解除した翔と、翔に肩を貸されて歩いて来る純の姿があった。
「響、姉さん、雪音、3人ともお疲れ」
「翔くん!そっちも上手くいったんだね?」
響が駆け寄ると、純は自分から翔の肩を離す。
「純、もういいのか?」
「大丈夫……。翔は自分のお姫様を、労ってあげるといい」
そう言って純は、クリスの方へと歩いて行く。
「翔くん、あの人って、あの時未来と一緒にいた……」
「爽々波純。俺の親友にして……雪音の帰る場所、かな」
そう言って翔は響を背後から抱き締めて充電しながら、2人の再会を見守った。
「やれやれ……。戦場でイチャイチャするなど……いや、もう終わった後なので、戦場ではなくなったがな」
少し呆れたように、それでいて優しい声で翼も、2人の邪魔をしないように翔と響の隣へと並んだ。
「ジュンくん……」
僕の方を見て、クリスちゃんが駆け寄って来る。
「クリスちゃん……」
RN式の効力が切れ、今身にまとっている鎧は、ただの何の変哲もないプロテクターになっていた。
自分の無茶は分かっている。すぐに戻るって約束したのに、こんなに遅くなってしまったのも悪いと思っている。
何より、彼女を深く悲しませる事になってしまった事は、僕にとってはとても重い罪だ。
だから、頬を打たれようが、殴られようが仕方ない。そう覚悟して、目を閉じた。
……彼女の足音がすぐ目の前まで来た。しかし、頬に広がる痛みは無い。代わりに、鎧越しなので分かりにくかったが……背中に手が回された事に気が付いた。
「ここか……?」
ガチャリ、と音がしてロックが外れる。
次の瞬間、胴体を覆っていたアーマーが外れて地面へと落ちる。
「よし。これでようやく……」
目を開けるのと、その温もりに包まれたのはほぼ同時だった。
クリスちゃんはアーマーが外れた僕に、思いっきり抱き着いていた。
「クリスちゃん……怒らないのかい……?」
「ったりめーだろ……悪いのはあたしなんだから……。あたしがあの時逃げ出さなければ、ジュンくんがこんな事する必要は……」
「……ごめんね。辛い思いをさせてしまって……」
俯く彼女の背中に手を回す。小さな背丈の彼女は、腕の中にすっぽり収まるだけでなく、丁度その頭が僕の胸の位置に来る。
「……ジュンくん……あ、あたし……ジュンくんにずっと、言いたかった事があるんだ……」
「……なんだい?」
少し彼女から離れると、その顔を真っ直ぐに見つめる。
僕の顔を見上げながら、クリスちゃんは意を決したように言葉を紡いだ。
「その……あたしの事、ずっと待っててくれたんだよな……?」
「一日たりとも、忘れるもんか」
「……小さい時の約束も、覚えてるんだよな……?」
「その約束があったから、今の僕がいるんだ」
「……ッ!……じ、じゃあ……い、今のあたしを見て……どう、思う?」
クリスちゃんは、少し自信なさげにそう呟いた。声が小さくなり、彼女は俯く。
「こ、言葉もぶっきらぼうだし……銃とかミサイルぶっ放つし……性格だってひねてるって言われたし……。あの約束を、殆ど全部叶えてるようなジュンくんと比べたら、あたしは……」
「……クリスちゃん。お姫様の条件って、なんだと思う?」
「え……?」
僕の言葉に、クリスちゃんは首を傾げる。その可愛らしい様子にくすっ、と微笑む。
「簡単さ。“王子様が選んだ女の子であること”。それだけがその条件だと、僕は思ってる」
「王子様が……選んだ……?」
「そう。僕はあの日からずっと、理想の『王子様』を目指してここまで自分を磨いてきた。今の僕は、それを名乗るに相応しい男になれたと自負している。なら、あとは約束のお姫様を迎えに行くだけだ。そして、その王子様が迎えに行く女の子が『お姫様』でないわけが無い。そうだろう?」
「ッ!じ……じゃあ、あたしは……」
「あの約束を交した日からずっと、クリスちゃんは変わらず、僕のお姫様だよ。どれだけ性格がひねくれたって、どれだけ口が荒っぽくなったって……どんなに君が変わっても、君は僕にとってそういう存在である事に、変わりはないのさ。さっきのシンフォギア……イチイバル、だっけ?ドレスみたいで、とっても似合ってたよ」
「ッ!!」
クリスちゃんの顔が、耳まで真っ赤になる。
その顔はとても可愛らしくて、思わずこの胸に抱き締めてしまった。
ああ……長かった。8年間、ずっと待ち続けてきたその日が、ようやく訪れたんだ。これほど嬉しいことはない……。
「おかえり、クリスちゃん……。それとも、僕の方がただいま……なのかな?」
「……ばーか。……ただいま……あと、おかえり……ジュンくん……」
そう言ってクリスちゃんは、僕の首元へと手を回した。
足元を見ると、つま先立ちで僕の身長に追い付こうとしている。何をしようとしているのかは、すぐに察することが出来た。
「それから……大好き」
「ああ……、僕もさ。愛してる」
つま先立ちで背伸びしているクリスちゃんへと、そっと顔を近づける。
目を閉じるクリスちゃんの頭と背中に手を回して、その唇を優しく奪った。
「……なんというか……凄いね」
「俺たちの時とはまた違った告白だな」
「つい、カメラで撮ってしまった……。見守り隊の癖が伝染っているな……」
響、翔、翼の3人はその告白を見て、静かにそうコメントしていた。
その時だった。響の通信機のアラートが鳴った。
「……はい?」
『──響ッ!学校が、リディアンがノイズに襲われ──ッ』
聞こえて来たのは未来の声。しかし、その通信は途中で途切れ……あとはツー、ツー、という音が流れるのみだった。
「あ……。……え──?」
「なッ……!?」
決戦の時が、刻一刻と迫っていた。
後書き
タネ明かしすると、フィーネの脅しは全て嘘だったりします。
負ける、というのをどう判定するのか。二課に侵入しているのに、敗北した事をどうやって知ってソロモンの杖を使うのか。この辺りを考えるとブラフだと分かるはずです。いや、深読みするとその方法を考えたくなっちゃいますけどね。
次回、カ・ディンギル編突入!お楽しみに!
アキレウスの鎧:ギリシャは叙事詩イーリアスに名高い大英雄、アキレウスの名を持つ鎧。主に脚力を重点的に強化することで、装着者に最速の脚を与える。
また、アキレウスの伝説にある通り、その防御力は極めて高く、尚且つ素材はとても軽い。武器となる得物は存在しないが、左腕に装着されている盾は使用者の意志に合わせて自在に変形する機能を有しており、戦局に応じて様々な使い方で使用する事が出来る。有り体に言えば、フリスビーにもなれるワカンダシールド。
ちなみに伝説通り、踵の部分に存在する小型ジャッキが初動の加速力を生むため、破壊されればそのスピードを大幅に削がれてしまう。
スピード、ディフェンス特化型。即ち、最速最短で戦場を駆け巡り、姫の元に駆け付け守護する為の力と言えるだろう。
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