ドリトル先生の林檎園
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第一幕その六
「身内で争い続けたからね」
「それってよくないね」
「欧州でもそうしたお話あるけれど」
「身内で争うのが一番駄目だよ」
「何といっても」
「そう、だから源氏は滅んだんだ」
そうなったというのです。
「源頼朝、そのお祖父さんの源為義の家系はね」
「殺し合い続けて」
「遂にだね」
「そうなったのね」
「それで鎌倉幕府は将軍は源氏じゃなくなったんだ」
将軍になる人がいなくなってです。
「源氏の血を引く家自体は沢山あったけれどね」
「確か武田信玄もだよね」
「あの人源氏だったね」
「あと今川義元も」
「そうだよ、武田家も今川家も源氏だよ」
その通りだとです、先生は皆に答えました。
「そして室町幕府の足利家もね」
「そうなんだね」
「源氏なんだね」
「けれど源氏の本家というか嫡流はね」
「皆いなくなったんだね」
「身内同士で殺し合いばかりしてるから」
今度は悲しいお顔でお話する先生でした。
「そうなるんだよ」
「源義経も殺したし」
「そうなるのも当然ね」
「木曽義仲もそうで」
「皆殺しにばかりしてたから」
「誰もいなくなったんだ」
最後はそうなってしまったというのです。
「アガサ=クリスティ―の小説みたいにね」
「もう何それ、だよね」
「身内同士で殺し合って」
「それで誰もいなくなったって」
「ある意味滑稽ね」
「皮肉なお話だよ」
「こんなことになったし」
先生は源氏のこのことにさらに思うのでした。
「源氏についてはね」
「先生もよく思ってないね」
「源頼朝という人には」
「どうしても」
「そうだよね」
「うん、僕も義経さんの方が好きで」
それでというのです。
「あの人が生きていて欲しいとも思っているよ」
「衣川で死んだけれど」
「生きていたっていう噂もあるし」
「それじゃあね」
「北海道で生きていて欲しいね」
「流石にチンギス=ハーンにはなっていないだろうけれど」
「流石にそれはないね」
先生は義経さんがチンギス=ハーンになったという説は否定しました。
「幾ら何でも」
「そうだよね」
「性格も戦術も全然違うしね」
「何でそんな説が出たのか」
「日本だけの説にしても」
「それだけ義経さんが人気があるということだね」
日本人の間で、です。
「悲しい結末だっただけにね」
「お兄さんに殺されるなんて」
「本当に悲しい結末だしね」
「やっぱりそう思うよね」
「義経さんについて」
「判官贔屓という言葉もね」
日本にあるこの言葉もです。
「義経さんからだね」
「あっ、そうだったね」
「源九郎判官義経さんだからね」
「官位が判官だったからね」
「それでだね」
「そうだよ、その判官がね」
まさにというのです。
ページ上へ戻る