ドリトル先生の林檎園
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第一幕その四
「平家物語程酷い人ではなかったよ」
「それ確か平清盛もだね」
「先生この人について前言ってたけれど」
「実は暴君じゃなかったって」
「家族や家臣をとても大事にする人で」
「思いやりもあったんだよね」
「そうだよ、頭が切れて器も大きくてね」
そうした人だったというのです。
「その時も言ったけれど暴君じゃなかったんだ」
「平家物語だと大悪人だったね」
「まさに暴君で」
「やりたい放題やっていて」
「苦しんで死んだのも天罰っていう位で」
「地獄に落ちたけれどね」
これも物語の中でのことです。
「わざわざ地獄の鬼が迎えに来て」
「娘さんの夢の中でね」
「先生が言うには凄い場面だよね」
「燃え盛る昔の日本の車を鬼が曳いて来るって」
「あの牛の頭の鬼と馬の頭の鬼が」
「牛鬼と馬鬼だね」
この鬼達だとです、先生は皆にお話しました。
「あの鬼達が迎えに来たんだ」
「わざわざだね」
「もう地獄に落ちることが決まっているから」
「そこまでの悪人だってことで」
「そう書かれているんだね」
「その地獄もね」
落ちる場所もというのです。
「無間地獄だったからね」
「仏教の地獄で一番深いところにあるんだよね」
「この世で一番悪い人達が落ちる場所で」
「キリスト教の地獄だと魔王がいる場所だね」
「あの三つの顔のある魔王が」
「ダンテの神曲の地獄だね」
その地獄についてもです、先生はわかっています。
「そちらに該当するね」
「そうだよね」
「平清盛はその地獄に落ちたんだ」
「魔王にずっと咥えられる位の悪人ってことで」
「一番厳しい地獄に落ちたのね」
「そう、落ちてね」
そしてというのです。
「ずっと報いを受けてるってされているんだ」
「ううん、確かに凄い悪人ね」
「物語の中だと」
「けれどそんな悪人かっていうと」
「実は違うってことだね」
「そう、違うからね」
先生は皆に確かな口調で答えました。
「そこは皆もわかっておいてね」
「何ていうかね」
「物語と現実は本当に違うのね」
「イギリスでもそうだけれど」
「日本でもそうなのね」
「アーサー王も例え実在していても」
今度はイギリスのこの人のお話をした先生でした。
「史実は違うよ」
「物語のアーサー王とはね」
「円卓の騎士達に囲まれていなかった」
「エクスカリバーもどうかしら」
「果たして現実は」
「僕はあの物語も大好きで」
それでというのです。
「子供の頃から読んでいるけれどね」
「それでもだね」
「現実のアーサー王は違うのね」
「若し実在していても」
「それでも」
「このことは日本でも同じで」
先生はお話しつつ平家物語を思い出しました、それは戦いの中で人間の生き様死に様が描かれています。
「他の国もだよ」
「史実は違う」
「物語とは」
「そういうものね」
「そして木曽義仲も」
「実は僕はあのお話では源頼朝が好きじゃないんだ」
人を嫌うことがとても少ない先生にとっては珍しいことにです。
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