緋弾のアリア 〜Side Shuya〜
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第1章(原作1巻) 緋色の改革者(リフォーマー・スカーレット)
第07弾 頼みごと
前書き
第7話です
4時間目の授業が終わり昼休み。今は教室で弁当を食べている。
因みに弁当は、朝食の前に作ったものである。弁当を食べながら何気なく、普段レキが何を食べているのかを考えていた。
今レキについて考えていた理由は、窓際の席に座っていたはずの彼女がいなかったからである。
その後、ボーッとしながら弁当を食べていると、教室の入り口に見覚えのある人影を見つけた。
その人物はキンジだった。目が合うと、マバタキ信号で『ハナシガアル デテコイ』と伝えて来た。
俺はほぼ食べ終えていた弁当を仕舞って、廊下に出た。
「なんのようだ?」
「実は相談があって」
……ん? 相談? キンジにしては珍しいな。
「教務科に行くから一緒に来てくれないか?」
…………おい。ちょっと待て。お前は小学生か!?
「なんで、教務科に着いて行かなきゃいけないんだよ」
「お前、あそこがどれほどの危険地帯か知ってるだろ?」
「まぁ……ね」
「それに、あそこに行かなきゃいけない理由も知ってるだろ?」
「ああ、分かったよ。お前からの頼みを断る理由も無いしな」
「悪いな……」
「良いよ。昔からの付き合いだろ」
「そう……だな」
そんな会話を交わした俺たちは教務科に向かって歩いっていった。
教務科の職員室の前に着いた俺とキンジ。
そして、恐る恐る手を扉に伸ばしていくキンジ。
———焦れったい。早くしろ。強襲科に戻りたくないのは分かるが付き合ってるこっちとて暇じゃない。
「ていうか、ノックしてないだろ?」
「あ……」
「おいおい……」
ノックをしてから扉を開けるキンジ。
「失礼します」
「おお、なんや遠山どうした?」
奥から出てきたのは蘭豹。強襲科担当教師兼、2年C組担当教師──俺やレキの担任でもある。なんでも、香港のマフィンのボスの愛娘だとか。香港で無敵の武偵として恐れられていたらしいが、凶暴過ぎて出入り禁止なったとかなんとか。おかげで今は、各地の武偵高を転職してるらしい。因みに彼女は未成年である。
「自由履修の件で———」
「そうか。で、樋熊はどうした?」
「いや、俺はただの付き添いです……」
「付き添い?」
「あ、いえ、こっちの話です」
キンジがそう言った。
「それより樋熊、昨日はご苦労」
「何の話だ?」
「後で話すよ。取り敢えず履修届け出してこい」
「だな」
そう言ったキンジが蘭豹の元に行って直ぐに、急に声がかけられた。
「あら、樋熊君。どうしたの?」
声をかけてきたのは、探偵科担当教師兼、2年A組担任教師の高天原ゆとり先生。
おっとりとした感じで常に笑顔の絶えない先生だが、ここに来る前は凄腕の傭兵だったらしい。
しかも、頭部を狙撃され戦えない体にされるまでは、「血塗れゆとり」と呼ばれ恐れられていたらしい。
今の姿からは到底想像できない名前である。
「遠山君が、自由履修の届けを出すのについてきて欲しいって言ったのでついてきただけです」
「自由履修?」
「あれ、もしかして聞いてないやつですか?」
「聞いてないなー」
ありゃりゃ。これは結構大変だな。
そんなことを考えている内に、先生は自分の作業机(?)に行ってしまった。
どうするかを考えていると、キンジが戻ってきた。
「お前、自由履修のこと言ってないのか?」
「あ……」
「……ハァ」
俺は、本日最大級の溜息をついた。
「忘れてました」
「そこにいるから伝えてこいよ」
「そうする……」
なんやかんかで、報告が終了したので俺たちは一般教科の校舎へと戻って行った———
———5時間目、専門科目の時間である。
専門科目。俺の場合は強襲科である。
施設に入った瞬間に囲まれる俺。ほんと、ここは賑やかだよ。悪い意味で。キンジが戻りたく無い理由がよくわかる。
「おい、樋熊〜、昨日は専門科目蹴ってどこ行ってたんだよ。まぁどこに行ってたかなんかは知らないけどな。取り敢えず今すぐ死んでくれ!」
「そういう、お前が早いとこ死んでくれ」
「なんでまだ、生きてるんだよ。出先で死んだかと思ってたぜ」
「そういうお前は、なんで生きてるんだ? 昨日は、校外にいたんだろ?」
「……?! 何故それを!」
見てたからに決まってんだろ。
「お前みたいなやつは、とっくに死んでると思ったぜ」
「そういう、お前は何故にまだ生きている?」
ブーメランだよ、それ。
「おい、昨日の決闘で見せた実力を俺たちにも見せてみろよ!」
「じゃあ、自分で引き出してみろ」
「んじゃ、お言葉通りに」
その言葉を皮切り、4人が一斉に襲いかかってきた。
うーん、はっきり言って遅い。動きにキレがないというかなんというか。取り敢えず撃退するか。
まずは、顔面目掛けて飛んでくる拳をしゃがんでかわしそいつの足を払って倒す。
「うわ!?」
はい、一人終了。
次に、腹部に向かって来るナイフを握っている手の上から掴み素早く体を回し相手の懐に潜り込むと、そのまま一本背負いで背中から落とす。
「うっ!」
二人目終了。
投げ終わった直後に三人目が近づいてきていた。今度は、トンファー。
相手が右手を振りかぶってきたので左半身を後方に逸らす形で回避し、回る勢いを乗せて右フックをお見舞いしておく。
「ぬわっ!」
三人目終了。
三人目が倒れる瞬間、死角になっている箇所から四人目が撃ってきた。
しかし、この弾の狙いは甘く、俺には当たらない。
すかさず、間合いを詰めた俺はポケットからフォールティングナイフを取り出し喉元に突きつけた。相手が怯んだその一瞬に、左手で腹パン。四人目終了。
「はあ……なんでいつもこうなんだよ」
「さあな」
「やっぱりダメなのか?」
「どうしたらいいのやら」
そんな事を呟いている四人を横目に俺は射撃訓練場の方に進もうと向き直った俺の目の前には、一つのグループあたり四人×四グループが俺の目の前に立ちはだかっていた。
一つのグループでは勝てないと悟り、いくつかのグループで同時に襲うということにしたのか。考えたな。だが、この人数ならギリギリ許容範囲内。相手が詰め寄ろうとした瞬間───全員が倒れた。
正確には俺が撃ち倒した。
フルオートに切り替えたM93R改で、流しながら撃つことは今の俺であっても容易いことである。もちろん、防弾制服の上にしか撃っていない。
やっぱり、ベレッタverSは手に馴染むし、扱いやすい。
その場に倒れた奴らは、取り敢えず大丈夫そうなのでそのままにして射撃訓練場に向かった。
因みに、今回俺を襲って来た奴らはB〜Dに位置している奴らである。
こいつらは、何度も懲りずに俺を襲いにきているから普通の俺でも去なすのは簡単だ。
だってあいつらワンパターンなんだもん。
訓練場に入ってしばらくすると、外の様子が一瞬静まりかえった。何事かと思って顔を出してみると、人だかりがてきていた。
その様子を見るに、あいつが来たことを悟った。
「お──う、キンジぃ! お前は絶対帰って来ると信じてだぞ!」
やっぱりあいつは人気だな〜。
「さぁ、ここで1秒でも早く死んでくれ!」
「まだ死んでなかったのか。お前こそ、俺よりもコンマ1秒でも早く死ね」
「キンジぃー、やっと死にに帰って来てくれたか! 武貞はお前みたいなマヌケから死んでくからな!」
「じゃあなんでお前が生き残ってんだよ」
郷に入りては郷に従え。
強襲科では、お互いに死ね死ね言い合うのが挨拶なのだ。さっきの俺のやつも、一種の挨拶のような物だ。
揉みくちゃにされているキンジから視線を変えて、なんとなく二階を見た。そこには、キンジを見る一年のEランクでアリアの戦妹の間宮あかりと、その友達のBランクの火野ライカが見えた。
二人の視線はキンジに向いていた。まぁ、何考えているかは関係無いのでスルーしつつ視線をキンジに戻した。
解放される様子のないキンジ。
仕方ないな。
今のあいつを連れて行くこともできないので、訓練場へと戻った
「今日は、こんなもんかな」
もうそろそろ6時間目も終わる頃なので引き上げる事にした。
出口に向かうと、キンジが帰ろうとしていた。キンジに近づいて話しかけた。
「今の気分は?」
「最悪だ!」
「やっぱり?」
分かり切ってるのに聞くあたり、性格悪いのかもな、俺。
「分かってるなら聞くな!」
「ごめんごめん」
「俺はもう帰るぞ」
「了解。またな」
「ああ」
そう言ってキンジは先に帰って行った。俺もそろそろ引き上げることにした。
学校を出る為に門に向かうと、怪しい人影を見つけた。
その人影は間宮だった。
何を見ているのか気になったので、彼女の視線の先を見るとアリアとキンジが並んで歩いていた。キンジの不幸スキルはこんなところでも作用してしまうのか?
彼女がなんとなく怒っている理由がわかったところで俺はバス停に向かって行った———
———16時15分、バス停に着いた。しかし、人の姿が見えない。それもそのはず、武偵高の生徒が帰るのはもっと後の時間である。
バス停に着いてから1分少々で、バスが来た。そのバスで、俺は第3男子寮に向かって行った。
第3男子寮は探偵科の男子寮である。
何故、強襲科所属の俺が探偵科の寮を使っているかというと、二つの理由がある。
一つ目の理由は、俺が探偵科に在籍しているということである。確かに探偵科はSランクで修了しているが、在籍状態に変わりはない。故に、第3男子寮を使わせてもらっている。
二つ目の理由は、強襲科の寮に空きが無かったということである。
現在強襲科の寮は、相部屋すら空いてない状態である。しかも、男子だけ。そのため、空いたら移るかと聞かれてはいたがここが気に入っているという理由もあった為、断りそのままの状態でいる。
因みに気に入っている理由とは、第3男子寮が静かだということだ。
強襲科の寮は、とにかく騒がしい。夜間であろうと銃声やら、罵声だの、金属が擦れ合う音などいろいろな音がある。もちろん断った理由に、騒がしいからというのも入っている。反面、探偵科の男子寮は静かである。正直なところ、ここから移動するつもりはないのである。
部屋に着いた。現在16時30分。ここから、学校まではそんなに遠くないため、自転車で通っている人もいる。もっとも、俺の周りでは約1名バスを乗り過ごして、自転車で行こうとして自転車に爆弾が取り付けられているのに気づかず出発した挙句、UZIの付いたセグウェイに追いかけ回されたやつがいるけどな。
今思うと、これがきっかけだったのかな。なんて思ったりもする。
そう、この事件———世にも奇妙なチャリジャックという訳の分からないような事件で、遠山キンジと神崎・H・アリアは出会った。そして、そこでアリアは見てしまった。もう一人のキンジを。ヒステリアモードのキンジを。そのために、キンジはアリアに必要以上に付き纏われてしまった。
そしてアリアは、どこかで同じ学科の俺とキンジが繋がっていることを知り、俺に勝負を仕掛けてきた。負けたらドレイになるという条件付きで。つまり俺に関しては、飛び火ということになる。
これがつい2日前までの出来事である———などと、今までの経緯を考えながら洗面所に向かった。
うがいをしながら、何故アリアがあんなにパートナーを必要としているのかを考えていたが、全くと言っていいほどわからない。
また、母親を助けたいとか言っていたはずだが、いったい彼女の母親は今どこにいるのだろうか?
これも全くと言っていいほど分からない。
キンジに頼まれて、アリアのことについて少し調べたが、完璧に調べ終わっている訳では無いので分からないことだらけだ。
本当は調査したものをまとめて、キンジに渡す予定だったがアリアに決闘を申し込まれてしまった為、同じくキンジから依頼を受けていた理子に引き継ぐ形で渡してきた。
峰理子———探偵科所属のAランク武偵でキンジと同じ2年A組在籍。
一般科目の成績はあまり良く無いが、武偵としては凄腕である。特に、ネットなどを駆使した調査の能力は俺なんかよりもずっと凄い。
まぁその理由としては、ネット中毒である上にノゾキ・盗聴盗撮、ハッキング等々武偵向けの趣味を持っているということである。一般人では絶対に必要の無い趣味である。そんな趣味を持っているからこその能力だと思う。
その能力からはまさに、現代の情報怪盗である。
何を考えても、これ以上アリアのことについて考えても分からないと思ったので、この辺で一旦推理することを止めた。
リビングに行き、携帯を充電するために取り出した。よく見るとメールが来ている。
昨日のメールの返事であった。俺はまた、そのメールに返信をして充電するため画面を閉じた。そして、今日持っていた武器を取り出し、メンテナンス中だった武器のそばに置いてから整備途中だった銃と、逆刃刀の整備を始めた———
———午後20時26分、メンテナンスが終わった。勿論、今日使った武器もだ。
なんだかんだで、もう夕飯と風呂は済ませてあるためそのままベットに入った。そして、5分程で俺は眠りについた。
後書き
今回はここまで
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