緋弾のアリア 〜Side Shuya〜
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第1章(原作1巻) 緋色の改革者(リフォーマー・スカーレット)
第02弾 禁忌解放
前書き
第2話です
———ドクン。
俺の中に眠る何かが目覚めてしまった。俺は何が起こったかすぐに理解した。なってしまっているのだろう。《《バーストモード》》の俺に。
同時に破ってしまったのである。自分の中での禁忌を———
誰もが、この戦いに終止符が打たれた———そう、思っていただろう。
しかし、実際にその終止符は打たれなかった。
何故ならば振りかざされた刃を、膝立ちの姿勢になった俺が受け止めていたからである。
『!!』
その光景に、一同は絶句していた。
もちろん、俺の目の前の彼女も。
内心俺は、自身の行いと状況を把握し頭を抱えていた。
しかし、戦うことに目覚めてしまった俺は、思考とは裏腹に刀を受け止めている。真剣白刃取りで。
しかし彼女は二刀流。今受け止めているのはその片方にしか過ぎない。
驚いていた彼女もすぐに我に返って左手に持った小太刀で切りかかってきた。
俺は抑えていた、刃先を左手で思いっきり押して推進力に変えて迫り来る刃と同じ方向に跳ぶ。俺が手を離した反動で力を入れていた右手の小太刀と左手の小太刀が何もない場所でぶつかりあった。
「……避けた!?」
俺は横に跳んだ後、頭が地面の方向を向いた瞬間に地面を思いっきり押してバク転を決めて地面に降り立つ。
無論このバク宙は、体勢を立て直すためのものである。
そして、そこで再び少女の顔を見た。その顔にはまた驚きの色が出ていた。少女と目が合った瞬間、恐怖のような表情も一瞬であったが滲み出ていた気がする。
彼女が呟いた。
「あんた、一体どうしたの……? 急に人が変わったみたい……。まるで、あの時のあいつみたい……」
寝言のような事を言ってるのでハッキリと思ったことを言う。
「何寝ぼけたこと言ってんだ。さっきからずっと俺としか戦ってないだろ。それとも、怖気付いたのか?」
そう言いって俺は軽く睨んだ。
「———!? そんなことないわよ!!」
いやいや、さっき思いっきり怯えた表情していませんでしたか?
取り敢えず、観衆(主に後輩)の前で無様な姿を見せたく無いと言うことにでもしておいてやるか。
「でも、私の見込みは間違っていなかったようね!」
さっきの、否定した時の表情から一転して彼女は、少し嬉しそうな顔をしながらそんなことを呟いている。
だが、こっちの俺を見てもがっかりするだけだろう。下手したら武偵法9条を破り兼ねないほど危ない状態だからだ。なんせ今の俺は戦闘狂の状態だからである。
今の俺は、B ・S・T———通称バーストモードの状態である。
バーストモードは極限状態に陥ることにより、γエンドルフィンの放出が一定量を超えることによって全身の神経、思考回路などへの伝達物質に媒介することで発動する。発動した際の特徴として、反射神経、運動神経や戦闘能力などが通常の人間の32倍まで上がる。反面、口調が強めになったり、性格がやたら好戦的になったり、思考が若干劣ってしまうなどのデメリットも持ち合わせている。
これはうちの家系に代々伝承されているものである。
ある事件をきっかけに、俺はこれを封印してきた。
どうしても、なりたくなかった。
でも、現になってしまっている。
だが、ドレイにならないためにも今は頼るしか無さそうだ。
若干鈍くなってきた思考でそんなことを思いながら、俺は新たに二挺のDEを抜く。今度のは、低反動モードには切り替えない。今の状態の俺なら、DEの反動くらいどうということはないからだ。
「さっさと、蹴りをつけようじゃないの」
俺はDEを構えながら彼女に言う。
「良いわよ。ただ、後悔しないでね!」
そう言って彼女は、いつの間にか再装填したらしい二挺のガバメントを構えた。
そして二発の銃弾をとても正確な軌道で俺に向けて放った。だが、その弾は俺に当たることはない。今の俺は見なくても自分に迫って来る銃弾のコースがわかる。狙いは———胸部!
迫る銃弾を見ないまま俺は構えを解き、地面を蹴って左に移動しながら体を右に90度回転させる。先ほどまで俺が居た位置を二発の.45ACP弾が通り過ぎて行く。俺はそれを真横から見届ける。これら一連の動作に名前をつけるなら———神回避!
俺が避けることを想定して居たのか、既に彼女はガバメントを小太刀に持ち替えていた。
すかさず俺は、両手のDEをフルオートに切り替えると同時に弾を一斉発射した。
またしても、彼女はその弾を避け間合いを詰めてくる。
その顔には一切の迷いがない。ただまっすぐに俺の方めがけて迫ってくる。
俺は弾が切れると同時に、弾倉を床に落とし、その弾倉を相手に向けて蹴った。
彼女はそれに動じることなく迫ってくる。
次の瞬間、俺の蹴った弾倉が鋭い光を放った。
「……ッ!? 何……これ?」
彼女が若干怯み、足を止めた。
「そいつは、閃光弾倉。お手製の武装さ」
そう言いながら俺は左手のDEをしまい素早く再装填し、光が収まるのと同時に銃を向けたが、そこに彼女は———居なかった。
「何処に———ッ?!」
彼女は僅か3メートルの距離にいた。弾倉に気をとられて彼女が移動していることに気づかなかった。
この距離では、銃を向けて発砲する前に斬られる。
この距離———即ち、近接戦闘の距離。
そして彼女が再び襲い掛かってきた。
この場を凌ぐ術を探している俺自身の思考とは別に俺は———左手で抜いた刀で迎え撃っていた。
また、やりたくないことをやってしまった———刀を抜くのも禁じていた。
やはり、バーストモードのせいか……。
そのまま俺は相手の刃をはじき、右手のDEもしまってもう一本の刀を抜く。
それを見た彼女は驚いた様に呟いた。
「———逆刃刀!?」
後書き
今回はここまで
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