戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~
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第3楽章~不滅の聖剣・デュランダル~
第31節「眠れぬ夜に気付いた想い」
前書き
第3楽章の最後を飾るのは、新章前の振り返り!
そう……有り体にいえば総集編。翔ひびのこれまでを思い返しましょう!
デュランダルの護送任務を終えたその日の夜。わたしはいつも通り、ベッドに寝転がって毛布を被っていた。
隣では未来が、すやすやと寝息を立てている。
でも、わたしは中々寝付けずにいる。いつもなら、ベッドに寝転がってすぐに眠気が来て、あっという間にぐっすり寝ているはずなのに……。わたしの中では、昼間の出来事が渦を巻いていた。
デュランダルを掴んだ時、わたしの中に流れ込んできた暴走する力。何もかも全部を壊したくなる、あの強烈な衝動──。
怖いのは、それを制御出来ないことじゃない。それを人に……ネフシュタンの鎧を着たあの子に向けて、躊躇いもなく振り抜いた事。
もう少しでわたしは、この手であの子を傷付けてしまうところだった。
もしあの場所が、誰もいない工場じゃなくて街の中だったら……。
もしあの時、関係ない人達がまだ逃げ遅れていたりしたら……。
そう思うと、怖くて手が震えそうになる。
あの時、デュランダルを最後まで振り降ろしてしまっていたら、どれだけの被害が出たんだろう……。
そう考える度に、怖くて耐えきれなくなる。
へいき、へっちゃら……帰ってきた時、心配してくれた未来にはそう言ったけど、怖いものは怖い。こんな気持ちになったのは、いつ以来だろう……。
『……おかえり、立花』
ふと、翔くんの優しい笑顔が浮かぶ。
……そうだ。翔くんは、わたしがデュランダルの力に呑まれても、必死に手を伸ばしてくれた。
暗闇の中でもわたしの名前を呼んで、必死に手を繋いでくれていた。
今回だけじゃない。わたしは、翔くんに助けられてばっかりだ。
最初は中学生の頃。周りが皆、わたしを笑っていた中で、翔くんはわたしのために怒ってくれていた。
次は二課で久し振りに会ったあの日。翼さんとの間に出来た壁をどうにかしようと、翔くんは一緒になって考えてくれた。
それから、生弓矢の護送任務の前の夜。人前で泣くなんて、久し振りだった。
でも、翔くんは『泣いてもいい』って言ってくれた。『周りを頼れ』って言葉も貰った。
『せめて俺の前では、自分に素直な立花響で居てくれ……』
あの言葉に、わたしはどれだけ救われた事だろう。お陰でわたし、翔くんの前だと悩んでる事、隠さず全部吐き出しちゃうようになっちゃったんだよ。
あと、生弓矢護送任務の時は、何回もアドバイスしてもらった。
『ノイズを恐れるな。君の手には、奴らを一撃で倒せるだけの……誰かを守る為の力があるんだからな』
特にあの言葉が、私の背中を押してくれる一番の励ましだったなぁ。
……そんな翔くんが、私を庇ってノイズの前に飛び出した時は、本気で泣きそうになった。
たった3日間だけど、わたし達は中学生の頃よりも仲良くなれていたし、わたしにとっては翔くんや翼さん、師匠や了子さん達がいる二課は、日常の一部になっていたから……。
だから、目の前でそんな日常の一部がノイズに奪われそうになったあの時は、心の底から願った。
翔くん、死なないで!って……。そしたら……。
『生弓矢……俺に……彼女を守る力を!!』
翔くんは、自分の手で奇跡を掴み取った。
生弓矢の欠片を自分の身体に突き刺して、わたしと同じ融合症例になる事でノイズの炭素分解を脱し、更には新しいシンフォギアを手に入れた。
涙が出るほど悲しかったはずが、涙が止まらなくなるくらいの嬉しさに変わった経験は、あれが初めてだったなぁ。
それから2人で一緒に歌って、ノイズ倒して。翔くんのバイオリン、綺麗なんだよねぇ。今度、任務以外で聴いてみたいかも。
任務が終わった後は、翼さんや緒川さんも揃って、ふらわーで一緒にお好み焼きを食べた。いつもと違うメンバーで食べるお好み焼きも美味しかったな~。
『もしかして、響ちゃんの彼氏だったりするのかい?』
……そういえば、あの時おばちゃんに言われた一言が、今でも胸に引っかかる。
わたし……わたしは……翔くんの事、どう思ってるんだろう?
ううん。本当はもう、とっくに分かってる。
こうやって翔くんの事を考えだすと、どんどん止まらなくなっちゃって……。
翔くんからの言葉のひとつひとつが、私の胸の中で生きている。
思えば、未来や創世ちゃん達以外にはやらないような事も、翔くんが相手だと自然にやっちゃってたような気もするし……。
わたしと未来の約束のために、ノイズを倒すの引き受けてくれたのに飛び出しちゃったのも、今思うと申し訳なさよりも、単純に放っておけなかったからだと思う。
翼さんのことで落ち込みそうになった時や、あのネフシュタンの子がわたしを狙ってるって分かった時、わたしの不安を払おうとして肩に手を置いてくれたのは嬉しかった。
師匠との特訓中、シャワー浴びて着替えようとした時に、わたしが入ってるの気づかなかった翔くんに……その……見られちゃった時は大変だったなぁ……あはは……。
そして今日、わたしを暗闇の中から引き上げようとしてくれた翔くんが、気付かせてくれた。
だって……あんなにドキドキさせられちゃったら、ちょっと遅れちゃったとしても、もう気付かない理由なんてなくなっちゃうじゃん!
「わたし、翔くんの事が……」
好き……。ううん……大好き!!
翔くん……翔くん、翔くん……。
もう、翔くんの事を考えるだけで胸がいっぱいで……ダメ!今度は別の意味で眠れなくなっちゃうぅぅぅ!!
はぁ、未来を抱き締めて落ち着こう……。
そう思っていつもやっているように、隣で眠ってる未来を起こさないよう、そっと抱き締める。
未来の柔らかさと温かさ、抱き心地が腕の中に広がる。
やっぱり未来は落ち着くなぁ……。
……未来の感触を感じると同時に、翔くんに抱き締められた時の感触を思い出す。
未来ほど柔らかくなかったけど、なんだか不思議と安心出来て……未来とは違った温かさがあって、それから……ちょっと、いい匂いがした気がする。
未来を抱き締めて寝る時は、お風呂の後だから、使ったシャンプーの匂いがするんだけど……翔くんの匂いはなんだろ?
香水……の筈はないし。でも、どこか知ってる匂いだったような……。
ひょっとして……汗、かなぁ……?
……って、何考えてるんだろわたし!これじゃまるで変態みたいじゃんっ!
も~……今夜はやっぱり寝られそうにないよぉ……。
わたし、祝わてるかも……。
そうやって、彼女の夜は過ぎて行く。
いつの間にか、親友を抱き締めたまま寝息を立てていた彼女の顔は、とても幸せそうな表情をしていた。
後書き
って事で今回は、「立花響の翔くん回想録」でした~。
汗の香りってフェロモン混ざってるから、その臭いをどう感じるかで相性分かるって話、性癖に刺さってるので頻繁に使う気がする(笑)
さて、次回からがいよいよ皆さんが不安と期待を胸に待ち望んでる部分!
原作にどこまで沿い、どこまで離れるのかをお楽しみに!
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