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戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~

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第3楽章~不滅の聖剣・デュランダル~
  第29節「完全聖遺物争奪戦」

 
前書き
さあ始まりました、第2回聖遺物争奪戦!
不滅不朽の黄金剣は、果たして誰の手に!?

テーテーテーテーテー
EUから譲渡された完全聖遺物、ネフシュタンの鎧によって引き起こされた〈ライブ会場の惨劇〉から2年。
我が国は『特異災害対策機動部二課』、『ノイズ』、『某国政府』の3つの勢力により、混沌を極めていた!!

強大な力を秘めたアイテムの争奪戦といえば、やっぱりこれでしょ?(笑) 

 
 高速道路を全力で駆け抜けること数十分。日が登り、ようやく空が青くなった頃。わたし達は、海上道路に差し掛かっていた。
 翼さんはいない……。でも、わたしは1人じゃない!空から指示を出してくれる師匠に、ハンドルを握っている了子さん。わたし達の周りを囲んで守ってくれている黒服さん達と、本部からバックアップしてくれている藤尭さんや友里さんもいる!
 なにより、後ろの席には作戦を考えてくれた上に、囮まで引き受けるって迷わず言ってくれた翔くんがいる。
 だからわたしも、わたしに出来ることを精一杯頑張るんだ!
 ……まだノイズは見当たらない。だけど、いつ出てきても良いように準備してないと──。
 
「あらあら、今からそんなに緊張していたら持たないわよ。予測では襲撃があるとしても、まだ先──」
「──了子さんッ!前ッ!」
 わたしの心中を察したかのように話しかけてくる了子さん。
 その時、後ろの席から前を見ていた翔くんが慌てた声で叫ぶ。見ると、目の前の道路が崩れ落ちるところだった。
 了子さんが素早くハンドルを切って、崩れた場所を避ける。
 けど、間に合わなかった黒服さん達の車が1台、海の方へと落下していく。……あ、落ちる前に車から飛び出してた。無事でよかった……。
「……二人とも、しっかり掴まっててね。私のドラテクは……凶暴よ!」
 そう言って了子さんは、ハンドルを強く握った。わたしと翔くんは慌てて席に座り直す。
 検問を抜け、車は街の中へと入って行く。ヘリに乗った師匠から、直ぐに通信が入った。
『敵襲だ!まだ目視で確認出来ていないが、ノイズだろう!』
「このまま一気に引き離せればいいんだけど……この展開、想定していたよりも早いかも!護送車がどんどんやられちゃってるわよ!」
 後ろの方を走っていた護送車の真下で、マンホールが水柱とともに勢いよく打ち上げられる。
 護送車は空高く吹き飛んで、遥か彼方に消えていった。
「ッ!?」
『下水道だ!ノイズは下水道を使って攻撃してきている!回避ルートをナビへと転送した、確認してくれッ!』
 
 送られてきたナビを見て、了子さんは怪訝そうな顔をした。
「……弦十郎くん、そのルートはちょっとヤバいんじゃない?」
 師匠から送られてきたのは、この先にある工場へと向かう道だった。
「この先にある工場で爆発でも起きたらデュランダルは──」
「ひゃあああ!ぶつかるううううう!!」
 前の方を走っていた護送車が、またマンホールに打ち上げられて飛んできた。
 了子さんは素早くハンドルを回して、それを軽々と避ける。
 避けた先のゴミ捨て場にぶつかって、積まれてたゴミ袋やゴミ箱を散らばせても、了子さんは止まることなくアクセルを踏み込んで進み続ける。
「分かっている!ノイズが護送車を狙い撃ちしてくるのは、デュランダルを損壊させないよう制御されているとみえる!狙いがデュランダルの確保なら、敢えて危険な地域に乗り込み、攻めの手を封じるって算段だ!」
「勝算は?」
 
「思いつきを数字で語れるものかよッ!!」
 
 上手くいくかどうか……了子さんの心配を吹き飛ばす、師匠の力強い言葉。
 尊敬する人からの頼もしい言葉に、翔くんが不敵に笑う。
「ああ!叔父さんの言う通りだ!思い付きをいちいち真面目に考えてから実行するようじゃ、男とはいえない!」
「了解……弦十郎くんを信じてあげるわッ!」
 そう言って了子さんは、アクセルを思いっきり踏み込んだ。
 目の前では最後に残った護送車の上に、下水道から飛び出したノイズがのしかかっている。
 黒服さん達は護送車を飛び出し、車はそのまま一直線に目の前の燃料タンクへとぶつかり、爆発した。
 残ったわたし達は、工場の中の道を一直線に突き進んでいく。
 
「工場に入っちゃったけど、ノイズは──やった!狙い通り追って来ません!このまま逃げ切りましょう!」
「させるかよッ!!」
「ッ!?この声は!」
 次の瞬間、破裂音と共に車がひっくり返る。
「──ッ!響ちゃん、掴まって!!翔くんも!!」
「えっ……わあああああああああ!?」
「南無参ッ!」
 上下逆さまにひっくり返った車は、コマのように回りながら滑っていき、ようやく止まった。
「い、いたた……。2人とも、無事かしら?車から抜け出せそう?」
「はい、どうにか……」
「問題ありませんが……奴さん、どうやら逃がす気は無いらしいな……」
 シートベルトを外し、ドアを開けて何とか車から這い出すと……周りは既に何体ものノイズに取り囲まれてしまっていた。
「不味いな……猫の子1匹逃げられる隙間もない」
 周囲を見回した翔くんが呟く。
「だったらいっそ、デュランダルはここに置いて、私達は逃げましょう?」
「そんなのダメですッ!」
 了子さんの提案を、わたしは即座に否定する。
 確かに、それならわたし達は逃げ延びられるかもしれない。
 でも、この子にデュランダルを渡すわけにはいかない!そんな事したら、きっと大変な事になる!
 
「俺達は、広木防衛大臣が残した意志を背負って、この作戦に臨んでいるんです!放り投げるなんて真似、出来るわけがありません!」
 翔くんもデュランダルのケースを手にそう言って、建物の上からこっちを見ている鎧の少女を睨み付けていた。
「そりゃそうよね。──二人とも、来るわよ!」
 前を見ると、ノイズが形を変形させて、こちらへ向かって勢いよく飛んでくる所だった。
 慌てて走って逃げようと車から離れる。次の瞬間、ノイズに破壊された車が爆発した。
「うおおっ!?」
「うわあああっ!」
「くうっ!」
 爆風で3人揃って吹き飛ばされ、地面を転がる。
 その拍子に翔くんの手から離れたデュランダルのケースは、少し離れた所に滑って行った。
 
 ∮
 
「大丈夫か翔ッ!響くんッ!了子くんッ!……くっ、通信が!」
 ヘリの前には工場から上がった爆煙が広がっている。
 現場の様子は煙に隠れ、一切把握出来ない状態になってしまった。
 弦十郎は現場に残る3人の無事を祈りながら、爆煙を避けて回り込むように指示を飛ばす。
「無事でいてくれよ……!」
 
 ∮
 
 目の前にはデュランダルのケース。
 爆風に巻き込まれたとはいえ、まだ立つことは出来る……ッ!
 ケースの方へと手を伸ばして、宙を切る音に後ろを振り返ると、ノイズ達がまたしても突貫してくる所だった。
 目の前にはデュランダル、隣には動けない立花、そして棒立ちの了子さん。
 まずい、聖詠が間に合わない……ッ!
 
「……しょうがないわね」
 了子さんが右手を前に出す。
 次の瞬間、了子さんの右手から紫色の光が発せられ、バリアを形成。こちらへと向かってくるノイズ達は、バリアに当たった瞬間弾け飛んだ。
「りょ、了子さん!?」
「え、了子……さん……!?その力は……」
 素手での戦闘能力が何故か憲法に接しかねないレベルの叔父さんと、現代を生きる忍者である緒川さんはともかく……了子さん、そんなものを隠し持っていたのか!?
 って事はこのバリアも異端技術の結晶か何かって事だよな……?
 流石、自称天才考古学者……。二課ってやっぱり大人ならぬ、OTONAの集まりなんだなと実感してしまう。
 ノイズがぶつかった衝撃で、了子さんの髪留めと眼鏡が外れる。
 普段見られないロングヘアを風に靡かせ、了子さんは不敵に笑うと、俺達の方を向いて言った。
「翔くん、響ちゃん。あなた達はあなた達のやりたい事を、やりたいようにやりなさいッ!!」
「「……はいッ!!」」
 了子さんが稼いでくれた貴重な時間、無駄にはしない!
 だから、聞いていてください……俺達の歌を!!

「──Balwisyall(バルウィッシェエル) Nescell(ネスケル) gungnir(ガングニール) tron(トロン)──」
 

「──Toryufrce(トゥリューファース) Ikuyumiya(イクユミヤ) haiya(ハイヤァー) torn(トロン)──」

 
 装着されるシンフォギア。胸の奥から溢れ出る歌と、それに呼応するかのように伝わる旋律。
 アームドギア・天詔琴を構え伴奏を始めると、立花は拳を構える。
 叔父さんとの特訓の成果、見せてやろうじゃないか!
 
 

 
後書き
緒川「翼さん、お見舞いに来ましたよ」
翼「緒川さん……わざわざすみません」
緒川「いえいえ。と言っても、任務があるのですぐに戻らなくてはならないのですけれど」
翼「今朝方、護送車と櫻井女史の車が出ていくのが見えました。もしや、護送任務ですか?」
緒川「はい、デュランダルの護送です。翔くんと響さんが、了子さんとデュランダルを守る為に出てくれています」
翼「あの二人が?……そうですか。私の代わりに……」
緒川「おや?いつもならここで、心配になって飛び出そうとする所では?」
翼「いえ。流石にそんな、身体に障るような真似は出来ません。それに、翔と立花であれば必ずやり遂げる。そう信じてますから」
緒川「なるほど……。翼さんは、あの二人を信じているのですね」
翼「以前の私では、あの二人に……翔はともかく、未熟な立花に任を預けるなど、出来なかったかもしれませんね」
緒川「つまり、今なら響さんも信頼出来る。そういう事でしょうか?」
翼「はい。今の立花になら任せられます。未熟ながらも、翔と共に戦場
いくさば
に立つ身として相応しい戦士であるかと」
緒川「そうですか……。安心しましたよ」
翼「安心?」
緒川「翼さん、ようやく肩の荷が降りたって顔をしていますから。そんな優しい顔を見られたのは久し振りだったので」
翼「そう……ですか?」
緒川「はい、とても。もしかして、眠っている間に奏さんにでも会いましたか?」
翼「……はい。久し振りに、笑っている奏と……」(ベッド脇の机に置かれたスタンドから下げられている、片翼のイヤリング(オレンジ)を見つめる)
緒川「それは……よかったですね」
翼「ええ……」

翼「ところで緒川さん、その茶封筒は一体?それからどうしてボイスレコーダーを?」
緒川「茶封筒はお見舞い用、翼が眠っている間の翔くんと響さんを収めた写真です。それからボイスレコーダーには、その際の音声が録音されています。どうです?」(ベッド脇の椅子に腰掛ける)
翼「ッ~~~!?おっ、緒川さんも意地悪ですっ!」
緒川「でも、響さんを認めた今の翼さんなら、あの2人の事が気になって仕方ないのでは?」
翼「……時間の許す限りで構いません。その……詳しく、聞かせてください……」(枕を抱き締めながら)
緒川「では、どこから始めましょうか……。翼さんが入院した直後からでも?」
翼「なっ!?あの二人、私が入院してすぐに!?一体何が……」
緒川(翼さん……可愛くなったなぁ……)ニコニコ

ブラコンSAKIMORIをネタにするだけの後書きだと思っていたのか?
いいえ。かなつば&おがつば風味のブラコンSAKIMORI陥落ネタです。
後書きがもはや本編の補完になり始めたのもこの頃かぁ。
次回もお楽しみに! 
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