戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~
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第2楽章~約束の流れ星~
第18節「約束の日、迫る」
前書き
やっぱり10分毎に1話ずつ解放とかまどろっこしいから、21時30分に一斉解放したる!
「何なんだよあれは!あんなのがいるなんて聞いてないぞ!!」
町外れの古い洋館。鎧の少女は扉を開くなり、家主である彼女を問い詰める。
部屋の隅に広がる暗がりから現れた彼女は、淡々と告げた。
「あれは私も想定外よ。まさか奪う筈だった聖遺物が新たな融合症例を生み出すなんてね」
「チッ……。“フィーネ”、次はどうすればいい?」
聞くだけ無駄だと悟った少女は早々に追求をやめ、次の指示を待つ。
幼い頃に両親を喪い、身寄りもなく、帰る場所を失った少女は彼女に飼い慣らされる事でしか、生きていく術はないのだから。
「そうね。生弓矢を奪う事は出来なかったけど、代わりに想定外の収穫もあったわ。検体は二つあった方が便利でしょう?」
「攫ってくればいいんだな?逃げ回っていた、あの二人を」
「話が早い子は嫌いじゃないわよ。それじゃあ、決行の日は追々伝えるから……」
フィーネと呼ばれたその女性は、窓から差し込む光に照らされる金髪を揺らしながら、ゆっくりと少女の方へと近づいて行く。
そして、その耳元に口を寄せると、妖艶な笑みと共に囁いた。
「私を失望させないよう励みなさい、クリス」
その一言には、有無を言わさぬ圧が存在した。
一瞬肩を跳ねさせ、クリスと呼ばれた少女は歯を食いしばる。
フィーネが離れると、クリスはネフシュタンの鎧を脱ぎ捨てる。 鎧の下から現れた少女は、5年前と変わらぬ銀髪を揺らして俯くのだった。
∮
立花が二課に配属されてからひと月。
あれから俺は放課後になると、姉さんと立花の3人で、本部のシミュレーターを使って鍛錬に明け暮れていた。
「はぁっ!せいっ!」
「フッ!ヤアァッ!立花、翔!そちらに向かったぞ!」
「フンッ!ハッ!了解!」
姉さんが倒し損ねたノイズを、俺と立花が殲滅する。
連携は大分取れるようになって来ていたし、何より立花の拳も少しずつだが磨きがかかり始めていた。
「これで……最後ッ!!」
立花の拳が最後の一匹に風穴を開け、シミュレーションが終わった。
二人の体が一瞬光に包まれ、元の制服姿に戻る。
俺も心で念じると、シンフォギアは一瞬輝きブレスレットの中へと収納された。
「本日の鍛錬はこれにて終了だ。二人とも、腕が上がって来ているな」
「翼さん、ありがとうございます!お陰でちゃんと、誰かを守れるようになって来ている気がします!」
「気がする、じゃないだろ?立花はもう立派に誰かを守ることが出来る。一人前とは行かなくても、俺や姉さんが支えているんだからな」
「無論、立花も私達を支えている。私達は支え合う事で人々を守っていくのだ……だろう?」
「俺が言おうとしてたのに先に言わないでくれるかなぁ姉さん!?」
「ぷっ……あっはっはっはっはっは!」
「ふふ……ハハハハハ!」
姉さんにセリフを先取りされ、不満を叫ぶと二人は可笑しそうに声を上げて笑った。
2週間前のギスギスとした空気は、とっくに消えていた。
「それにしても翔、お前のRN式……シンフォギアtype-Pは時間制限があったのではなかったか?」
姉さんの疑問に俺は、前にメディカルチェックの結果を聞いた時、了子さんから言われた事を伝える。
「立花と同じで、生弓矢は俺の身体と完全に融合しているらしい。お陰で制限時間は解消されたんだとさ」
「へぇ~……って事は、翔くん私とお揃いって事?」
「ん~……まあ、分かりやすく言えばそうなるかな?」
あの時は必死だったとはいえ、我ながらよくもまああんな真似が出来たものだ……。
あれが愛の力……立花を守りたい、という俺の願いが生み出した力か。
俺が好きな特撮映画のヒーロー達も、口を揃えて愛の力は無限だと言っていた。頭で分かっていたつもりのそれを自分の身で実感した、貴重な経験だったと思う。
「お揃い、か……。いや、流石に体質がお揃いというのは希少というか、特殊すぎやしないか……?」
姉さんのツッコミはごもっともだ。普通に生活してたら有り得ないもんな。
でも、俺の抱いているこの愛って、果たしてどれなんだろうな……。
友愛?恋愛?
個人的には無償の愛的なものだと思ってるんだけど……。
まあ、そこまで難しく考えることでもないのかもしれない。この感情が"愛"だという実感に、変わりはないのだから。
「それで立花、レポートは片付きそうか?」
「翔くんが手伝ってくれたお陰でバッチリだよ~。未来との約束、ちゃんと果たせるかも!」
時間を見て、立花にはレポートの提出期限が迫っていた事を思い出す。
どうやら手伝った甲斐あって、早めに終わらせることが出来ていたらしい。
「そうか。ただし、提出には遅れるんじゃないぞ?」
「は~い」
「むう……お前達、本当に仲が良いな……」
溜息混じりに姉さんがそう呟く。
そんなに呆れるほどの事だろうか?
「それじゃ翔くん、翼さん!また明日!」
「今夜中にしっかり仕上げるんだぞ!いいな?」
立花は手を振りながらシミュレータールームを出ていった。
やれやれ、あれだけ動いてまだ元気が残ってるとは。まあ、そこが彼女のいい所なんだけど。
「しし座流星群、か……。俺も見られるといいんだけど……」
ふと、そんな事を呟きながら、俺は立花の姿を手を振って見送った。
∮
「……響、寝たら間に合わないよ?」
「……うん」
リディアンの学生寮。その一部屋の真ん中に据えられた机の上、もうすぐ書き終われるのが見て取れるレポート用紙の前で、響はこっくりこっくりと船を漕いでいた。
その向かいに座る黒髪のショートヘアー、後頭部に大きな白いリボンを付けているのが特徴的な少女、親友の小日向未来はノートパソコンに向き合いながら、響に声をかけていた。
「そのレポートさえ提出すれば、追試免除なんだからさ」
「んにゃ……」
「だから、寝ちゃダメなんだって」
「寝てないよぉ……起きてるよぉ……。ちょっと目をつぶってるだけ……」
相変わらず響は机に突っ伏したままだ。
どうやらレポートを締め括る、最後のまとめに苦戦しているらしい。
昨日、未来は彼女のレポートに目を通してから、意外にも早く進んでいる上によくまとまっている事に驚かされたばかりだ。
「もう……。珍しくレポートが進んでるからって、調子に乗っちゃって」
「えへへ……」
最近帰りが遅いのが気になるが、果たして何をしているのだろう。
何度聞いても、何故か話したがらないのは一体どういうわけなのか。レポートの進み具合が珍しく早い事と関係があるのか。
不安ではあるものの、未来は敢えて追求しない。親友はいつかきっと、正直に話してくれると信じているからだ。
だから代わりに、未来はノートパソコンを響の方にも向け、見ていた動画を見せた。
「……そうだ。響、この間の約束、覚えてる?」
「約束……。あ、流れ星!」
「そう、しし座流星群。あのね、それがもうすぐ来るんだって」
「本当ッ!?もうすぐ約束、果たせるね未来!」
そう言うと、響はようやく身体を起こす。
「もう……調子いいんだから。ちゃんとレポートやらなきゃ、追試と重なって見られなくなっちゃうんだからね?」
「う……。よーし、それならさっさと終わらせちゃうぞー!!」
ようやく響もやる気のスイッチが入ったようで、シャーペンを持ち直すと再びレポートへと向き直った。
「私も手伝うから、ね?」
「ありがとう!一緒見ようね、未来!」
そう言って笑顔を向ける親友に、未来は微笑みかけるのだった。
後書き
翼「今日は私と!」
緒川「僕ですね」
翼「本編ではよく一緒に出ていますが、ここで揃うのは初めてですね」
緒川「さて、何を話しましょうか。そういえば最近、二課内部で発足したある会の副隊長に任命されちゃいました」
翼「初耳ですね。どんな集まりなのですか?」
緒川「"翔くんと響さんを見守り隊"という集まりなのですが」
翼「なっ!?まさか二課内部でそのようなものが発足するレベルとは……」
緒川「了子さんが風鳴司令まで巻き込んで、今やその規模は二課全体に広がりつつありますよ」
翼「くっ……外堀が思いのほか早めに埋まって行く……ッ!ですが私はまだ認めてませんからね!」
緒川「ちなみに翼さんに対しては、『弟離れ出来ない翼さん可愛い』『内心では認めてるのに素直に認めたがらないところがいい』『可愛いのでもうしばらく弟と未来の義妹の関係を見つけられては葛藤し続けてください』『いっそ響ちゃんと二人で弟を可愛がっては?』という声が多数上がってるみたいですよ」
翼「私の行動さえ彼らの糧、だと言うのですか!?」
緒川「翼さん、そろそろ諦めた方がいいと思いますよ」
翼「むむむ……あなた方は私を何だと思っているのですか!!」
防人をたかSA(ただのかわいいSAKIMORI)として書けるよう、努力していたこの頃。ブラコン化が進む理由の一環にXVが辛かったからだというのがありました。
次回、リディアンでの学園生活風景!ようやく出番だよ、ひびみくのズッ友トリオ!
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