曇天に哭く修羅
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第一部
不安
前書き
_〆(。。)
「貴君も【魔術師】であるか……」
眼鏡の男子は《立華紫闇/たちばなしあん》に近付いて彼のことを見据える。
「ああ。今年から【龍帝学園】に通うんだ。君は俺の同級生なのかな?」
「オレも龍帝学園の新入生だ。《江神春斗/こうがみはると》と言う」
「俺は立華紫闇。学校ではライバルになるわけだけど宜しくな」
春斗は『うむ』と首を縦に振る。
そこに彼が出てきた曲がり角からまたもや龍帝学園の制服を着た生徒が姿を現す。
「おお、居た居た。捜してたんだぞ春斗」
紫闇より10cm以上背が低いだろう男子はスタスタと二人の元に歩み寄る。
「あり? もしかして紫闇か?」
「エンド?」
《エンド・プロヴィデンス》
紫闇とは小学生からの幼なじみだ。
「何だ。貴公の知り合いだったのか。もう少し早ければオレの出る幕は無かったな」
どうやら春斗もエンドと親しいらしい。
エンドは倒れている【刻名館学園/こくめいかんがくえん】の男子を見て察する。
「こいつ等も懲りないな。いっそ刻名館に乗り込んで締めてやるか」
物騒なことを言い始めたエンドを紫闇と春斗が二人がかりで宥めすかす。
彼の実力なら魔術学園の一つや二つ落とすのは朝飯前なのを知っているから。
紫闇の知り得る限り、本気のエンドを止められるとしたら彼の兄かもう一人の幼なじみ。
(【魔神】なら知らないけど)
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
気を静めたエンドに一息ついた紫闇と春斗はエンドのことについて話す。
「へー、それじゃあ江神は昔からエンドと修業してきたわけなんだな」
「うむ。エンドはオレの目指す一人だ」
江神は家に道場が有る裕福なところらしいのだが代々剣を学び『武』に生きる家系のようで、厳格に育てられてきたのだという。
(何か納得だわ。そんな雰囲気だし)
自分と違って幼い頃から親や祖父に仕込まれてきたのだろうことが手を見て判る。
いわゆる『剣だこ』が有った。
何度も豆が潰れ、皮が分厚くゴツゴツしたものになってしまった剣士の手。
年季が入っている。
春斗は線こそ細く見えるが首から下は絞り込まれた筋肉に覆われているに違いない。
エンドと同じ系列の人種だ。
「そろそろ帰るか。明日から授業だしな」
紫闇は二人と別れて帰路に着く。
「参ったなぁ。トレーニングは8年間やり続けてきたけど彼奴等みたいに『戦う為』の体は作ってきてないんだよなぁ俺」
魔術師の【魔晄】と『異能』が有るので普通の人間にも出来る戦い方なんて意味が無いと世間では武に対しての評価が少し低くなっている。
まあエンドや春斗は例外過ぎて参考にならないが、だからと言って魔術師に生身の戦闘技術が必要でないということは決して無い。
自身の異能が通じない相手も居るのだから。
後書き
_〆(。。)
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