占術師速水丈太郎 死の神父
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第十五章
そこで遅い夕食を摂りそれぞれシャワーを浴びてベッドの中で休んだ。聖職者である司祭は質素な食事を好み速水もそれに合わせた。だが。
朝起きて朝食を共に摂りつつだ、速水は司祭に朝食のパンとミルクそれに苺を食べつつそのうえで話した。
「今日お仕事が終わりましたら」
「その時は、ですか」
「はい、夜に私がご馳走して宜しいでしょうか」
「速水さんがですか」
「そうです、お仕事が終わったら」
その時はと言うのだった。
「私がです」
「ご馳走して下さるのですか」
「このクロアチアはワインが有名ですね」
「名産地として知られています」
イタリアの隣国であり葡萄の栽培に適した土地柄なのだ、その為ワインの産地でもあるのだ。
「ですから」
「ワインをですか」
「ワインに美味しいものも」
こちらも忘れていない、紗耶香程ではないが速水も美食家であるのだ。だから今もこう司祭に言うのだ。
「両方です」
「そうして頂けますか」
「ですからその時をお楽しみに」
「そこまで言って頂けるなら」
それならとだ、司祭も頷いた。そうしてまずは朝食を食べた、それが終わると。
速水はホテルを出てそうしてだった、そのうえで。
司祭と共に昨夜死闘が行われた方に向かった、そこに目指す聖堂があるからだ。それでそちらに足を進めていると。
沙耶香も来た、だが紗耶香は石鹸やシャンプーの香り以外にも。
香水そして隠しきれない人それも大人の女の濃厚な香りも漂わせていた、速水はその沙耶香に会って司祭も入れて三人で挨拶をしてから話した。
「昨夜もですね」
「ええ、美形の男の人も美少年もね」
「お会い出来ず」
「昨夜もよ」
妖艶な笑みを浮かべての返事だった。
「女性を楽しんできたわ」
「左様ですね」
「いい娘が二人いたから」
「お二人ですか」
「一緒に一晩泊まって」
そしてというのだ。
「楽しませてもらったわ」
「そうですか」
「ええ、それではね」
「今からですが」
「行きましょう、仕事は終わらせてね」
紗耶香の悠然とした態度は変わらない、そこには明らかな余裕があった。
そしてその余裕と共にだ、速水に言うのだ。
「それからはね」
「楽しくですね」
「色もお酒も楽しむわ」
「やれやれですね。宜しければ」
「気が向けばね」
まるでカルメンの様に移り気な感じだった、沙耶香の今の返事は。そしてその返事からさらに言うのだった。
「その時はね」
「そうですか」
「ええ、けれど今は気が向いていないから」
だからだというのだ。
「それはないわ」
「そのこともわかりました、それでは」
聖堂に行こうとだ、こう話してだった。
速水は司祭そして沙耶香と共に聖堂に向かった、朝に見る聖堂は同じものである筈なのに昨夜とは別の建物に見えた。朝と夜で全く別の世界になったかの様に。
その聖堂を見てだ、速水は紗耶香に言った。
「夜見ると禍々しく不気味な場所でしたが」
「今はね」
「一見ですが」
あくまでそうであってもというのだ。
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