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戦国異伝供書

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第六十一話 一騎打ちその二

「わしを助けてくれた、見れば二郎様もじゃ」
「はい、あの方の旗が見えまする」
「二郎様はご健在です」
「生きておられますぞ」
「そうして戦っておられまする」
「お館様はわしにまだ当家にいてよいと言われるか」
 信玄の気持ちを解してだ、山本は隻眼の顔をやや俯けさせて述べた。
「左様であるか」
「そうではないかと」
「源次郎殿達がここに来られたとなると」
「やはりお館様でしょう」
「あの方がそうされたのです」
「そうじゃな、そしてこれが天命か」
 山本はこうも考えて述べた。
「わしはまだやるべきことがある様じゃ」
「まだですな」
「武田家の為に働く」
「そのことがですな」
「それはお館様のお気持ちと同じか」
 信玄が山本に武田家にこれからも仕えていて欲しい、そう缶がテイルことというのだ。
「左様か、ではな」
「それではですな」
「山本殿はこれからも働かれますな」
「武田家の為に」
「お館様、そして天がそう望まれるなら」
 ならばとだ、山本はその天を見つつ言った。
「そうしよう、見れば」
「どうされました」
「何かありますか」
「前の彼方を見よ」
 兵達にそこを指し示して話した。
「今は僅かであるが見えるであろう」
「?あれは」
「まさか」
「まさかと思いまするが」
「そのまさかじゃ」
 兵達に話した。
「これはな」
「援軍ですか」
「ここで来てくれたのですか」
「高坂殿が」
「飯富殿も」
「助かったのじゃ」
 山本は笑ってこうも言った。
「我等は。そして何よりもな」
「お館様ですね」
「軍勢全体もまた」
「これで助かる」
「左様ですね」
「そうなったわ」
 こう言うのだった、そして実際にだった。 
 高坂は軍勢を率いてだ、兵達に言っていた。
「よいな、これからな」
「はい、上杉の軍勢にですな」
「これからですな」
「攻めに入る」
「そうしますな」
「そうじゃ、ここで攻めて」
 そうしてというのだ。
「お館様をお救いするぞ」
「何とか間に合った様じゃ」
 飯富は戦の場を見て言った。
「ここは」
「はい、軍勢は健在です」
「かなり追い詰められている様ですが」
「何とか持ち堪えています」
「それではですな」
「我等は」
「お館様も軍勢もな」
 その全てをというのだ。
「お救い出来るぞ」
「それではです」
「急ぎましょう」
「そして一刻も早くです」
「お館様も軍勢も」
「そうじゃ、声をあげよ」
 飯富は兵達もこうも告げた。 
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