DQ3 そして現実へ… (リュカ伝その2)
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ポルトガ
<ポルトガ>
アルル達は海風香る港町を、ポルトガ城へと歩いている。
この世界でも屈指の造船技術を誇る国だけあり、この港町は活気に溢れている。
それでも、この国の人間に話を聞けば、10数年前より衰退していると答えるであろう…
「しかし、頑丈そうな船がいっぱいあるねぇ~。1隻くらい貰えると良いね!」
「そうだよな!世界を救う為に過酷な旅を続ける勇者一行なんだから、船ぐらいくれても罰は当たらないよなぁ!」
リュカの無責任な願望に、ウルフが本気で同意する。
「また馬鹿な事を…そう簡単に船なんかくれるわけ無いでしょ!」
「せやで!アルルの言う通りや!きっと『面倒な問題を解決したら、考えてやる』的な事を言われるで!」
「えぇ~………めんどくせぇ~………」
それ程高くないリュカのテンションが、極端に下がったところで、一行はポルトガ城へと辿り着いた。
ポルトガ城謁見の間控え室で待つ事数10分…
長時間待たされる事を覚悟していたアルル達だが、予想に反し待つことなく謁見が叶った。
「うむ。面を上げよ…お前等が勇者一行だな。」
謁見の間の玉座に座るポルトガ王に対し、片膝を付き恭しく頭を垂れるアルル達。(さすがのリュカも、まだ恭しくしている)
「は!私はアリアハンより魔王バラモスを討伐するべく、旅立ちましたアルルと申します。この度はお目通りを賜り、感謝致します」
アルルが形式的(常識的?)な挨拶をし、話を進めていく。
「そんなに畏まる事は無い…もう少し楽にして良いぞ」
ポルトガ王はある種の禁句を言ってしまった。
すかさず立ち上がり、体を揉みほぐすリュカ…(案の定…)
そんなリュカの行動を見て、胃を押さえるアルル達。
「ふぉ~ふぉふぉふぉふぉ!ロマリア王の言った通りだ!お主がリュカだな…何でも、ロマリアの王位継承を断ったと聞くが…本当か?」
「つまらない事を知ってますねぇ王様は…ロマリア王とは親しいのですか?」
家臣達が怪訝な顔で睨む中、涼しい顔で会話を続ける…
行く先々の王室で、家臣や側近達に敵意を芽生えさせる男…
「まぁ…お互い王だから…ある程度は親しいな。少し前にロマリア王から書簡が届いてな…お主達の事を高く評価している様だぞ!その書簡に船を与えてほしいと、熱心に嘆願が書かれておった」
「そうなんッスよ!船を1隻貰いたいんですよ!バラモスを倒す為には必要なんですよ!王様も平和になってほしいでしょ?」
「リュカさん…お願いだから言葉を選んで下さい!」
堪らずにアルルが小声でリュカに注意する。
「良いのだ勇者アルルよ!何者にも媚び諂わないのが、その男の良さだ!側近達にも言い聞かせてある…激怒し襲いかかる愚行はせぬよ。イシスでは襲いかかった男を、吹っ飛ばしたと聞いているぞ!?本当か?」
「レイチェルとも知り合いですか?やはり書簡が?」
「うむ!あのお嬢ちゃんがお主の事をベタ褒めしておるぞ!どうやら惚れた様だな!やるのぉ~色男!」
「いやぁ~イケメンですから!」
《何なのこの2人!同じ波長で話してる!!この国、大丈夫!?》
「しかしなぁ…そう易々と船はやれんよ!我が国の船は丈夫で値が張るからなぁ…」
「えぇ~………マジッスかぁ~」
「マジマジ!だから頼みを聞いてくれんか?」
「えぇ~………面倒事ッスかぁ~………ヤダなぁ~」
「そう言うなよぉ…余とお主の仲だろ!」
「う~ん…じゃぁ、しょうがないッスね!」
《どんな仲よ!今日会ったばかりでしょ!!》
思わず突っ込みそうになるのを、我慢するアルル…しかし我慢できなかった者も居た。
「どんな仲ですか!!今日が初対面でしょ、リュカさん!!」
ウルフである!
これが若さか………
「ナイス突っ込みウルフ君!」
「良い仲間が居るなぁ…余の部下は、碌な突っ込みも出来んよ!」
「使えないッスね!」
家臣達が拳を握り締め、ワナワナ震えている!
「あ、あの王様!…王様の頼み事とは…?」
耐えきれなくなったアルルが、泣く様に訪ねる。
「うむ。実はな、アッサラームの東の山脈を越えた地に『黒胡椒』なる珍味があるのだが…それを買ってきてほしい!」
「え!?マジで、そんな物と船を交換してくれんの?」
「うむ。マジマジ!!」
「やった!ちょ~簡単じゃぁ~ん!ラッキー!」
「そりゃムリやでリュカはん!」
今まで黙って傅いていたエコナが、慌てて発言する!
「アッサラーム東の山脈は険しすぎて、人間には超えられんはずや!せやから船が無いと東の地には行けへん!」
「えぇ~そうなのぉ~…じゃぁ船が先じゃん!船頂戴!」
「そう慌てるでない!方法はある!アッサラームより東へ半日程行った所に、洞窟があってな、そこに『ノルド』と言うホビットが住んでおる!この手紙をノルドに渡せば、抜け道を教えてくれるだろう…」
そう言って懐から手紙を取り出したポルトガ王は、リュカに手渡す。
「ふ~ん…そこまで準備出来てたんだ…じゃぁ、いっちょ頑張りますか!」
リュカは手紙を受け取ると、軽く片手をあげて挨拶し、ポルトガ城を後にする。
アルル達はポルトガ王へお辞儀をして、慌ててリュカの後を追う!
ポルトガ王の優しい眼差しと、家臣達の厳しい眼差しを背中に感じながら…
ポルトガ城下町の宿屋…
何時もの様にリュカの部屋で今後の方針を話し合う。
「まぁ…明日になったら、キメラの翼でアッサラームへ…そしたらノルドさんを訪ねて東の地へ…って事でいいよね!」
「えぇ…それで構いません…」
力無く答えるアルル。
「どうしたのアルル?元気ないね?お腹痛いの?オッパイ揉んであげようか?」
「どうしてお腹痛いとオッパイ揉むんですか!?関係ないでしょ!」
「イヤ…僕が揉みたいだけなんだが…ダメ?」
額に血管を浮き上がらせる程イライラするアルル。
「リュカはん!そない洗濯板より、ウチの爆乳があるやん!」
「な!!?せ、洗濯…「私だって大きいですよ!リュカさん以前褒めてくれたじゃないですか!何時でも良いですよ、私!」
エコナの無礼な発言に、アルルが激怒するがハツキのアピールに阻まれ取り残される。
「アルル…気にするなよ…その内大きくなるよ!」
(ゴッ!!)
やり場のない怒りを、ウルフにぶつけるアルル!
かなりの力で、ウルフの脳天に拳骨を落とした!
「ぃいってぇぇぇ~………俺、フォローしただけじゃん!」
頭を押さえ、蹲るウルフを無視して、アルルがリュカに詰め寄った!
「そんな事よりリュカさんに言いたい事があります!」
「何でしょう?アイラブユーですか?」
「違います!!いい加減、王様相手に軽口を叩くの止めて下さい!」
「な~んだ…そんな事かぁ…あはははは!………いい加減慣れてよ」
「慣れるわけないでしょ!」
アルルの怒りは収まりそうに無いが、夜も更けてきたので、今宵の会議は解散となった…
王様の我が儘の為…黒胡椒を求め新たなる地へ…
アルルのストレスは止まる事は無いだろう…
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