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ウルトラマンゼロ ~絆と零の使い魔~

作者:???
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黒星団-ブラックスターズ-part7/Let’s 侵略!

「……」
その頃、ブラックたちの手で拿捕されたジャンバード内では…
ムサシが主に整備・研究を行っていた操縦室にて、ブラック、シルバ、ノヴァの三人は、モニター前に設置された椅子に座る黒髪の少女、サツキの前で跪いていた。今のサツキの姿は、とても今目の前に跪くブラックたちの手で人質にされていたとは思えない。寧ろ彼女たちを従える女王…
…否…
「『エメラル鉱石は間違いなく用意できるんだろうな?』」
その後ろに隠れていた人形師の意のままに操られる、言葉通りの人形のようであった。実際、今の彼女の目には光はなく、ぐったりと首が傾いたままだ。すると、そこまで言ったところで、サツキの隣の何もない空間がゆらっと風になびくように揺れる。その揺れと共に、その下に隠れた存在がその姿を現した。
現れたのは、顔や両掌に渦巻き模様を刻んだ、金色の怪人であった。

『海賊宇宙人バロッサ星人』。

ブラックたちがサイトたちに領収証代わりに送り付けた手紙に隠していた隠し文字の通り、この騒ぎの黒幕たる、宇宙海賊の異星人であった。
今バロッサ星人は、サツキの頭を鷲掴みにしている状態。こうして頭を掴むことでサツキの脳の機能を抑制し、彼女を洗脳し意のままに操っているのだ。こうすることで彼女の口を借りて会話している。
「は、はい。先ほど実行した通り我々のメッセージを、トリステイン王政府直属の部隊に向けてメッセージを伝えました。後は奴らが要求の品を揃えるのを待つだけです」
ブラックは小物臭漂うへこへことした態度でサツキ…を操るバロッサ星人に頭を下げ続けた。
「『その割には、向こうはエメラル鉱石について対して認知していないようなのが気になるが?』」
「エメラル鉱石が実在することは、この船の動力に残された鉱石の残りカスが照明している。
豊潤なエネルギーを保有している、宇宙でも類を見ない鉱石。恐らくこの国の政府がひた隠しにすることで独占しようという腹積もりだろう。誰だってそんな夢のようなエネルギー源を他者に供給したがるはずがないからな」
なぜ不確かな存在を寄越すよう要求を出したのか。実際にこの船の動力部にて鉱石のカスが残っていたのをバロッサ星人が見つけたためであった。その鉱石をトリステイン側がすぐに用意しない理由を推察を込めてノヴァが言った。
「じゃあ、もしこの国がジャンバードを動かすだけの量の鉱石をくれなかったらどうするの?」
シルバがバロッサ星人に向けて問い出す。向こうの立場からしたら、たとえエメラル鉱石が用意できるとしても、敵対者とは取引をしないスタンスであれば、こちらの要求を呑まないことは十分に考えられる。いずれ人質を救出されるだけの算段を、もしくは人質を犠牲にしてでもこちらを潰しに来ることも予想された。
『その際は直接奴らの城に乗り込んで交渉する。この船に遠隔操作式爆弾を用意してな。その際は貴様らにも働いてもらうぞ』
バロッサ星人は、獲物としているこのジャンバードすらも脅迫材料として利用することも考えていた。この国の人間にとってもジャンバードは始祖ブリミルの時代からの重要な遺産にして謎の多いオーパーツ。サツキに人質としての価値をトリステイン政府が見出さないとしても、この船に遠隔操作式の爆弾を仕込む。ブラックたちに盗ませてきたマジックアイテムよりも、そしておそらくサツキ以上に失うことを避けたがるはずだ。
「『ところで…俺の知らないところで妙なことをしたりしてないだろうなぁ?』」
すると、バロッサ星人はジロッとブラックたちを睨みつける。
こちらを見透かそうとする視線の重さにブラックたちは息を呑むが、極力平静さを維持しながら、一番冷静なノヴァがバロッサ星人に返答する。
「当然だ。ここまでお前に従った以上我々にとっても、ウルトラマンもこの国の者たちも敵と言うしかなくなった。今更私たちに、この国で真っ当に暮らせることはない」
「『ふん、まぁわかっているならいい。いいな、絶対にこの俺に逆らうなよ?さもなければ…』」
そう言ってバロッサ星人は、一本の剣の刃をサツキの首筋に、ギリギリ切れない程度に押し当てる。しかもその剣は、ブラックたちに盗まれたデルフリンガーだった。
「ひ、た…助けて…ブラックさん」
しかもそれだけではない。サツキの口から、先ほど彼女を介したバロッサ星人の口の利き方と違い、か細い可憐な少女の声が漏れ出た。
「サツキ君!」
「ブラックちゃんダメ!」
 思わず身を乗り出しかけるブラックだが、シルバとノヴァが咄嗟に彼女の肩を掴んで止めた。
今の少女らしい声を出したサツキだが、今のはサツキ自身の意思によるものではなく、バロッサ星人が彼女を演じただけに過ぎない。ブラックたちが逆らわないよう徹底的に彼女たちの精神を追い込ませるために。
自分が最後に利を得るためならどこまでも利用し尽くし、あらゆる非道な手段をも厭わず欲しいものを手に入れる。それがこのバロッサ星人のやり方であった。交渉だなんてよく言えたものである。
「おいテメェ!こんないたいけな娘っ子を俺に切らせるのか!んなことしてみろ、俺の相棒が黙ってねぇぞ!」
デルフも当然黙っていられなかった。サイト以外の誰かに無断で振るわれるのも気分が悪いが、こんな外道に使われるのも凄まじく業腹なことであった。
「『ウルセェ剣だな。貴様も武器らしく黙って俺に従え。余計なことは喋るなよ。この娘の命が惜しけりゃな』」
ブラックたちにもしたように、今度はデルフをも脅すバロッサ星人。
「卑怯モンが…」
「『なんとでも言え。尤も、この小娘を盾にせずとも、貴様らのように『怪獣の力を行使できるだけ』で本物の怪獣ではない小娘の集団など、狙ったものはどんな奴からも奪い去ってきたこのバロッサ星人バロム様の敵ではないがな!バロバロバロバロ!』」
デルフの義憤もあざ笑い勝ち誇るバロッサ星人のバロム。サツキの口から言ってるせいか変にシュールだが、事態が事態なだけに全く笑えない。実際、図星を突かれてか、ぎりっとブラックたちは唇を噛んでいた。
「『さて、小娘共。この部屋から一旦出ていけ。せっかく手に入れたマジックアイテムを堪能したいからな。おっと、言っておくがだからって船からは出て助けを呼ぼうなどと考えるなよ。その時は、わかってるよなぁ?』」


バロムによって操縦室から船内の廊下に追い出されたブラック、シルバ、ノヴァの3人。ひとまず操縦室からやや距離を空けたところまで歩くと、操縦室の方をちらっと振り返り、また、周囲に怪しいものでもないか確認を取ると、3人は互いに顔を見合わせ、小声で話し合い出した。
「奴は見てもいなければ、監視カメラ越しに聞いてるわけでもないな?」
「大丈夫だ。この位置ならその類は確認できない」
「それにあいつ、私たちが盗ってきたマジックアイテムに目を奪われてる頃だから、人質を取られてる私たちのことなんて気にも留めてないよ」
ブラックからの確認の問いに、ノヴァとシルバは頷いた。
「よし、ではこれより第2回サツキ君救出作戦会議を行う。
例の、フーケの領収証を真似たメッセージカードは彼らの手に無事渡ったわけだが…後は我らのSOSに彼らは気づいてくれるのを待つだけだ。…あの様子だとバロッサ星人にはバレていないようだな」
会議と言うにはこじんまりとした、ただの即席談笑の場のようなものだが、仲間を救うための真剣な会話だ。とはいえ、あの手紙の隠し文字を通したSOS、複数の懸念すべき点があった。
ブラックは、バロムに手紙の真の内容がバレていないか、それが特に気になっていた。でも先ほどのバロムの様子からして、何とかバレずに済んだらしい。
「でも、あんな隠し文字にあの人たちが気づくかな?それに読んでもらえたところで、私たちの力になってくれるって思う?」
「心配いらない。我らがマスターのお告げは絶対だ。このお告げのおかげで、我らはこれまで様々な苦難を乗り越えてきた。此度も同じだ。この『ブラック指令』の予知能力をもってすれば、あらゆる困難を的確に乗り切れるのだからな」
そう言ってブラックは、一枚の紙を取り出した。そこには、ハルケギニアにおいては明らかにありえない文字……日本語、カタカナが刻まれていた。

『ヨウセイ ヤカタ タヨリ オクレ
サスレバ ユメノトビラ ヒラカレン』

どうやらこれが、彼女の言う『お告げ』というものらしい。
「流石ブラックちゃん!どこから出るかもわからない根拠のない自信、いやはやお見それ致します!」
とはいえ手紙の隠し文字にサイトたちが気づかなければ手紙を届けたところで意味はない。それもまた懸念すべきことではとシルバは言うが、ブラックはそれについてはバロムにバレるか否か以上に自信たっぷりであった。
 その自信の源は、彼女が持つ予知能力というものにあるらしい。つまり…未来予知の力を持っているようだ。これが本当ならば、なるほど確かに自分の未来に絶対の自信を持つこともある意味当然かもしれない。
 一方でノヴァは警戒を促す言葉を告げる。
「ブラック、今回はもっと慎重に構えるべきだ。今回私たちが助けを求めた相手は、本来なら『怪獣娘』である私たちにとって最も頼ってはならない相手のはずだ」

ここで少し、説明を入れよう。

『怪獣娘』。
それは、とある次元の地球にて、かつて地球に脅威を振りまいた怪獣や異星人たち。そんな彼らの力と魂を受け継いで誕生した女性が、怪獣娘である。シルバの酸性の粘液と、ノヴァの赤い触手。今回サイトたちと交戦した際に使った能力もそれによるものだ。
だが当然そんな存在は、サイトやシュウをはじめとした、様々な世界からの来場者たちの世界に、当然この世界にもいなかった。
つまり、彼女たちもまた、別世界の出身者だったのである。

「む?どういうことだ『ノーバ』」
ノヴァが一体なにを懸念しているのか、ブラックはイマイチわかってないようだ。
「気づいてないのか?今日私たちと遭遇した連中の中にいたあの男たちは……ウルトラマンだ」
「何!?まさか……あの……あのウルトラマンか!?」
 ノヴァの言葉に、ブラックは青ざめる。
「そう、我ら怪獣娘の元となった怪獣・星人の、最大の天敵でもある。GIRLSとは比較にもならない脅威だ。特にあの時の男はおそらく、あのゼロだ」
「ゼロ!?ま、ままままさか…あのウルトラマンゼロか!?」
ウルトラマンの名を、それもゼロの名を聞いてますます蒼白となるブラック。
「気づいてなかったのか?バロッサ星人がなぜ、わざわざ透明マントで隠れた状態で、あの連中の前でサツキの口から脅迫していたのか。あの中にウルトラマンがいるってことを知っていたか、そうでなくても自分の存在をウルトラマンにバレないため以外にないだろ」
「しっかりしてよブラックちゃ〜ん。もしバレたら私たち、命狙われちゃうかもなんだよ?」
「やかましい!お告げにはなかったのだから仕方なかろう!」
しかしまさか気づいてなかったのかと、呆れた視線を向けるノヴァとシルバに、ブラックは言い訳がましく文句を言う。
「なんと言うことだ…マスターはこのことを分かった上で私に侵略のヒントを授けてくださったのか?
まずい…!これは非常にまずいぞ…ゼロと言えば、あのウルトラセブンの一人息子…加えて、我らの元になった怪獣たちの宿敵ウルトラマンレオの弟子……
もし私たちの正体や野望の詳細がバレたりなんてしたら…バロッサ星人もろとも我らも…しかもあの喋る剣は元々奴の愛刀…」
ウルトラマン…怪獣や星人の力を持つ彼女たちもまた、その勇名を知っていた。当然、自分たちにとって彼らが宇宙の何者よりも脅威であることも。最強の怪獣と言われるゼットンも一度はウルトラマンを倒したことも知っているが、その後のウルトラマンはいずれもゼットンよりも強くなって逆転勝利したので、ウルトラマンがゼットンに黒星をもらった事などもはや過去の話だ。 場合によっては、バロッサ星人共々倒すべき敵と見定められてしまうかもしれない。
加えると、実はブラックには壮大にして邪な野望があった。

それは…侵略による、世界の支配者となること。

これは、彼女たち三人の怪獣娘の力の源となった存在…『ブラック指令』と『円盤生物』…彼らの悲願である。
そう、魅惑の妖精亭で客を喜ばせ真面目に働いてスカロンから信頼を手にした彼女たちだが、悪党集団であることは紛れもない事実であった。
当然こんな野望を、宇宙の秩序と平和を守るウルトラマンが黙って見過ごすとは思えない。しかもデルフを奪い取ったことで恨みも買ってしまった。ブラックはかつてない恐怖と焦りで冷静さを失い始める。

「まだバレたと決まったわけではなさそうだよ。現にあのお兄さんたち、私たちの正体までは認知していないような口ぶりだったし」
シルバがまだ焦るようなことではないと、いつも通りの明るいノリで言う。
「それに、宇宙の平和を守るあいつらだからこそ、助けを求めた相手の意思を無視しないはずだ。お告げに従って送ったあの手紙の内容も、バロッサ星人の討伐とサツキの救出に関することだけで、侵略の記述は一切ない。ならば、多少に疑いはかけてもこちらの願いを聞き入れるはずだ。あとは、私たちがボロを出さなければいい。だからいつも通りの虚勢でも張れ」
「き、虚勢ではない!これはその…あれだ!強敵を前にした時の武者震いというやつだ!」
明らかに虚勢を張ってますと指摘したくなる様だが、シルバとノヴァはあえて突っ込まなかった。
「ま、まぁいい…それに我らの悲願の障害にウルトラマンがいたとしても、我らのやることは変わらない。
ブラックスターズの野望…そう、『惑星侵略』という野望を叶えるまで、我々は決して止まることは許されない!」
そんな自らの動揺を隠そうと躍起になってか、ブラックは堂々と己の野心を吐き出した。
「いいかお前たち、バロッサ星人からサツキ君を取り戻した暁には、我らブラックスターズは再びカフェ経営で資金稼ぎに入る。十分に金を稼いだら、まずはゲルマニアで貴族の位と権力を手に入れ、ブラックスターズはハルケギニア全土に向けて内部から侵略を開始するのだ!そしていずれ、ウルトラマンさえも凌駕する強大な力を得て全宇宙を支配する!」
「流石ブラックちゃん、侵略と言ってもいたずらレベルしかできてないくせに、壮大すぎる野望を保ち続ける!そこに痺れるあこがれルぅ!」
「私たちはあくまで楽しければいい」
前よりも野望が肥大化してるブラックを見てシルバは手を叩いて大笑いであった。
「お前たちと言う奴は…!全く…まぁ、お前たちもサツキ君救出だけでなく、我らの悲願を果たすために必要な仲間だ。
さぁ、いつものあれをやるぞ!」

ブラックの命令に従い、3人はそれぞれのポジションについてポージングに入った。

「銀色のレイダー、シルバーブルーメ!」
「赤きスナイパー、ノーバ…!」
「そして…漆黒のリーダー、ブラック指令!」

「「「我ら、『ブラックスターズ』!」」」
「行くぞブラックスターズ!Let's 侵略だ!」

トリスタニアの巷で、この異世界で未知なる飲み物でもあった絶品のコーヒーを提供した元魅惑の妖精亭のブラック、シルバ、ノヴァ、そして今バロッサ星人の手に落ちているサツキ。
その正体は、惑星侵略という野望を果たすべく暗躍している、四人の怪獣娘で構成された…

悪の組織『ブラックスターズ』なのだ。

「しかし、まさかこの星のウルトラマンの一人が、あのスカロン店長とは…通りで気がつかなかったわけだ…」
が、最後にあまりにも爆弾発言的な的外れなブラックの予想に、彼女以外の2人がズゴッ!と、新喜劇のごとくずっこけた。
「ぶふ!?」
「大真面目にボケるな。あの若い男二人がウルトラマンだ」
とりあえずノヴァ…ノーバはブラックの顔を触手で殴った。 その拍子にブラックの意識が刈り取られたが、二人はあまり気に留めなかった。
どちらにせよ今は時を待つだけだ。自分たちが仲間を救うために発したSOSを、ウルトラマンが受け止めるまでは…



そしてまた夜が更け、世界は変わる…
 
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