肉女の正体
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第五章
「言うまでもなくな」
「お魚よね」
「お前肉のサラブレッドって言ってな」
「お魚食べないとは言ってないでしょ」
やはり悪びれない。
「そうでしょ」
「そう言うのかよ」
「事実だからいいでしょ、大体ね」
安奈はここで攻勢に出た、それで言うのだった。
「ハンバーガーでもフィッシュバーガーあるでしょ」
「フライのか」
「ステーキハウスでもムニエルあるし」
こうした料理を挙げていくのだった。
「カルパッチョだってあるでしょ」
「カルパッチョは居酒屋とかだろ」
「従姉のお姉ちゃん居酒屋で働いてるのよ」
「だからいいっていうのか」
「そうよ、また言うけれどね」
「魚食わないとは言ってないっていうんだな」
「嫌いとも駄目とも言ってないわよ」
こうしたことは一切というのだ。
「そうでしょ、言ったことある?」
「そういえばないな」
「だからいいでしょ」
「本当に見事に開き直ったな」
周五郎も思わず唸る程だった。
「本当に」
「事実だからね」
「よく言うものだよ」
「それに沢山食べたからいいでしょ」
安奈は今度は昨日店で食べた皿の数をした。
「そうでしょ」
「四十皿な」
「私が十皿でね」
「お兄さんが三十皿か」
「そうよ、食べたからいいでしょ」
「店員としてはか」
「それでいいでしょ」
こう言うのだった、やはり悪びれず。
「そういうことでね」
「そう言うとな」
「またそっちのお店に食べに行くし」
「たらふく食えよ」
もう周五郎はこう言うだけだった、後は学校の授業の話をした。そして安奈がまた店に来た時に店員として接するのだった。
肉女の正体 完
2019・10・20
ページ上へ戻る