代々江戸っ子でも
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第二章
それで秋葉原のギャル店員と秘かにこの街で言う者もいる、だがその好きな食べものを聞いて皆驚いた。
「えっ、蕎麦!?」
「蕎麦って」
「秋葉原にいるのに蕎麦って」
「あたし江戸っ子ですから」
里美は驚く者達にいつも平然として返した。
「ですから」
「いや、それでもここ秋葉原だから」
「秋葉原でギャルはまだありにしても」
「ここで蕎麦は」
「ちょっとね」
「蕎麦屋自体ね」
縁が薄いというのだ。
「何処で食べてるのかな」
「この辺りで」
「東京何処でも蕎麦ありますよ」
やはり平然と答える里美だった。
「仕事帰りとか休日に」
「蕎麦食べてるんだ」
「そうしてるんだ」
「はい、ざるそばも汁そばも」
あらゆる蕎麦がというのだ。
「特にもりとかけが好きです」
「そうなんだ」
「とにかく蕎麦が好きなんだ」
「江戸っ子だから」
「今度の休みは神田の老舗のお店でざるとかせいろ食べてきます」
里美はにこりと笑ってこうも言った、そして実際にだった。
その次の休日は自分が言った神田の老舗の蕎麦屋に行ってざるやせいろを粋につゆは少しつけただけで噛まずに喉ごしで味わって食べた、その粋な食べ方はまさに江戸っ子のものだった。こうした粋な江戸っ子のギャル店員もまた秋葉原の住人である。何と懐が深く面白い場所であろうか。
代々江戸っ子でも 完
2019・10・16
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