蒼と紅の雷霆
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
蒼紅:第三十五話 楽園
GVとソウがベラデンで戦っている頃、1人だけで残っているオウカが不安そうな表情を浮かべながらも2人の帰りを待っていた。
「今ごろGVとソウさんは、エデンの本拠地で戦っているのでしょうか…第七波動も持たないただの人である私に出来ることは何もない…どうか、GV達が…帰ってきますように…」
そして場所はベラデンに戻り、2人は回復スキルで傷を癒し、奥へと進んでいく。
「…この感覚は…何だ?」
「……」
決意のような第七波動の奔流…人の情念らしきものを感じた2人は表情を引き締める。
立ち塞がる敵を蹴散らしながら奥にあるシャッターを潜ると、制御盤とシャッターがある。
「懐かしい仕掛けだな…制御盤(スイッチ)が2つになっているようだが関係ない!僕の蒼き雷霆抉じ開ける!…同時ロックオンだ!」
GVが制御盤に避雷針を撃ち込み、シャッターを開いて先に進んでいく。
GVにハッキングを任せて、ソウが敵に集中することで順調に進んでいく。
2つの制御盤とシャッターがある地点に到達すると、シャオからの通信が入る。
『複数の防壁が連携している?何だかパズルみたいだね』
「ジーノなら何かの漫画やアニメに例えそうだな…」
「…そうだな」
『誰、それ?』
「ただのうるさい知り合いだ。もう会うこともないだろう…余程のことがない限りな」
シャオの問いにソウは答える。
GVがカートリッジをナーガに切り替え、ナーガのチャージショットを放つと制御盤に避雷針を撃ち込んで雷撃を流し込んでシャッターを開いて先に進んでいくと、更に複数の制御盤のある地点に到達した。
「何だこの仕掛けは?」
『エデンもよくやるよ…けど、これは少し厄介かもね』
試しに避雷針を近くの制御盤に撃ち込み、ハッキングを試みるが、目の前のシャッターが開かないために数回、他の制御盤にも撃ち込んでハッキングすると、目の前のシャッターが開いた。
先に進んでいくつかのシャッターを潜ると広い場所に出た。
「レベル4エリアにて侵入者発見!総員出撃だ!同志を守れ!」
潜んでいたエデンの兵士とメカ群が2人に襲い掛かる。
「蹴散らすぞ…!」
「分かってる…向かってくるなら、容赦は出来ないんだ!」
ソウが高速移動しながら敵を斬り払い、GVがカートリッジをテクノスに切り替え、上空のメカに避雷針を撃ち込んで雷撃で破壊していく。
全滅させると2人は部屋を出て階段を駆け上がる。
襲ってくる敵は難なく返り討ちにしながら次のシャッターを潜ると再び広い部屋に出た。
「もうレベル5だと!?ええい!全兵力で奴らを止めろ!」
「しつこい奴らだ…!」
「止めろ…無駄な戦いはしたくないんだ…!」
先程の部屋よりもかなり攻撃が激しいが、力の差は歴然で、迫り来る敵を返り討ちにする。
そして最後のエデンの兵士をソウが撃破する。
「同志パンテーラ…すみません… 後は貴女に…任せます…」
「「………」」
兵士の1人の最期の言葉に2人が黙ると、シャオが通信を繋いできた。
『2人共、あいつらは敵だよ。シアンの力を奪って、シアンを拐った…』
シャオの言葉に何も言えずに2人はシャッターを潜り抜け、階段を駆け上がると次の部屋に入る。
「いい加減にしろ!勝てないと分かっていて何故向かってくる!?」
「もう向かってくるな!命を無駄にするんじゃない!」
次の部屋に入ると、再びエデンの兵士とメカ群が2人に襲い掛かる。
元々争いを好まぬGVは勿論、相手が迫害された能力者であり、力の差が歴然の相手であるためかソウも表情を歪める。
「敵わぬことなど承知済み!少しでもお前達を消耗させられるなら…それこそが、我ら歩兵(ポーン)の死命!」
「馬鹿な…!」
「やはり…止められないのか…!」
パンテーラの為に命を賭して戦おうとする彼らにGVとソウは表情を険しくしながら迎撃する。
雷撃が迸り、兵士達とメカ群を蹴散らすと倒れた兵士の1人が口を開いた。
「全ては、我らが理想郷の為…」
その最期の言葉を聞きながら2人は部屋を出て階段を駆け上がると、ある神話の話を思い出す。
ギリシア神話のオルフェウスは、毒蛇に咬まれ死んだ妻を蘇らせるため、地の底の冥府へと赴き、冥王(ハデス)と1つの契約をしたと言う。
“地上に戻るまで、決して振り返ってはならない”……と、だがオルフェウスは誓いを破り、妻を永久に失ってしまう…。
何故か2人はそんな話を思い出していた。
「僕は振り返らない…!」
「このまま突き進むぞ!」
一気に突き進み、奥のゲートモノリスを破壊して奥に進むと、この辺りの空間が電脳化しており、凄まじい熱を感じた。
「やはりお前達か…テセオ、アスロック!」
ソウが鋭く2人を見据えると、テセオとアスロックも即座に能力の行使が出来るようにしていた。
「久しぶりっスねww、これよりテセオさんとアスロックのまさかのコラボのお知らせーつってwww…アスロック…油断しない方がいいっスよ?弟の方もマジで強いっスから」
「……普段、自分の能力に絶対の自信を持つお前がそう言うのならそうなのだろうな…行くぞテセオ…調理開始だ」
「まさかのタッグか…気を付けろGV…あのアスロックは強敵だ」
「兄さんがそう言うならそうなんだろうね…気を付けるよ…テセオも相当な強さだ…気を付けて」
単体でも相当な強さだった2人が手を組んで、最初から謡精の力を解放しながらこちらを潰しにやってきた。
アスロックとテセオの能力を組み合わせたのか、テセオが出現させたメカ群はアスロックの糸で強化され、逆にガレトクローネはテセオの能力で強化されているのか前回の戦いの時とは火力が大幅に上がっている。
「テセオ!」
「うぃうぃww」
ガレトクローネがテセオの能力で電子化し、GVの真横に出現させる。
即座にアスロックがガレトクローネを操り、GVに突進を、ソウには機銃の弾幕を繰り出す。
2人はカゲロウで攻撃を凌ぎ、反撃を試みる。
「霆龍玉!!」
「エレキブレード!!」
狙うのは当然、この空間内では圧倒的なアドバンテージを持つテセオだ。
GVの雷撃とソウの雷刃波がテセオに迫る。
「甘いっスよ」
不敵な笑みを浮かべて転送でGVの背後を取り、糸車ビットを投げつけながら更にメカ群を転送させ、爆破、突進させてくる。
アスロックもガレトクローネと連携し、チャクラムを投擲して動きを阻害、凄まじい攻撃によってカゲロウを使わされ、オーバーヒートが起きる。
「ほいほい!追撃!つってwww」
「散れ!!」
テセオのレーザーとガレトクローネの機銃が2人に襲い掛かる。
「チッ!」
何とか攻撃を掻い潜り、チャージセイバーの斬擊をテセオを叩き込み、そしてGVも避雷針を撃ち込んで雷撃を流し込んでいく。
「痛っ!やっぱりあっさりとあぼんしてくれないっスねぇ…」
「この程度で倒されるようなら俺もお前も負けてはいないだろう。奴らは念入りに調理(ルセット)しなければならん。」
「うぃうぃwww」
ガレトクローネが転送され、2人の真上から降り、着地と同時に爆炎が迸る。
そしてアスロックが安全地帯に転送され、テセオは膨大なデータの奔流をレーザーのように周囲を攻撃する。
「くそ!厄介な…っ!」
「だけど反撃のチャンスは必ず来る!」
回避に徹して反撃のチャンスを待つ。
「そろそろ終わりにするっスよアスロック。世界の境界!揺らぐコード!電脳の王が座し存すのは寄せる者無き不沈の要塞!インプレグナブルフォートレス!!コピペからの~集中放火!!」
糸車ビットを大量にコピーし、GVとソウに凄まじい弾幕が襲い掛かる。
「終わりだ…糸が紡ぎし機人の演舞!絡み手繰るは死の運命!この戦場こそ我が厨房!!ビートアップアントルメ!!」
アスロックもSPスキルを使用し、2人の攻撃は激しくなっていくが、テセオの集中放火をGVの雷撃鱗で凌ぎ、オーバーヒートを起こしたGVをソウが抱えながらマッハダッシュを駆使してガレトクローネの猛攻を回避していく。
業を煮やしたテセオがメカ群を転送して一気に叩こうとしたのだが、この瞬間を待っていたのだ。
「兄さん!アンリミテッドヴォルト!!」
GVが自身の能力でソウの紅き雷霆の力を活性化させ、それを受けたソウはこの状況をひっくり返す一撃を繰り出す。
「迸れ、紅き雷霆よ!閃くは破滅の雷光!紅雷の刃よ、敵を斬り裂け!!ギガヴォルトセイバー!!」
「「!?」」
アンリミテッドヴォルトによって強化されたSPスキルの雷刃波はメカ群を蹴散らしていく。
「ヤバ…!」
テセオは即座にアスロックとガレトクローネを雷刃波の攻撃範囲から逃すが、自身の転送は間に合わずに雷刃波をまともに喰らってしまい、真っ二つに両断されてしまう。
「ガハッ…や、やっぱ…雷霆兄弟を相手に即興コンビのテセオさん達じゃ…荷が…勝ち過ぎたみたいっスねぇ…」
「テセオ!!」
体が崩壊していくテセオにアスロックが叫ぶ。
「でも…テセオさんのワールドハックは…こんな簡単に終わらない…!アスロックの切り札を…最後の力で…パワーアップ…したんス…ケド…つっ…て…」
「「切り札…?」」
「アスロック…後は…任せたっスよ…」
テセオの体が爆散し、宝剣が砕け散るとミラーピースがGVの手に収まる。
「テセオ…後は任せておけ……どうやら奥の手を使う時が来たようだな」
ガレトクローネの内部に入り込むとこの場を離脱するアスロックに2人は急いで追いかけるのであった。
「テセオの奴は最期に何をしたと言うんだ?」
「分からないけど、嫌な予感がする」
奥の方まで進むと広い場所に出て、アスロックの乗り込んだガレトクローネを発見する。
「追い詰めたぞ!大人しくミラーピースを渡すんだ!」
「追い詰めた…か…これを見てもまだそんなことを言えるか?」
GVの言葉にガレトクローネの背後には大型のロボットが鎮座していたが、よく見るとそのロボットには頭部がない。
「これは…何だ?」
ガレトクローネが巨大ロボットの頭部となり、起動を開始した。
「グラントルタ…スクラップを束ね、縫い合わせたガレトクローネの強化外装 …あの時はまだ未完成だったが、ようやく完成した代物だ…テセオが最期の力で強化したグラントルタの熱量で貴様らを焼き払ってくれる…!!」
「来るぞ!!」
グラントルタの巨大な拳が迫るが、咄嗟にジャンプで回避する。
「ガンヴォルト、ソウ。貴様ら兄弟をこの鋼鉄の拳で薄く潰す…ラングドシャの如くな」
「まさかここまでの大型兵器を使ってくるなんて…それにこれはテセオの能力で強化されている…」
死して尚、これほどの大型兵器に力を与えるテセオの能力と執念にGVは戦慄を覚える。
「テセオの執念…その身で味わえ!!」
レーザーが照射され、爆風で吹き飛ばされそうになるも何とか堪えるものの、次に火球が両肩から打ち上げられて2人に降り注ぐ。
「くっ…巨体なだけあって大した火力だ」
「弱点はアスロックが乗っているガレトクローネだ。あれを破壊すればこの巨大ロボットを倒せるはずだ…」
グラントルタはガレトクローネ…正確にはガレトクローネ内部のアスロックの第七波動のエネルギーの糸で動かしている。
つまり、動力源とも言えるアスロックを倒せばグラントルタは倒せるはずだ。
「(兄さんは先程の戦いでテセオとメカの大群を倒すのに無理をしたから体力の消耗が激しいからあまり無理はさせられないな)」
一方でGVは先程の戦いではアンリミテッドヴォルトを使っただけなのでまだ力には余裕がある。
「(まずは両腕を潰す。後はGVの最大のSPスキルに託すしかない。ここでSPスキルが使えない弊害が出るとはな)」
グロリアスストライザー
スパークカリバーの強化版であり、GVの最大のSPスキル。
その威力はGV以上の蒼き雷霆の能力者であったアシモフを未完成の状態で葬ったことから察することはでき、あれからもこのスキルの習得に訓練を重ね、エデンの兵士達との戦いを経て完成した一撃はかなり期待できる。
「砕け散れ!!」
グラントルタの両腕が床に叩き付けられ、それから凄まじい弾幕が襲い掛かる。
マッハダッシュを駆使してそれらをかわし続け、戻った両腕にソウはチャージショットを叩き込み、GVは避雷針を本体のガレトクローネに撃ち込んで雷撃を流し続け、ダメージを蓄積させていく。
「くっ…!!」
「よし!」
まずは右腕を破壊し、GVもガレトクローネのボディに亀裂を入れることに成功した。
「この程度で…!最大火力で燃え尽きろ!!」
右腕を失いながらも極太のレーザーを射出し、2人を薙ぎ払おうとするが、2人は即座にマッハダッシュと空中ダッシュを駆使して回避する。
「まだだ!」
もう一度レーザーを放射するが、2人は正反対の方向にマッハダッシュと空中ダッシュすることで回避するのと同時に反撃する。
「(やはり図体がでかいせいで機動力は無いようだな)」
GVは再びガレトクローネに避雷針を撃ち込み、ソウは左腕に集中攻撃を仕掛ける。
「小癪な…!」
左腕と本体に蓄積していくダメージにアスロックは苛立ちながらも反撃する。
火力は凄まじいが、巨体過ぎる故に小回りが利かないために攻撃は回避しやすかった。
「迸れ!紅き雷霆よ!プラズマビット!!」
ホバリングで滞空しながらショットとビットの雷撃弾を乱射する。
絶え間ない連続攻撃によって左腕を破壊、残るは胴体と本体のガレトクローネのみとなる。
「馬鹿なっ!?」
「GV!叩き込め!!」
とどめとばかりにGVが空中ジャンプで本体のガレトクローネに距離を詰めると詠唱を開始した。
「迸れ!蒼き雷霆よ!!掲げし威信が集うは切先!夜天を拓く雷刃極点!齎す栄光、聖剣を超えて!!グロリアスストライザー!!!」
「ぐあああああ!!?」
ガレトクローネのボディにスパークカリバーを上回る破壊力を誇る聖剣が炸裂する。
耐久限界を迎えたガレトクローネから爆発が起き、それによりグラントルタのボディからも爆発が起き始める。
「熱い…!俺が…焼かれる……!?」
爆発の熱に身を焼かれながらアスロックは自身の敗北を信じることは出来なかった。
「だが…俺の役目は果たした…謡精の宝剣が完成するまでの時間稼ぎはな…!貴様らには…パンテーラは止められん…!全ては甘美なる理想郷のため…!!ぐおおおおおお!!!」
しかし最低限の役割は果たせたアスロックは壮絶な笑みを浮かべながら爆発に飲まれ、2人はグラントルタの爆発に巻き込まれないように疲弊した体を叱咤して離脱しながらアスロックの不吉な言葉に表情を歪めるのであった。
「ふう…」
「何とか…助かったようだね…」
「奴は…最期に妙なことを言っていたな…謡精の宝剣…か…」
「やっぱりシアンを使って何かするつもりなんだ。急ごう兄さん」
「少し落ち着け、連戦で消耗しているんだ。このまま行っても返り討ちにされるのがオチだ」
GVの焦る気持ちは分かるものの、消耗している状態で残りの敵を相手にするのはキツいので少しの休息を取ることにしたのであった。
ページ上へ戻る