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銀河酔人伝説

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酔っ払い、ヤンに愚痴る

 
前書き
連続投稿です 

 
ヤン・ウェンリーの邸宅で飲んでいたグレゴリーは荒れていた。彼は国防委員会での会議終了後、ヤン邸宅に押しかけ酒を飲みながら只管不満をぶちまけていたのだ。

 

「それで、国防委員長殿はなんて言ったんです?」

 

「それがな、ヤン、あの作戦提案者のフォーク准将なんだが・・・どうやらサンフォード議長との関係が深いらしいんだよ。」

 

「サンフォード議長?それが今回の件と何の関係があるんです?」

 

「今回の作戦案作成の際に、統合作戦本部と宇宙艦隊総司令部にサンフォード議長から注文があったそうだ。アンドリュー・フォーク准将を是非とも使ってやってほしい。作戦参謀の彼なら素晴らしい作戦を提案してくれるだろう・・・ってね。」

 

「おかしくないですか?国防委員長が命令するならともかく、最高評議会議長が国防委員会を通さず直接注文を付けてくるなんて・・・」

 

「だからこそ命令ではなく、あくまで注文という形で言ってきたのだろうよ。相手は自由惑星同盟のトップである最高評議会議長だからな。無視するわけにもいかなかったらしい。」

 

「宇宙艦隊総司令部は止められなかったんですか?」

 

「フォーク准将は士官学校を首席で卒業して以来、ロボス元帥の子飼いとして可愛がられていたみたいなんだが、彼はそれを笠に着て色々独断専行をやらかしていたみたいなんだ。それでさすがのロボス元帥も激怒して叱責したようなんだが、どうやら逆効果だったみたいで、彼はロボス元帥の下を離れ、以前から懇意にしていたサンフォード議長を頼ったようだ。」

 

「統合作戦本部は何も言わなかったんですか?」

 

「シトレ元帥とグリーンヒル大将は完全に蚊帳の外に置かれていたみたいだ。サンフォード議長からの注文が来てからあれよあれよという間に話が進んでいたようだね。」

 

ヤンは呆れていた。帝国軍が間近に迫っているこの状況で身内が私欲の限りを尽くし、権力争いに明け暮れているのだから。

 

「それで結局作戦はどうなったのですか?」

 

「ヨブの兄貴の裁定で基本はフォーク准将の案に沿って動くことになった。」

 

ヤンは啞然とした。

 

「本気ですか?あの作戦を?」

 

「安心しろそれはない。あくまで基本はだ。もし何らかの原因で味方との通信が取れなくなった場合、当初の作戦遂行を断念し、味方との合流を第一とする。その後は防御戦に移行し、敵の撃破ではなく撃退に力を注ぐようにする。要は無理して戦果を稼がなくていいってやつだな。」

 

「それは安心しましたけど・・・本当に大丈夫なのですか?」

 

「この作戦案は統合作戦本部と宇宙艦隊総司令部が承認し国防委員会が正式に決定したものだ。外野が何を言おうが変わらんから安心しろ。だからな、ヤン、今回もお前さんの力が必要なんだ。よろしく頼む!」

 

グレゴリーはそう言うと頭を下げた。

 

「まあ、出来る限りのことはさせてもらいますよ。私としてもユリアンを置いて死ぬつもりはありませんからね。」

 

「そうか・・・ありがとう。」

 

彼らが会話を終えると見計らったかのようにユリアンが入ってきた。

 

「グレゴリーさん!アンドレイさんが迎えに来ましたよ!」

 

「おお、もうそんな時間か。それでは帰るとしよう。ユリアン君、いつもありがとうね。」

 

「いやいやこちらこそ。またいらしてくださいね。」

 

「ああ、楽しみにしてるよ。ヤン!ユリアン君!また会おうな!」

 

グレゴリーはそう言うと弟のアンドレイが運転する車に乗り込んだ。

 

この数日後、同盟軍はハイネセンを出撃、アスターテ星域で帝国軍と激突した。戦況は包囲しようと分散していた同盟軍に対し、帝国軍が各個撃破を試み第4艦隊を撃破、帝国軍が優勢になる。しかし合流に成功した第2・第6艦隊による背後からの奇襲に遭い戦況が逆転する。しかし、不幸にも流れ弾が第6艦隊旗艦ペルガモンに直撃しムーア中将が負傷、戦況が押し戻される。その後は消耗戦になるも、ヤン准将の発案により別動隊をイゼルローン回廊に向かわせ、出入口の封鎖を行うふりをさせる。それに動揺した帝国軍が撤退、同盟軍も撤退に移り、アスターテ会戦は終了した。

同盟軍の被害は、第4艦隊が壊滅しパストーレ中将が戦死、第6艦隊が3割の損害で済むもムーア中将が重傷を負い予備役編入となった。第2艦隊は1割の損害で済み、また撤退戦における功績を認められたヤン准将は少将に昇進することになった。

 

アスターテ会戦は同盟軍が帝国軍にそれなりの損害を与え、追い払ったという意味では同盟軍の勝利といえるが第4艦隊の壊滅という大きな損害を払っており、これまで通り実質敗北といえるだろう。

しかし、実情を知っている者たちにとってはこの程度の損害で済んで安堵したことも事実なのである。

この結果が今後どのような影響を与えるか、それは誰にもわからないのだ。 
 

 
後書き
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