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虹にのらなかった男

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P12

「アブルホール一号機、アベル・ルセーブル、出る」

『アブルホールセカンド、ローザ、出ます』

ペダルを踏み込み、バーニアを噴かす。

急激なGと共に、青空が広がる。

「ローザ、重力下戦闘だ。気を付けろよ」

『わかってるよ、お兄ちゃん』

正面に、ドットが見える。

ガウ攻撃空母と出撃したドップの編隊だ。

『ルセーブル技術中尉』

「どうしたブライト?」

『……如何なされますか』

俺に聞くなや!

「幸いここは地上だ。全て落としても問題はあるまい。
では私達は大物食いといくのでガンダム、ガンキャノンの援護を頼む」

ガンタンクは使っていない。

カイ、ハヤト、リュウはガンキャノンに乗って貰っている。

手数の問題と弾種の問題だ。

『了解しました』

ビームキャノンの照準をガウに合わせて、射つ。

見事に当たった。

ビームの小型化技術は連邦の専売特許。

ガウ攻撃空母群に打撃を与えるには、ビームを撃てる戦闘機が最適だ。

『お兄ちゃん凄いね!』

「最初だけだ。直ぐに群がってくるぞ。回避優先だ」

『ガウ落とすんじゃないの?』

「可能ならばな」

こちらに音速で向かってくるドップの編隊に突っ込む。

機銃が当たる。

何発も。

だがアブルホールは落ちない。

確かに外力を加えられての操縦は難しいが、攻撃で落ちる事はない。

ルナチタニウム製の装甲はドップの攻撃程度なら容易に弾く。

更には空中であればアブルホールのアンバックを活かした機動ができる。

始まるのは一方的な蹂躙だ。

ミサイルだけに気を付ければいい。

旋回と変形を駆使して一機づつ確実に落としていく。

『お兄ちゃん。ドップの編隊が撤退始めてるよ?』

三割ほど落とした所での撤退だった。

「放っておけ。無理に追うな。ガウのメガ粒子砲を食らったらさすがのアブルホールも持たん」

戦域から離脱を試みる数機のドップ。

「おお…流石ドップ直線は速いな」

ドップの最高スピードはマッハ5。

うん。頭おかしいわジオンの航空部門。

滞空して、ドップ編隊に睨みを効かせる。

三発ビームを撃った後、こちらも退く。

別方向からきた別のドップ編隊がホワイトベースを襲撃中。

援護に戻る。

「アムロ、聞こえるか」

ガンダムへ通信を入れる。

『は……きこえ……す』

まぁ、重力下でミノフスキー粒子散布状態にしては聞こえる方か。

「ドップ編隊相手なら、コマンドAF-16を使え。幸い、ビームサーベルは予備が十本以上ある」

『は、はい!』

ドップ編隊と相対するガンダムがビームサーベルを抜いて、ぶん投げた。

投げられたビームサーベルは回転しながらドップ編隊へ。

勿論回避される。

だが、AF-16というコマンドは、まだ終わっていない。

ガンダムがビームサーベルをビームライフルで撃った。

そう、Zのアレである。

散弾となったビームがドップに降り注ぎ、ことごとく撃墜した。

ほぼ一発芸だが…まぁ危機を乗り越える為だ。

そういえば、シャアが出て来てないな…。

まぁ、いいか。

撤退するドップ編隊とそれを援護するマゼラアタック隊。

ホワイトベースの甲板に乗って、マゼラアタック隊をビームで牽制する。

襲撃隊は全て撤退した………はず。

「MS隊に告ぐ。アムロとハヤトはビームライフルとの交換作業とキャノンの装弾を。
カイとリュウはホワイトベースの上部甲板で待機。
ローザは後部ハッチから着艦。ゆっくり休め」

『中尉さんはどうすんのヨ?』

「ホワイトベース上空を飛ぶ。既に見つかっているんだ。変わらんさ」

ああ、そうだ。

「整備班はローザのアブルホールを使えるようにして、直ぐに発艦出来るよう用意しておけよ」

『お断りします。副所長』

「アオ?」

『やぁアベル君。君の魂胆はわかっているよ』

『父さん?』

通信にテムさんが割り込んできた。

『どうせ休息もせずに機体を乗り換えて空対空監視に戻る気だろう』

「よくおわかりで」

『君はもう少し周囲を信じるべきだ。アムロ』

『はい、父さん』

『ガンダムの整備が終わったらコアファイターで出撃、アベル君と交代だ』

『わかりました!』

『異論は無いな? アベル君?』

「はい、テムさん」

たしかに、もう少し味方を信用すべきだな……。

 
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