デート・ア・ライブ~Hakenkreuz~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第四十三話「天央祭・Ⅳ」
DEM社の出向社員であるジェシカ・ベイリーは困惑していた。15:00より始まる来禅高校の演奏に出る夜刀神十香の捕縛。その為に天宮スクエアの上空に仲間とバンダースナッチと共にやってきたが時間と同時に謎の光線が現れバンダースナッチを破壊したのである。
「何事ダ!」
『前方に高エネルギー反応あり!』
『精霊…ではありません。生成魔力の反応です!こ、これはまさか…!』
部下の報告にジェシカはただ驚く。その反応に見覚えがあった。最強にして最悪な兵器。使った者を三十分で廃人にした〈最悪の欠陥兵器〉。
「馬鹿ナ…〈ホワイト・リコリス〉だト…!?」
その出現にそれと同時に搭乗者の姿に驚く。彼女はここにいるはずがなかった。何故なら今頃下で目標と共にステージに立っているはずだからだ。
「くっ!鳶一折紙!何故此処にいル!」
ジェシカの問いに折紙はほのかに赤く染まる瞳を向けるだけだった。
「目標変更!迎撃用意!」
瞬間全ての武器が折紙に向けられる。しかし、折紙は動じることなく両肩から飛び出るように装着された砲塔をジェシカ達に向け、発砲する。緑色の光線は適確にジェシカ達に襲いかかってくる。彼女たちはそれを慌てて回避しつつ反撃とばかりに一斉に発砲する。ASTですら未だ持っていない最新鋭の武器、ジェシカは精霊にダメージを与えられると思っていたそれは折紙の目の前に現れた乱入者によって全て撃ち落とされた。
「今度はなんダ!」
『これは…霊力!?』
『そ、そんな。馬鹿な…!?』
新たな乱入者の反応を見た部下たちは一気に顔色を青ざめる。霊力を感じた時点で精霊と言う事は分かっている。だが、今この場に最もいてほしくない相手であり絶対に現れないであろう精霊がそこにいた。
「…【SS】っ!」
「…少し、静かにしてもらおうかブルジョア人。友の大切な勝負の最中なんだ」
彼女の力で呼び出されたMG42を両手に構えた彼女はそれらをジェシカ達に向ける。一方で後方にいる折紙は邪魔するなと睨みつけていた。
「そう怒るな。今大事なのは私に構う事ではなく、あいつらに邪魔させない事じゃないのか?」
「…」
彼女の言葉に折紙は黙る。本来、彼女は折紙について詳しくは知らない。知っている事はASTの隊員であり以前一度だけ絡んできた事のみだ。だが、理由は知らないが襲撃しようとしていたジェシカ達を止めていると言う事実から折紙を助けたのだ。
「この場限りの不可侵だ。あいつらを退けるまでの仲。それで十分だろ?」
「…分かった。だけど背中は決して預けない」
「一緒に攻撃されないだけで十分だ!」
その言葉を合図に彼女は機関銃を放った。
彼女の霊力で補強された弾丸はまるで一つ一つが意志を持ったよう曲り、ジェシカの部下やバンダースナッチを落としていく。一方の折紙もホワイト・リコリスの火力を生かし攻撃を加えていく。その勢いは凄まじくあっという間にジェシカが連れてきた戦力の半分を無力化していた。
「非常事態ダ!応援を求ム!」
溜まらずジェシカは応援を求めるが通信先から聞こえてきた言葉は死に難いものだった。
『…えー、現在この回線は使われておりません。日下部燎子は上官の命令によって現場にすら出向けていませんのでもう一度お確かめの上発信してください」
「ふざけるナ!非常事態だゾ!」
周りの言葉にジェシカは怒鳴る。しかし、帰って来た言葉は相も変わらなかった。
『この回線は現在使われておりませーん。…あんまりしつこいと、切りますよ?』
「っ!」
燎子の言葉にこれ以上は無意味と判断しジェシカは通信を切る。それと同時に折紙を恨めしそうに睨みつける。
「くっ、覚えていなさい!この件は必ず問題にさせてもらうからネ」
「…それは、生きていたらの場合だよね?」
瞬間、ジェシカの後頭部を何者かが掴む。ジェシカは慌てて随意領域を発生させようとするが瞬間掴んだ者、彼女によってジェシカのCR-ユニットは破壊される。上空にいるための機器を失ったジェシカは重力に従い落ちるが彼女に後頭部を掴まれている為頭に全体重がかかれど落ちる事は無かった。
「くっ!おのレ!」
「喚くなよ。あまり喚くと手を離しちゃうかもしれないよ?私は別にいいけど」
「っ!」
彼女の言葉にジェシカは大人しくなる。今、ジェシカの命は彼女が握っているに等しく暴れれば自分はこのまま手を離され地面に落ちる事は間違いなかった。
そして、隊長を抑えられた部下たちは見てわかるほどに狼狽し折紙の操るホワイト・リコリスの餌食となっていき十分ほどでジェシカを除き全てが無力化された。ジェシカが請け負った任務は今ASTの裏切り者と最悪の精霊の手によって完全なる失敗と言う形で終わりを告げるのであった。
ページ上へ戻る