蒼と紅の雷霆
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蒼紅:第二十五話 月下
前書き
吼雷降と霆龍玉は…ラスボスGVしか使えんのかい…いや、確かにギブスのGVは強いけども…攻撃のノーマルスキルは続投して欲しかったな…X3のゼロ感あるなギブスのGV。
G7が使うのは宝書ではなく、オリジナルの宝剣です。
GVとソウがそれぞれのダートリーダーの整備をしている時、軽食をオウカが持ってきてくれた。
「GV、ソウさん。軽食を作ったので食べて下さい」
「ありがとうオウカ」
「すまない…どうした?浮かない顔だが…何か悩みでもあるのか?」
ソウがオウカの表情が良くないことに気付いてオウカに尋ねるとオウカは少し悩んだ後で口を開いた。
「……GVとソウさんは、最近街で起こっている神隠し事件をご存知ですか?…実は、私のクラスのお友達も行方不明なんです…例の神隠しじゃないかと噂されていて…」
「…それは心配だね。分かった。僕達の方でも調べてみるよ」
GVがオウカを安心させるように言った直後にシャオが慌てた様子で中に入ってきた。
「GV、ソウ!大変だよ!エデンの連中が、皇神の軌道エレベーター・アメノサカホコを強襲したって情報が入ったんだ」
“アメノサカホコ”…それを聞いたGV達が一瞬だけ肩を揺らしたが、すぐに平静となる。
「軌道エレベーター…アメノサカホコか…あまりいい気分はしないが…仕方ない、行ってみるか…GVは神隠しの件について調べろ。俺はアメノサカホコに向かう。」
「……うん」
「あれ?2人共、どうしたの?」
2人の雰囲気がどこか暗くなったことにシャオが不思議そうに見つめる。
「「何でもない(よ)」」
それだけ言うと、GVとソウはそれぞれのミッションの準備に向かう。
そして街で立て続けに起こる神隠し事件…。
シャオ独自の情報網で調査したところ、この洋館の存在が浮かび上がった。
「協力してくれてありがとうシャオ」
『気にしないで。オウカのクラスメイトも被害にあってるんでしょ?僕も放っておけないよ…でもソウ1人にアメノサカホコに行かせて良かったの?アメノサカホコにはもしかしたらソウの力を使った宝剣持ちの能力者がいるのかもしれないのに…』
「大丈夫だよ…例えあの宝剣を完成させていたとしても兄さんは簡単には負けないよ…それに…」
アメノサカホコは自分達にとってあまり良い記憶はない。
何せあそこで…育ての親である人物にソウは殺されかけ、自分は彼と戦って…この手で屠った。
きっとソウは自分に気遣ってくれたのだろう。
『それに…何?』
「何でもないよ、先を急ごう」
あまり思い出したくない過去を思い出しそうになったのでGVは道を塞ぐ浮遊メカ等の機械群を雷撃で破壊しながら先に進む。
「エデンの兵士…!?」
そして奥には騒ぎを察知してやって来たと思われるエデンの兵士がいた。
『まさか神隠しはエデンの仕業?でも何のために…』
「分からないけど…とにかく先に進もう」
エデンの兵士を蹴散らしつつ、先に進むと奥から異形の敵が現れた。
「っ!!」
『『ひっ!?』』
『うわっ!こいつ、何?』
歌による的確なサポートのためか作戦室代わりにしている部屋にいるシアンとモルフォの悲鳴が聞こえ、シャオもまた驚きながら疑問を抱く。
姿は全く似ていないが、GVの脳裏に、かつて戦ったゾンビの姿が過ぎ…嫌な予感を感じた。
迎撃にゾンビが加わったことでGVへの攻撃も熾烈な物となっていく。
しかし、エリーゼが作り出したゾンビと違って動きが鈍いため、GVはゾンビの攻撃をかわしながら雷撃で迎え撃つ。
そして奥の扉のシャッターを潜って広い部屋に出ると、シャッターがロックされ、警備システムが作動する。
『持ち主不在のはずの洋館に警備システムなんて…奴ら、ここで一体何を…?』
『『頑張ってGV!』』
シアンとモルフォの歌がGVに届く。
「あれ?シアンとモルフォ…大丈夫なの?」
あんなに怯えていたのに普通に歌えていることにGVはエデンの兵士と機械群を蹴散らしながら疑問符を浮かべる。
『ああ、オウカが怯えているシアンを見かねて耳栓持ってきてくれたんだよ。モルフォもシアンに耳栓を着けてもらって僕に後ろを向いた状態で歌ってる…正直、耳栓着けて後ろを向いて歌ってるのはかなりシュールな光景だよ』
「そう…」
そんなに怖いのなら無理をしなくてもいいのにと、GVはそう思った。
そして全ての敵を倒すとロックが解除され、GVは一気にシャッターを潜って駆け抜ける。
すると今度は無数のトゲが付いた棺桶らしきものが複数配置されている。
「あれは…?」
『どうも前を通った人間を捕縛する罠みたいだね…』
「ただの悪趣味なインテリアじゃないってことか…(ジャンプかダッシュであれは避けられるな)」
ダッシュで一気に駆け抜けて罠のあるエリアを突破する。
「連れ去られた人達…何処にも見当たらないな…」
『あくまでこの洋館が怪しいってだけで確証はないんだ。でも、もしここに連れ去られたのだとしたら、きっともう…』
シャオはこの先の言葉を言わなかった。
可能性が低いのだとしても生存を信じていたいからだろう。
階段を駆け上がり、エデンの兵士とメカ、そしてゾンビを返り討ちにしながら先に進むとゲートモノリスを発見する。
『GV、ゲートモノリスを破壊して、もっと奥まで調べてみよう』
ゲートモノリスに避雷針を撃ち込んで雷撃で破壊して奥に進む。
「ジブリール様!侵入者…ガンヴォルトです!」
「んん?バレちまったのか?乙女の秘密を覗きに来るたぁ、ふてぇ野郎だ。いいさ! 手ずから俺が処刑してやる!それまで時間を稼いでな!」
GVの存在はこの洋館にいる指揮官にも伝わり、警備も徐々に厳しいものになっていく。
進んでいくと、棺桶からゾンビが飛び出してくる。
「飛び出してくるか!!」
『何だろうね、“そいつ”…』
「前に見たゾンビも、第七波動によって作り出された物だった。」
『えっ!?GV!ゾンビを見たことあるの?…その話、後で詳しくね』
「…まあ、シアン達がいないところで」
幽霊関係が苦手なシアン達には聞かせない方がいいと判断したGVは罠とトゲ地帯を突破しながら階段を駆け、血液が変化する罠が配置されている場所に到達する。
『これまた趣味の悪いトラップだね』
「トラップ起動前なら、雷撃鱗バリアで破壊出来るはずだ…(このトラップ…相手は液体を操れる能力者なのか?それとも…)」
雷撃鱗でトラップを破壊しながら進み、ゲートモノリスの前まで来たのだが…。
「…何だ?何かに呼ばれている…?」
GVを呼ぶ何かが、GVの心に響き、ゲートモノリスを無視して奥に進むと棺桶の罠が大量に配置されている場所に出た。
『薄気味悪い場所だね…』
取り敢えずGVは自分を呼ぶ何かに導かれるままに先に進み、道を阻むゾンビや機械群を蹴散らしながら進む。
最後のトラップを雷撃鱗を展開したままダッシュで突破すると、宙に漂う光があり、それはGVに吸い込まれていく。
「(何だ…?この懐かしい感覚は一体…?僕の中で新しい力が覚醒(めざ)める)…吼雷降!!」
目の前のゲートモノリスに新スキルの吼雷降を炸裂させると、ゲートモノリスは一撃で破壊された。
『凄い、GV…新技!?やったね!』
シャオが新スキルの会得を喜んでくれたが、GVは自分に入り込んだ光の懐かしさに戸惑いながらも先に進んだ。
その先には小柄な…シアンかパンテーラと同じくらいの身長の娘…ジブリールがいた。
「小さな…女の子…?もしかして、この館に連れ去られてきたのか…?」
「“小さな”女の子…だぁ?てめぇ…言っちゃいけねぇことを言ったみてえだな」
何もない空間から紅い雷光が迸り、そこから宝剣が出現して変身現象を起こす。
その姿はどこか遥か昔の童話の赤ずきんを彷彿とさせる見た目だ。
「…G7だったのか!こんな所で、何をしている!」
「ここは攫(パク)ってきた俺達を虚仮にする無能力者(ゴミ)共から生命力(ライフエナジー)を抜き取って、この俺、ジブリール様の第七波動に変える実験場…これも、パンテーラが持ち帰った皇神の技術って奴の1つって奴だ。救いようのない奴らも俺達の役に立てるように利用してやろうってことだ…」
「…!」
「んなことよりも、てめぇ、さっき、俺の身長を馬鹿にしやがったよな…?許さねぇ…てめぇは極刑だっ!惨たらしくかっ捌いてやるっ!」
ジブリールの怒りの叫びが戦闘の合図となり、ジブリールはストックしていた血液を操り、刃へと変えてGVに放ってきた。
「…!まさか洋館内にいた“彼ら”は…」
「生命力(エナジー)を抜き取った抜け殻を、金属を操る俺の第七波動…“メタリカ”で下僕にしてやったのさ! 脈に流れる“鉄分”を操ってな?能力者(俺ら)を虚仮にしてきた差別意識に凝り固まった塵共がかしずく様は痛快だったぜ」
「非道な…!」
「非道…だぁ?非道なのは何もしてない能力者(俺ら)を一方的に怪物呼ばわりして虚仮にしてきた塵共と、てめぇみたいに我が儘でパンテーラの乙女の願いを簡単に踏みにじるような奴じゃねぇのか?」
「…っ!」
「てめぇだって能力者なら、パンテーラから聞いてた通り、皇神に兄弟揃って実験材料にされてたなら分かるだろ?差別意識に凝り固まった塵共の屑さをよぉ?俺の家族は無能力者だった…でも、お袋は……母さんはそんな俺のことを大切に可愛がって、愛してくれたんだ」
「…それなら…何故…!?」
「屑親父だよ…俺が能力者ってだけで俺と母さんに指導とか抜かして俺達に暴力を振るいやがった!俺だけじゃねえ、俺を生んでくれた屑親父と同じ無能力者の母さんもだ。最終的に母さんは親父に殺された…その後、俺は第七波動で親父を殺し、パンテーラに会うまで地獄だったぜ…こんな親父と似た塵共なんかくたばればいいんだよっ!」
「……お前の境遇には同情はする……理解もする。けど、全ての無能力者がお前のお父さんのような人ばかりじゃない!僕は知っている。オウカのように…例え今は少なくとも僕達能力者にも分け隔てなく接してくれる人がいることを!!確かに大半の無能力者はそうでも、何時かは分かり合える時が来ると僕は信じる!迸れ!蒼き雷霆よ!怒りに呑まれた少女を鎮める雷鳴を轟かせ!!」
血液を金属に変化させて攻撃するジブリールだが、攻撃は蒼き雷霆の機動力を活かして回避し、そして避雷針を当てて雷撃を流してダメージを蓄積させていく。
「ぐっ!何をこなくそっ!!完成した雷霆宝剣の力を見せてやる!うおおお…!覚悟しやがれ…!!」
攻勢に出るべく防御ではなく攻撃に特化した姿となり、ジブリールは狼を彷彿とさせる姿となる。
「姿が変わった…!?」
獣のような、そのフォルムも皇神から奪った技術の成果だというのか?
「いやらしい目でジロジロ見やがって…!変態か、てめぇは?こんな野郎に痛めつけられるなんて…!俺こそが痛めつける側なんだっ!それを思い知らせてやる!!ミクロの果てまで刻み尽くしてやるっ!!!」
「(正体を…失っている?)」
「かっ捌く!おぅらっ!!」
紅き雷霆の力による恩恵か、GVですら視認が困難な突進からの爪による斬撃が襲う。
カゲロウによって何とか透かすことが出来たのでダメージはない。
想像以上の速さにGVは蒼き雷霆での身体強化を最大にする。
「そらあっ!!」
爪を振り上げて衝撃波を繰り出すジブリール。
咄嗟に空中ジャンプとダッシュでジブリールの真上を取り、吼雷降をジブリールに叩き落とす。
「野郎っ!!」
ジブリールの攻撃は熾烈となっていき、GVもカゲロウを何度か使わされることになる。
「くっ!」
フェイントを絡めて来る攻撃も加わり、より熾烈となった攻撃によってオーバーヒートを起こしてしまい、ジブリールの爪によって斬られるGVだが、即座にヒーリングヴォルトで回復し、接近してきたところを吼雷降をカウンターで繰り出す。
「やるじゃねぇか……行くぜ!」
鉄格子にGV達が閉じ込められ、次に棺桶が出現してジブリールがそれに閉じ込められたかと思えば血が噴き出す。
次の瞬間には棺桶が内側から吹き飛び、そして全身にオーラを纏う。
「それはまさか、謡精の…!?」
そのオーラに見覚えがあるGVは目を見開く。
「紅き雷霆と電子の謡精を組み合わせて強化された俺のとっておきを見せてやる…うああああっ!始めるぜ…疾走を始めた獣の本能!その身貫く無数の鋼刃!痛みを越えて至る楽土!!アイアンメイデン!!」
壁と天井を縦横無尽に駆け、自身から流れる血を付着させていく。
「俺をここまで痛めつけたのはお前が初めてだ!いいぜ、見せてやる!全身で全霊の!全力の、全快をっ!!この体、もう、どうなっても知りやしねぇっ!!!」
その速度は最早、弾丸と形容してもいい。
宝剣に組み込まれた紅き雷霆の力とミラーピースの謡精の力を組み合わせたことにより、本来の物よりも強力なスキルとなってGVを襲う。
一撃を受けるとカゲロウが完全に無効化されてダメージを負い、しかもオーバーヒート状態となる。
「ぐっ…」
しかし、何とか軌道を見切って回避していくGVに対して攻撃を続けていくごとにジブリールも弱っていく。
自身の血液を使っているだけあって威力は絶大だが、その分、自分へのダメージも凄まじいのだろう。
「っ…こいつでどうだ…!!」
最後の一撃を繰り出すが、GVは血液を変化前に雷撃鱗で破壊すると回避に成功。
力を使い果たしたジブリールは床に落下して苦しみ出す。
「迸れ!蒼き雷霆よ!煌くは雷纏いし聖剣!蒼雷の暴虐よ、敵を貫け!!スパークカリバー!!」
もう助からないと判断したGVはジブリールを楽にしてやるためにスパークカリバーでとどめを刺す。
「ぁうっ!…この…痛みは…」
内側から紅い雷が迸り、ジブリールの体が消滅すると宝剣も砕け散ってミラーピースのみが残った。
『GV、連れ去られた人達は…』
館の様子からして、そうかもしれないとは思っていたが…。
「ジブリール…彼女の口ぶりからして、きっともう…」
連れ去られたオウカのクラスメイトも恐らくは……GVは、オウカに伝えるべき言葉が見つからなかった…。
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