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ある晴れた日に

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98部分:小さな橋の上でその十四


小さな橋の上でその十四

「御前等もな」
「たおやかな乙女捕まえて何を言うかって思ったら」
「大人しくって」
「実際大人しくないだろうがよ」
 段々売り言葉に買い言葉になってきている。しかし雰囲気自体は決して悪いものではなかった。その中で三人は言い合っていた。
「全くよ」
「すっごい頭に来たけれどまあいいわ」
「紳士だったし」
 何だかんだで二人も今の正道の行動は認めてはいるのだった。
「一応はね」
「だから。音橋」
「今度は何なんだよ」
「荷物よ、荷物」
 奈々瀬は彼が今も持っているその赤いリュックを指差す。それはビニール製でかなり目立つ感じだった。持っていてずしりと来るものを感じる。色々と入っているのがわかるものだった。
「荷物。未晴に返してあげて」
「ああ、そうだったな」
 言われてこのことに気付いた正道だった。ふと気付いたような調子で実際にその手に持っているリュックを見てさえいた。その様子が中々滑稽でもある。
「これな。そうだった」
「そういうことよ。じゃあ未晴」
「ええ」
 それまで当事者でありながら蚊帳の外になっていた未晴が応える。
「音橋から受け取って」
「わかったわ。じゃあ音橋君」
「ああ」
 正道もそれに応えてリュックを前に出すのだった。
「悪いな。今まで返しそびれてた」
「いえ、そんなことないわ」
 静かな様子で正道に言葉を返してきた未晴だった。
「持ってくれて有り難う」
「だから礼なんかいいんだよ」
 未晴にリュックを返しながら言った。
「そんなの。別にな」
「けれど」
「いいって言ったらいいんだよ」
 また言うのだった。
「別にな」
「そうなの」
「そうさ。とにかくな」
 彼は照れ臭そうな言葉になってるのは実感していなかった。顔も赤らめかけてきていたがこれも本人はわかっていないことだった。
「行くぜ」
「ええ、そうね」
 今の言葉の意味は未晴もすぐにわかった。
「次の問題のところよね」
「今度はこっちだよ」
 待っていたかのように絶好のタイミングで加山が声をかけてきた。
「こっち。右だからね」
「右なのかよ」
「うん、右だよ」
 橋の先は分かれ道になっていた。山道で左右が木に囲まれているがそれぞれ分かれていた。加山はそのうちの右手を指差して皆に告げていた。
「右。じゃあ行こうか」
「ああ、そうだな」
 正道が彼のその言葉に頷く。
「それじゃあな」
「そうか、右か」
 野本はそれを聞いて何か天邪鬼な雰囲気を見せていた。その雰囲気で左の方の道を見ていた。
「なあ。こっち通ったらどうなるんだ?」
「こっちって?」
「だから左の道だよ」
 こう明日夢に答える。
「こっち行ったらどうなるんだよ」
「そっち行き止まりだよ」
 加山がその野本に顔を向けて言ってきた。
「だから行ったらそれこそ」
「ユーターンかよ」
「だから行ったら駄目だよ」
 言葉は念押しになっていた。
「わかったよね」
「わかったさ。俺だって意味のねえことはしねえさ」
「同じことは繰り返すけれどね」
「それも何度も何度も」
「あのな、さっきから御前等な」
 いい加減頭に来たのか今の明日夢と奈々瀬の突込みには少し怒った顔で言い返す。
 
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