デート・ア・ライブ~Hakenkreuz~
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第二十六話「来禅高校修学旅行・Ⅵ」
「なっ!?」
「!?」
「…」
士道は突然の出来事の連続に言葉が出なかった。
お互いの気持ちを知った耶俱矢と弓弦が争い始めた。士道は止めようとしたがそこへASTとは違う別の存在、DEM社のバンダースナッチが十香と士道を襲撃。そのバンダースナッチに指示を出していたのが旅行会社から派遣されてきたエレン・メイザースであった。
そしてエレンはCR-ユニットを纏い十香を挑発。部分的に霊装を纏った十香がその挑発に乗り鏖殺公を持って切りかかろうとした時一発の発砲音が響き二人の動きを一時期的に止めた。
その発砲音がした方向を見ればこちらに異様に銃身が長い拳銃を向ける男とその後ろからこちらを伺っている一人の少年の姿があった。
「…」
「はいはい、敵同士争うのは勝手だけど先に僕たちの用事を済まさせてね?」
「なっ!貴様等何者だ!」
「…」
突然の乱入に十香は怒り鏖殺公の剣先を向ける。一方のエレンは眉を潜めこそすれそれ以外で目立った動きを見せなかった。
「そっちのDEMのエレン?だっけ、君は目の前の【プリンセス】を捕まえればいいよ。僕たちは興味ないから」
「…信用できませんね、あなたの組織について。断片的にですが知っています」
「あ、そうなんだ。これでも秘密裏に動いているつもりだけどやっぱり完全に隠しとおすのは無理か」
「あなた方の目的までは知りません。ですがアイクが警戒しているあなた方を信じる事は出来ません」
エレンはレーザーブレードを男に向け最大限の警戒をする。そんな様子を男は淡々と見ており、少年は楽しそうに微笑む。
「ふふ、流石に世界最強の魔術師だけの事はあるね。でもね、僕たちの目的は…」
少年はそこまで言うと士道の方を見る。瞬間少年の隣にいた男が一瞬消えたと思った同時に士道の目の前に立っていた。動く姿を確認できずまるで瞬間移動でもしたような目の前の男の行動に士道の脳は理解する事を一瞬放棄した。
「え…ぐぅっ!?」
士道は何が起きたのかすら分からずにその場で蹲る。腹部の激痛と意識を失いそうになる頭で必死に考え理解できたことは自分が目の前の男に腹部を殴られたと言う事のみ。その男は先ほどまで士道の腹部があった場所に自らの拳を置きつつも無表情な瞳で士道を見ていた。
「シド―!お前ら何をする!」
「…」
目の前で大切な人が傷ついたのを見た十香は激昂し男へと切りかかる。しかし、男は大きくその場から飛ぶ事で十香からの攻撃を見事に躱すと同時に先ほどまで自身がいた場所に戻ってくる。
「…」
「ちょっと~、大尉。僕の所に戻って来ても困るんだけど?僕は見た目通り非力なんだからさ」
少年、シュレディンガー准尉は男、大尉に愚痴るが大尉は全く気にせずに十香そしてエレンを見る。エレンは先ほどの攻防に動いた様子はなく、バンダースナッチを十香とシュレディンガー准尉達を囲むように移動させたのみだった。とは言えバンダースナッチ程度なら大尉の前では案山子同然であり逃げる事など簡単であった。
大尉とシュレディンガー准尉はそれぞれ無表情と笑みを浮かべ十香は蹲る士道を守るように大尉とエレンを警戒しエレンは十香をどうやって捕まえつつ目の前の危険人物から逃げるかを考えていた。
三つ巴の戦いはまだ始まったばかりである。
一方、その頃。ラタトスクの空中艦フラクシナスを見つけ攻撃していたアルバテルは混乱の極みにあった。
自分たちの砲撃を尽く防がれ傷一つつけられていない中突如後方が爆発を起こしたのである。正確には外部からの砲撃である。
そしてそれと同時にアルバテルのレーダー内に新たな艦を観測した。全体的に白いその空中艦は艦首に黒と白で描かれた鉤十字を付けていた。アルバテルの艦長ジェームズ・A・パディントンはその艦の正体を知らなかった。その為正体不明の艦の出現という異常事態に咄嗟に反応出来なかった。この差が命運を分けた。
グラーフ・ツェッペリンⅡの主砲たる41cm三連レーザー砲より合計12の線がアルバテルに向かって伸び当たると同時に着弾場所を溶解と破壊を行い、爆発を生み出す。
真夜中の空に巨大な爆発が起きる。幸い艦を動かしているエネルギーたる基礎顕現装置とそれをコントロールする制御顕現装置に損傷は無かった。しかし、まだまだこれからとばかりにグラーフ・ツェッペリンⅡは大量のミサイル、彼らがV3と呼ぶミサイルはアルバテルを囲むように発射され一気に爆発を起こす。幸い、いくつかはアルバテルの砲撃で撃ち落とすことが出来たが最初の一撃も含めてアルバテルは大きく損傷していた。
一方先ほどまでアルバテルと交戦していたフラクシナスはアルバテルの陰になる事でグラーフ・ツェッペリンⅡからの攻撃を回避していた。
「ふむ、やはりあの艦は奴らの…。司令の不在時に動き出すとは」
司令代理である神無月恭平は先ほどまでのだらけ切った顔や凛々しい顔とは別の顔、今出会いたくない者に出会った時の様なしかめっ面をしていた。
「ど、どうしますか!?今の内に逃げますか!?」
「…いえ、そう言うわけにもいかないでしょう。新たに現れた艦の目的は分かりませんが目の前にいる艦は恐らくDEM社の艦。そう考えれば目的ははっきりとします」
クルーの一人中津川宗近の言葉に神無月は冷静に返す。そこには遊びは感じられず現状をどうにかしようと言う強い意志を感じさせた。
「精霊、それも十香ちゃんが狙い…?」
「ええ、そう考えれば島には誰かしら派遣されていると見るべきです。この通信妨害もあちらの仕業なら島では既に事が起こっていると見るべきでしょう」
「それなら早く向かった方がいいですが…」
クルーの一人、川越恭次は途中で言葉を切りモニターを見る。そこには炎を上げ少しづつ高度を下げるDEMの空中艦アルバテルの姿があった。その後ろにはアルバテルに攻撃を続ける謎の空中艦があり次はこの艦の番だと否応にでもクルー達は理解させられた。
「さて、どうしたものですかね」
神無月は困ったように言うがこの声には少しも焦りは出ていなかった。
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