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悪人達がサキュバスに転生しましたが、容姿が見た事のあるキャラばかりでした

作者:黒の汚水
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オティヌス、口調の変化

「…うん?」

ベッドが冷たくて硬い?
目を開けると、床で寝ていた。

「ああ、そうか。」

食事が終わった後、一時解散になり、部屋で休憩していた。
どうやら、そのまま寝てしまったようだ。
私達の住居は中層にある。
1人1部屋で、部屋はかなり広い。
家具がないせいか、余計に広く感じる。

「…喉が渇いた。」

食堂で何か飲むか。
起き上がり、上層へ向かう。
薄暗かった廊下も、里美が灯りの魔法をかけたので、とても明るい。

「あっ、オティヌスさん。」

着くと、船堀がいた。
大量の野菜や果物があり、調理の真っ最中のようだ。
もう次の食事を作っているのか?
1日1回なのだから、慌てなくても大丈夫のはず。

「昨日は簡単に作ったので、次はちゃんと作ろうと思いまして。」

あれで簡単だと?
凄く美味しかったのに、それ以上になるのか。
いかんな。
次の料理が、今から楽しみだ。

「それでも早過ぎないか?」

「6品ほど作る予定なので、下ごしらえの最中です。」

「無理はするな。私も手伝うぞ?」

「大丈夫です。大地の力で、調理器具を作って頂きましたから。」

「分かった。」

任せるとしよう。
そもそも料理の経験が、私になかった。
手伝うと足を引っ張りそうだ。
あれ?
ちょっと待てよ。
何か違和感が…あっ。

「船堀、口調が変わっていないか?」

紳士のような口調が…。
漫画の船堀さんのようになっている。

「はい、気がついたら変わっていました。」

「なっ!?」

「私だけでなく、皆さんも変わっていました。」

「皆も!?」

本人が気づかないうちに変わる。
どう考えても異常だ。
しかも、1人だけじゃない。

「オティヌスさんも、口調が変わってますよ。」

「えっ?」

「一人称も俺から私に、変わっていますし。」

「………本当だ!?」

全然気がつかなかった。
まさか、精神が肉体に…。
キャラに引っ張られつつある!?
ゾッとした。
自分が自分でなくなる。
味わった事のない恐怖に、身体が震えた。

「あの、心配ないと…マクダウェルさんが言ってました。」

「エヴァンジェリンが?」

「私達本来の記憶や性格は変わらず、口調も似ているだけ。」

…確かに。
暗殺者時代の辛い出来事も、嫁との楽しい思い出も、しっかりと覚えている。
性格だって、オティヌスとは似ても似つかない。

「原因は転生した時の副作用か何か。以上、心配の必要なし…との事です。」

なるほど。
エヴァンジェリンの推測だと思うが、納得したし安心もした。
凄い人だ。

「それにしても、副作用か…。」

起きても不思議はない。
転生そのものが異常だった。
男性から女性に、人間からサキュバスに。
身体と種族の違いに、これから悩んだり、心境の変化もあるだろう。
仲間がいて、本当によかった。
相談出来るし、相談に乗れる。
1人孤独だったら、どうなっていた事やら…。

「ありがとう、船堀。」

「いえ、私は何も。お礼なら、マクダウェルさんに。」

「うっ。」

優しい笑顔が眩しい。
本物の船堀さんみたいだ。
転生前が悪人だったとは、にわかには信じられない。
爺のミスじゃないか?
副作用か何かも、爺のせいなら絶対に許さんぞ。

「ふうー。」

紅茶で喉を潤し、今後の事を考える。
まあ、ほぼ決まっている。
人間の町を探し出す。
くっくっくっ、手に入れてやるぞ。
家具を!生活用品を!娯楽(小説・ゲーム)を!
そして、普通の服を!
オティヌスの服は嫌いじゃない。
むしろ、大好きだ。
ただ…。
偽物の私が着るには、レベルの高過ぎる服だった。
ずっと平気な顔をしていたが、本当は…。
超恥ずかしいいいいぃぃっ! 
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