ある晴れた日に
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704部分:冬の嵐は過ぎ去りその四
冬の嵐は過ぎ去りその四
「しかもスーツから出したし」
「刑事みたいよね」
「全く」
「ああ、本当に刑事だよ」
青島はその彼等に笑いながら言ってきた。
「僕は実際に刑事なんだよ」
「うわ、本当にそうって」
「もう余計に」
「そうよね」
あらためて話す彼等だった。話をしながらマンションの階段をあがっていく。エレベーターは大人数で全員乗り切れないからである。先回りの為に急いではいる。
「ドラマそのまま」
「もう何ていうかな」
「リアルが出て来たっていうか」
「そう、リアルだよ」
ここでこう言う青島だった。当然彼も小泉と共に階段を使っている。
「だから君達を信じたんだよ」
「だからですか」
「それは」
「そう、だからだよ」
言うその言葉も真剣なものになっていた。
「今一緒にいるのはね」
「あいつを早く捕まえないと」
「リアルで未晴が」
彼等の中にもそのリアルが覆い被さってきた。
「どうなるかわからないから」
「急がないと」
「あいつの息子も」
青島の目が光った。
「前から噂があったしね」
「そうですね。色々と親父の力で揉み消していましたけれど」
「窃盗の噂もあった」
青島はそちらから吉見の息子を知ったらしい。
「その他にも麻薬の話もあったし」
「あの父親のルートで手に入れて」
「何かと疑惑の多い奴ですからね」
「親子共々」
「しかし尻尾を掴ませず」
言葉が苦々しげなものになっていた。
「バックの力も使って」
「とんでもない奴ですから」
「しかし。ここで何とかできれば」
「したいですね。それじゃあ」
「いいかな」
青島はあらためて正道達に話してきた。
「まずはあいつが部屋に戻って来るまでは」
「はい、それまでは」
「どうするんですか?」
「君達は上の階か僕達の傍に隠れていて欲しいんだ」
こう彼等に言うのだった。
「まずはね」
「まずはですか」
「その時は」
「奴が来たらメールを送るよ」
真剣な顔で告げる。
「メールアドレスを教えて欲しいけれど。誰か一人でいいから」
「わかりました」
正道がすぐに名乗り出た。
「じゃあ俺が」
「君がだね」
「はい」
彼はここでは多くは語らなかった。一言であった。
「俺でいいですよね」
「そうだね」
青島はその彼の目を見た。目にあるものは決意と怒り、そして想いだった。その混ざり合い一つになったものを確かめてだ。そのうえで答えたのだった。
「じゃあ。頼んだよ」
「御願いします」
「きっと、いや絶対に」
青島の言葉が変わった。彼の目を見ているうちにさらに感じ取ったからである。
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