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阪神男

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第三章

「けれど今度はや」
「野球をしに行くからか」
「それでそう言うたか」
「夢みたいやって」
「そういうことか」
「江夏さんも田淵さんも行けんかったんや」
 実は彼等は高校野球では甲子園に出場していないのだ、だがプロに入って甲子園で活躍した。これも野球人生ということか。
「それでもわしはや」
「甲子園に選手で行けるからか」
「グラウンドで野球が出来る」
「それでそう言うんやな」
「そういうことか」
「そや、こんな嬉しいことないわ」
 岡田は仲間達に満面の笑みで言った。そうして甲子園でも野球をした。
 だが岡田は大学は早稲田だった、それで神学の時こんなことを言った。
「関西離れてってな」
「甲子園にもな」
「離れてってな」
「何か想像出来んわ」
 こう言うのだった。
「わしずっと大阪で生まれ育ってな」
「いつも甲子園行ってたからな」
「そやったからな」
「それで早稲田ってな」
「東京の大学ってな」
「セレクションは受けたわ」
 早稲田大学野球部のそれはというのだ、ここで彼は十五打数十四安打しかもそのヒットが全てホームランという恐るべき結果を出した、これで合格しない筈がなかった。
「けれどな」
「東京に行くとか」
「何かちゃう」
「そう言うんやな」
「どうにもな、けど四年な」
 その間というのだ。
「頑張ってくるわ」
「ああ、そうしてこい」
「そこで結果出したらプロの道が見えるで」
「そやからな」
「ここは頑張って来い」
 岡田を知るものは東京に行く彼を笑顔で送った、そうして彼の活躍を期待したが岡田は大学の時でも頭角を表した。
 大学でも一年生の時からレギュラーとなり打ちまくった、三冠王すら獲得し早稲田にリーグ優勝ももたらした。日米大学野球では四番にさえなった。
 その彼に注目しないプロ野球の球団はなかった。
「岡田だな」
「今年のドラフトは岡田だ」
「岡田を獲得しないとな」
「ドラフト一位指名は岡田だ」
「岡田狙いで行くぞ」
 多くのチームのフロントの者達が言った、そして岡田自身もだった。
 プロ入り表明の時にだ、こう記者に言った。
「阪神やったらです」
「君阪神ファンなんだよね」
「はい、もう親の代から」
 それこそとだ、岡田は記者に笑顔で話した。
「そうです、甲子園にもしょっちゅう行きました」
「高校野球でもね」
「あそこでの野球は最高でした」
 高校時代の経験のことも言うのだった。
「一生わすれられません、そやさかい」
「阪神に入団出来たらだね」
「最高です」
 こう言った後で言うのだった。
「阪急とか近鉄とか南海とか」
「関西の球団だったら」
「行きたいです」
 こうしたチームが指名権を獲得したならというのだ。
「その時は」
「そうなんだね」
「はい、ただ」
「ただ?」
「他のチームは指名された時に考えてみます、フロントがしっかりしてて」
 そしてというのだ。
「優勝を争えるチームなら」
「行きたいんだね」
「巨人、西武は優勝狙えるしいいかもとも思ってます」
 こう言ったがだ、岡田はインダヴューの後で親しい者にこう漏らした。 
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