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ある晴れた日に

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69部分:優しい魂よその四


優しい魂よその四

「どうしようもねえ弱さじゃねえか」
「弱いのはね。どうにかなるわよ」
「いや、今年は無理だからよ」
 春華の言葉は駄目出しになっていた。
「諦めて居直って応援すべきだろ」
「こっから優勝よ」
「絶対無理だよなあ」
「今年あれだろ」
 男達も明日夢の周りでひそひそと話をはじめた。
「大ちゃんの時より弱かね?」
「っていうかマジ百敗あるだろ」
「昔の阪神でもなかったのにな」
「それがなあ」
「十年前は天国だったのに」
 こう言っても泣かない明日夢だった。
「何であそこまで弱くなったのよ」
「フロントが悪いんでしょ」
 茜の言葉もばっさりと切り捨てたものだった。
「あんだけ訳のわからないことやったら」
「マスコミの親会社は駄目ね」
 今度は親会社のせいにした。
「全く。前の親会社が懐かしいわよ」
「ああ、大洋時代ね」
「無茶苦茶懐かしいぜ、おい」
 咲と野本がすぐに突っ込みを入れた。
「けれどさ、少年」
「何よ、咲」
「大洋時代は三十八年優勝していなくて六年連続最下位とかもあったわよね」
 横浜ファンにとっては痛い現実だ。
「確か」
「ホークスだって南海時代から合わせて二十六年優勝していなかったじゃない」
「それはそうだけれど」
 咲の顔がムッとしたものになっている。どうやら彼女にとっては言われたくない忌まわしい現実らしい。それが表情に出てしまっている。
「けれどそれから三回も優勝したわよ」
「うっ・・・・・・」
「王さんのおかげでね」
「あれは根本さんの力じゃないの?」
 さりげなく恵美が突っ込みを入れる。
「フロントが頑張ってたから」
「王さんの采配もいいじゃない」
 何故か王監督にこだわる咲だった。
「王さんは最高の監督よ」
「まあ確かにね」
 恵美もそれには反論はないようである。
「堅実な采配よね」
「王さんの采配がわかっていないのは巨人ファンだけよ」
 咲もまた巨人が嫌いなのだ。
「小久保さんの強奪は絶対に忘れないから」
「それ言ったらうちなんかよ」
「広沢にペタジーニ、ラミレスよ」
 春華と奈々瀬はもっと忌々しいことが巨人に対してあった。
「負ければいいんだよ、あんなチーム」
「千年位最下位になってね」
「しかしこのクラス巨人ファンいねえな」
 正道もこのことにかなり感心していた。
「っていうか一人もいねえな、おい」
「あんなチーム応援したら駄目だよ」
 竹山ががポツリ、と正道の横で呟く。
「ネットじゃ巨人ファンはもう少数派だよ」
「そうなのか」
「あの会長へのアンチは多いけれどね」
「俺もあいつ嫌いだけれどな」
 正道もそれは同じであるようだ。
「少なくとも巨人が負けるのは楽しくて仕方ない」
「巨人は滅びるべきね」
 江夏先生が何故かわざわざ来て言い切った。
「何が球界の盟主なのかしらね」
「担任からしてアンチ巨人か」
「こりゃ筋金入りだな」
「あれ、知らないの?うちの学校は先生達もアンチ巨人揃いよ」
 江夏先生はこのことを生徒達に話す。
「もう全員ね。巨人ファンはいないのよ」
「幾ら関西でもそれって」
「本当にすげえな」
「大阪はもっと凄いわよ」
 今度は田淵先生が皆に告げる。
「殆ど全員阪神ファンで。もう難波なんか言ったら」
「阪神ですか」
「虎よ、大阪は」
 最早これは絶対のものがある。まず阪神なのだ。巨人なぞ応援する人間はまずいない。
「ここもだけれどね」
「まあ巨人なんてなあ」
「応援できませんよ」
「それでもうちのクラス阪神ファンだけじゃねえよな」
 正道は今度はそこを指摘した。
 
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