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魔法少⼥リリカルなのは UnlimitedStrikers

作者:kyonsi
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第49話 トラブル発生


――side奏――

「札術占い……? なにそれ知らない」

 ポカンとする紗雪にちょっと苦笑を一つ。
 スバル達が受けたという占いを聞いて、煌と紗雪に話を聞いてみる。
 曰く紗雪が使う呪符に似た札を握れば占えるっていう……地球発祥なのと聞かれたけれど……あんまり占いって信じない質なもので。知っているであろう皆に聞いたわけだけど。
 
「真面目な占いだって、もう少しなんかあるんだろうが……札握っただけで分かるってそりゃまた。
 他の占い師商売にならんだろ? まぁ、当たってたらの話だけど」
 
「さあ? スバル曰く悩みをピンポイントで当てられて驚いたって言っては居たけど?」
 
「何じゃそりゃ」
 
 今一信じてない様子の煌を横目に、怪訝そうな紗雪を見て首をかしげる。
 
「どうしたの?」

「……前に皆に言ったこと憶えてる? 私の先入先をことごとく呼んだ白い騎士甲冑のアンノウン」 
 
 空気が変わる。煌も食事の手を止めて紗雪に視線を向けて。
 
「憶えてるけど。わざわざ接触するか? スバルさんらに?」

「直接見てるわけじゃないし、そこの所はわかんない。時間作ってちょっと見に行ってみようかな?」

 いつの間にか食べ終わった紗雪がうんうんと悩む所で一つ残念な報告が。
 
「暫く居ないって言ってたよ? そのサテラさんって人」

「そんなバカな。マジかぁ行きたかったなその店」

「目的変わってんじゃない……甘いもん好きですもんねー煌さんはー」   
 
「目の前でいちゃつくなや」

 煌と紗雪のイチャイチャ見たくて今日話振ったわけじゃないんだよもー。 
 今日はフェイトさんと響居ないしなー。下手すりゃちょっと間戻ってこれないらしいし。
 
「そういやよ? 優夜と時雨はちょっと事務周りで外回ってるけど。響は? サボり?」

「ううん。フェイトさんとデート」

「「マジで?!」」 
 
「や、嘘だよ。でもエリオとキャロは、シグナムさんと調査に行ったしなー。私はスターズと一緒だからなー」

 ……思いの外2人の反応が高くて悔しいな-と。
 
 今頃響は何してんのかねぇ? 先輩の足引っ張ってなけりゃ良いけども。
 
 


――side響――

 はやてさんからの説明を聞いた時。まず思ったのが只の案件より面倒だと思った。

 ミッドの地下高速でガジェットドローンI型を見かけたという目撃情報を得た。それはI型の上部をくり抜いて人が乗れるようになっているだの、実際に人が乗ってただの、色々情報が上がってきた。
 
 ただ1つ解せないのが、目撃したって言う割に何の被害も受けてない事。コレが分からない。しかも監視カメラに写ったとかそういう事は無いから余計に分からないし。

 で、現在フェイトさんと共に目撃のあった場所へ向かうため、該当区域の地下高速管理施設に挨拶を済ませる。俺は捜査官の資格を所持していないから、あくまでフェイトさん主導で捜査は進められるし、責任者もフェイトさんになってる。冗談でハラオウン執務官に従いますよーって言ったら軽く怒られた。 
 
 フェイトさんを指名したのは本局の上層部らしい。しかも、カテラ・フリートウッド事務官経由の依頼ということは、閣下も知ってる任務、もしくは一枚噛んでるかもしれない。
 かなり面倒なのか、もしくは現在進行系で何か起きてるか、過去に何かあったからなのか分からない。
 ただ、フェイトさんが俺を選んだのはよくわからないけど、頼られて居るなら頑張らないとなー。

 で、目撃の多かった場所へ行くと。多くなりそうな理由がそこにはあった。何でかというと。

「……廃棄区画と繋がってりゃそりゃ誤認するかもしれませんね」

「うん。しかも施設の人達は知ってて放置してるみたいだから厄介だね」

「そうですね。花霞、区画図出してくれ」

『了』

 出された図面を元に、目の前に今の現在地と、貰った区画図を照らし合わせる。すると、現在地は区画図のギリギリ範囲内。廃棄区画から先は何もないとなっている。その上。

「壁は薄汚れてるのに、廃棄区画へ繋がる壁は断面はまだ白いし、ここ最近……ここ数ヶ月って所か。外から壊されて放置するのも凄いですね」

「そう。綺麗にカットされてるけどコレは……レーザーか何かで斬られてる。ガジェットが本当にいるかもしれない」

 僅かに熱で爛れた断面を見つつため息が漏れる。ふと後ろを見れば監視カメラは見えているが、図ったようにここは死角だし。

「鬼が出るか仏が出るか、それとも蛇が出るか。行ってみましょうか」

「もしくはおばけが出ちゃうかもよ?」

「……ヤダなぁ」

 陸士の制服からバリアジャケットへ変える。今までは二本合った刀が今回からは花霞のみになった。ちょっと寂しいけど、まぁ仕方ない。フェイトさんもジャケットを纏ったのを確認した後。中へと踏み込む。


 ―――

 捜査を初めて早1時間。収穫は殆ど無い……けど。

「……足跡が新しい。やっぱり誰かが出入りしてる……でも」

 腰を落として見ているのは、積もった埃の中に複数の足跡を見て最近まで誰かが何人かで入っているのが分かった。だけど、フェイトさんの表情は曇ったままだ。何故かと言うと。
 
「……裸足で歩いた人がいる。しかもこれ……大人も子供も。どうして?」

 他はブーツのような靴で歩いたのが分かるのに、何人かは素足だ。だけど、この足跡の先か、その元を辿るかとなった時、とりあえず……。

「保護出来るかもしれないし、何処に行ったか見に行こう」

「了解です」

 そのまま足跡を消さないように、俺もフェイトさんもわずかに浮遊して足跡を追っていく。
 ふと、浮遊したままフェイトさんがコチラを向いたかと思えば。
 
「響は……六課が解散したらどうするの?」

「また急な……んー、どうでしょうね。出自が割れているので、皆と一緒ってわけには行けないでしょうし……今度こそ後方支援に徹しようかなーって、なんでそんな機嫌悪そうになってるんですか?」

 質問に回答しただけなのに、ジト目というか機嫌悪くならなくてもいいのに。
 
「まぁ、まだまだ未定ですしね。普通に階級上げるのも目標にしてもいいですし。基本的に無いとは思いますが、何処かに誘われてそこに行くのも有りかもです」

「だったら――」

「ですが、執務官系統には行かないですよ。だって、目指していた奴もいました、現在進行系で目指している子も居る。
 それを差し置いてその道を取るのは、努力を踏み躙ることになってしまう。それはとっても嫌ですし」 
 
 踏みとどまるのを確認して、この話は終わったなというのを察する。
 
「だからまぁ。成るように成るだけです。というより……」

 今回の依頼を回した人の上司……もとい、閣下を思い出すだけで、背筋が凍る。
 良い意味で目をつけられたと考えたいが、悪い意味でなら離れないと変に被害が出るかもしれない。
 だって、あんの糞婆……いや、提督の同期だって言ってたしなー。絶対面倒な事になりかねんもんなー。 

「今こうして笑っているのも烏滸がましい位、カルマが溜まってる身ですよ?」

「……え?」

 空気が凍ったのが分かる。だけどまぁ、これはこれで必要だと思う。
 憧れてた人に手を伸ばされて嬉しい。それは本当だ。
 でも、だけどだ。
 
「アヤ・アースライト・クランベルの配属の最終決定は、あの時点で俺にあった。そして、それを承認した結果……1人生死不明にして、大多数の人の職を奪ってしまった。
 かろうじて残ったやつの夢も奪いかけて、ようやく開放出来たけど。まだ、皆に謝罪しきれていない」 

 そんな事無いというのは知っている。既に謝罪に行って、思い上がるなと拳を叩き込まれたこともあった。
 気にしなくて良いと泣いて抱きしめられた事もあった。
 
 それでもだ。
 
「人の人生狂わせた俺が、望む道へ行けるわけ無いでしょう?」 

 何かを言いたそうに目を見開いたけど。すぐに瞳を閉じて。
 
「うん。今は聞かなかった事にするよ。お仕事中だしね」 
 
 ……おや? 意外だ。突き放したつもりだったんだけどな。
 
「響? そろそろドアが見えるし。ちょっと真剣に行こうか」

「はい。了解です」

 うーん……最近距離近づいたから、離れるようにしたつもりだったんだけどな。
 さて、お仕事モードに変えるか。
 俺はいつでも刀を抜けるように。あちらは直ぐに跳べるように。
 
 扉の前に立って、中に誰かいないか気配を探る。
 
ゆっくりと扉を開けて、周囲を警戒。背中合わせの様に少しずつ前進。
 部屋の中には……いや、手前には何も無い。だが、奥の方には。

「……転移ポート? だけど、コレはもう」

「最近ここに取り付けられてる。でも完全に壊されてる。何のために?」

 完膚無きまで破壊されきっている。側に設置されてるコンソールも根元から折られ、その周囲に内部パーツを落としてる。花霞を用いて解析を頼んだけど。結果は得られなかった。だけど、こんな所に転移ポート。しかも念入りに破壊されてる所を見ると。

「……ここで裸足の人は何処かへ行ったわけ、ですか」

「靴の足跡はあるけど、裸足の足跡はここに来るまで引き返した様子が無かった。だけど、もしかしたらここで着替えてるかも知れない」

 希望的観測をフェイトさんが言うけど……言ってる本人も分かってる。恐らくそれはないと。だけど、わずかでも可能性があるのなら。それを信じるだけだ。

 それに、だ。
 
「此処に向かってきた足跡を辿れば……」

「うん。さ、次に行こうか」
 
 解析している間に花霞に、ここの写真を取ってもらったし場所も分かった。 
 
 だけど、妙だなとも感じる。ここに向かってた足跡も割と新しいし、壊されたのもつい最近っぽい。だが、ここまでザルな警備なのかと考える。もしくは……いや、やめよう。変に考察しても今は情報が足りない。
 
 まぁ、最悪人体実験してる可能性も浮上してきて若干嫌になる。ガジェットの目撃がこんなことに繋がるとか最悪だしな。

 警戒したまま2人で扉を出て、来た道を戻りつつ足跡を辿っていく。 
 
 ふと、フェイトさんの脚が止まって。
 
「実を言うとね。クロノから聞いてたんだ。響は気に病んでる可能性が高い、って」

 予想外の言葉に足が止まる。色々思う所はあるけれど……。 

 マジか、恥ずかし!
 顔に熱が宿る。赤くなっているのが分かる。
 
「ティアナにはまだだけど。優夜と時雨には話したんだ。執務官になりたいのかって」 

 いつの間に? いや、それは置いといて……マジで?
 
「帰ってきた返事は。いつか自力でなります。それよりも本当に欲しい人材に声かけたほうが良いですよーって。
 だから私が声をかけようと思う人に、ティアナと響に声をかけようと思ったんだ」 
 
「……え、や。あの」

「だからまだ諦めないよ? 知らないだろうから言うけど。クロノも響が欲しいって言ってたし。
 響の経歴を知ってるはやても欲しがっている。これからどんどん声かけられるよ?」
 
 ……完全に俺って恥ずかしい人じゃないですかやだー! 

 フェイトさんを直視出来ない。まさか上をいかれてたとは思わなかったし。
 
「さ、次にいこうか?」

 フフッと笑って先に行く後ろ姿を見て、ため息が……。うわー、恥ずかし。
 なんとか移動している間に顔が赤いのも治って。
 
 気を取り直して。

「で。ここに来るまで何もなかったわけですが。どう見ます?」

「人の気配は全く感じられないし、足跡の上に埃もあるから。何か手がかりが残ってたら……もっと言えば、被害者の情報があれば良いんだけどね」

 視線の先には大きめの扉が1つ。そこから離れた場所で2人で話し合う。というか、途中ドアがあったから中見たけど全部空っぽだし、生活感も何もないしで、収穫が殆ど無い。
 
「あそこに何かあると見るのが普通だけど……。これまでの事を考えれば外れかもしれない」

「今度こそ何かあれば良いんですけどね」

 再び左右を警戒しながら扉を開けて中を覗き、一気に入る。

 まず入って思ったのが。人の生活感があるという事。広い空洞なのに、扉の近い隅っこに寝泊まりした後のような寝袋や食事の後。
 そして、机の上には手鏡程度の黒い六角形の板があり、椅子にはアタッシュケースが半開きで開いてる。その様子から中には何も入っていないようだ。
 広い空間をよくよく見れば、上にも広く、風が反響しているのがわかった。さらに、扉の反対側……向こう側にも扉がある……が、瓦礫で塞がっているし、瓦礫の断面が変色してる辺り相当前から壊れてるようだ。

 警戒をそのままに、フェイトさんはテーブルの上のアタッシュケースや板を確認して、俺は寝袋の側へとそれぞれ近寄る。だが、コチラには特に収穫はない。寝袋も埃が積もってる所を見るとずっと使われていないようだし、食事の取った後の残骸にも埃が積もってる。

 これ以上は無いな、と判断して振り返った。

「フェイトさーん。こっちには何も――」

 フェイトさんが六角形の板を手にした瞬間、鏡のように反射したのが分かった。先程までは真っ黒な板(・・・・・)だったのに。そして思い出す。流の時のことを!
 
「フェイトさん!」

「え?」
 
 瞬間的に踏み込んで跳ぶ。その勢いのまま鏡とフェイトさんの間に割って入る様に割り込み、フェイトさんを抱いて、その場から離れる。同時に背後に閃光が奔ったのが見えた。だけど、勢い余って倒れるのを、俺が下敷きとなって怪我させないように気をつけ、そのまま背中から着地する。止まったと同時に。
 
「響、大丈夫!?」

「え、あぁ……だい……じょう……ッ!?」

 首だけあげて大丈夫と言い切る前に、身体から、ピシッピシッと乾いたような音が響いた。同時に割り箸を数本まとめてへし折るような音や、セメントに罅が入るような音が俺の中から聞こえる。
 それも、お互いに。
 痛いわけでもないのに声が出ない。それでもなんとか絞り出して目の前が真っ白に染まった。
 
 
――sideフェイト――
 
 私の下に居る響が苦しそうにしている。私も体の中から乾いた音が聞こえる。それは響の中からもだ。
 苦しそうにしているのもつかの間、閃光が煌めいたと思えば。
 
「……へ?」

 だぶだぶになった和服とインナーの中で黒髪の子供がいた。長い黒髪。細い眉毛。白い卵型の頬は、今では若干赤く桜色になっている。
 でも、意識が無いらしく、目は閉じたままだ。
 
 なんで? どうして? と思うけれど……目の前が真っ白に染まった。
 
 すぐに収まったけれど……今のは一体?
 いや、その前に響をどうにかしないと。そう考えて手を伸ばすけど……ガントレットが外れていることに気づく。
 加えて、袖が余っているし、どう見ても……。
 
「……バルディッシュ」

[……Sir.]

「私……小さくなってない?」
 
[……Yes.]

 ……嘘でしょう? と考えたと同時に、目の前が……暗く……。 
 
 
 
 ――sideキャディ――
 
 ……寂しいわというのが一番強い。うちに務めていた子が、書き置きを残して、お店から去っていったしまったのだから。
 しかも今までのお給金を残して。気にしなくて良いと何度も言ったのに、あの子はそれを拒否して、住まわせてくれてるだけでありがたいですと。ずっとそう言っていた。
 たった数ヶ月だけというのに、こんなにも想うのはやっぱり何かある子なのね、と。
 普通だったら怒る筈なのに、私も甘くなってしまったのかしら?
 
 だけどまぁ、最後に頼まれた事を確認しに来たわけだけど……。
 
 此処は何だ? 隊長が調べると言っていた場所だと思うが……此処は明らかに妙だ。
 廃棄区画の場所よっては宿無しの人が住んでいるの知っているが、ここは奥深く人が住むには、地上まで遠すぎる。
 しかも……何か人体実験でもされたか? 変な転移ポートがあるが、データは回収できないだろう……って。
 
 違う違う。私の目的は2人程人が居るから、その人達の保護よ。黒髪と紫色の……あら?
 
 大きな広間に来たのだけれど……部屋には2人の子供が倒れてる。
 子供を連れた人がいるからと聞いては居たから、昔の格好と、身分証を持ってきたのに……これはどういうことかしら?
 しかも黒髪はともかく、金髪の子の持つ戦斧、これは確かハラオウン執務官のデバイス、バルディッシュ・アサルト。
 ということは……聞いてた情報とは違う。黒髪の小さい子を連れた紫の女性が居ると聞いていたのに。
 
 何はともあれ……回収してから考えましょう。流石にこんな所に2人置いてはおけないわ。
 
 ……サトちゃん。貴女、何を知っているの?
 
  
 

 
後書き
 長いだけの文かもしれませんが、楽しんで頂けたのなら幸いです。ここまでお付き合いいただき、感謝いたします。 
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