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ある晴れた日に

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668部分:炎は燃えてその十二


炎は燃えてその十二

「これだ」
「これね」
「そこに書いてある」
 こうその一見無愛想な声で告げた。
「それを見ながら曲に合わせて歌ってくれ」
「わかったわ。それじゃあ」
「やっぱりこれもあれかな」
 桐生が明日夢の横からその歌詞を見つつ述べてきた。
「この歌詞もやっぱり」
「俺が作った」
 そうだというのであった。
「作詞は俺だ」
「作詞も作曲も全部」
「俺がした」
 また述べる彼だった。
「いつも通りだ」
「そうなんだ。やっぱり」
「それが一番だからだ」
 だからだというのである。
「俺が全部作った歌がだ」
「そうだね。それはね」
 その通りだと。正道の今の言葉に頷く桐生だった。そしてさらに言うのだった。
「それじゃあ皆でね」
「歌ってくれ」
「うん、そうさせてもらうよ」
「じゃあ皆でね」
 明日夢が音頭を取ってきた。そのうえでまた言うのであった。
「歌おう。この歌ね」
「ああ、それじゃあ」
「今からね」
「歌おうか」
 皆笑顔で彼女の言葉に応える。そうしてであった。
 皆でその歌を歌う。未晴を囲んで。
 正道はギターで演奏しながら自分自身も歌う。そうしてそれが終わった時だった。
「・・・・・・・・・」
 ゆっくりとだった。だが少しずつ。
 未晴の唇が動いた。そうして。
「・・・・・・お」
 こう言葉を発してきたのである。
「おと・・・・・・」
「音!?」
 正道がまず声をあげた。
「今音って言ったな」
「ええ、言ったわ」
 奈々瀬が彼の後ろから言ってきた。
「間違いなくね。言ったわ」
「そうだな。言った」
「音、音っていったら」
「音楽の音か」
 正道はまずそのことだと思った。
「それか」
「それは一つね」
 今度は恵美が彼に告げた。彼女は座っている彼の右横に立っている。
「もう一つ意味があるわ」
「もう一つか」
「あんたよ」
 彼に顔を向けて微笑んでみせての言葉だった。
「あんたのことよ」
「俺か」
「そうよ。音よね」
「ああ、確かに言った」
「音橋よ」
 それだというのである。
「あんたの名前も呼んだのよ」
「俺の名前もか」
「間違いないわ。そうよ」
 まさにそうだというのである。
「あんたの名前もね。呼んだのよ」
「そうだったのか」
「あんたが今していることに感謝しているのよ」
「俺のこの音楽に」
「自分の為にしてくれているから」
 それを言うのである。
「だからよ。感謝しているのよ」
「それがわかってきてるのよ」
 奈々瀬も正道に言ってきた。未晴の正面の石に腰掛けてそのうえで演奏し続けている彼にだ。今もギターで少し音を鳴らしている。
 
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