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【完結】Fate/stay night -錬鉄の絆-

作者:炎の剣製
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第040話 『エピローグ』

 
前書き
更新します。 

 
………私は今、冬木中央公園の近くに設置されている霊園へと足を運んでいた。
あの一週間たらずの間に終結した聖杯戦争から半年が経過していた。
時期もお盆であり霊園には足を運ぶ人達が多く見られる。
…ここには冬木教会の地下に幽閉されていた彼らも一緒に眠りについている。
あれを発見した時には思わずもう死んでいる言峰綺礼に対して憎しみを再度噴出してしまったのはまだまだ未熟だったのだろうね。
…まぁ、もう終わった事は仕方がない。
私は購入していたお花を霊園にある祭壇へと置いて手を合わせて冥福を祈っていた。
そんな時に背後から私の事を呼ぶ人達の声が聞こえてきた。

「シロ!」
「志郎様」

その声に私は振り向けばそこには白い夏服のワンピースを着て麦わら帽子を被っているイリヤ姉さんと少し地味目の服を着ているけど、それでも綺麗なキャスターが立っていた。
そう…姉さんはあれからキャスターのおかげもあり命が救われたのであった。
寿命も普通の人間と変わらないくらいに延命できて最近少しずつだけど背も伸びてきている。

「姉さん。それにキャスター…」
「シロ。ここにシロウが眠っているんだね?」
「うん、そう」
「しかし、今でも不思議に思いますわ。あのアーチャーがこの世界ではいないも同然の扱いだなんて…」
「それはしょうがないよ。そうじゃないと私が死んでいたかもしれないわけだし…」
「あーあ…私も一度だけでも話をしてみたかったなぁ~」
「あの時、姉さんはキャスターの治療で寝たきりだったからね」
「それはわかってるんだけどぉ…あ、そうだ! シロ、この後はキリツグのお墓があるリュウドウジまでいきましょう」
「そうだね」

そこでふと思い出す。
一週間たらずの間だったけど出会えた人々との最後の別れの時を…。










…兄さんの固有結界がまだ展開されている中、後はセイバーの宝具で大聖杯を消し去ればこの聖杯戦争は二度と起こらない。
でも、大聖杯を消し去ったが最後、それは別れの瞬間でもある。

「シロ…。令呪を一つ使ってキャスターがこの世界に残れるように祈ってください。
そうすればキャスターは消えることは無いでしょう」
「うん」

それでセイバーとは別にまだ一画も使用していない令呪に祈る。

「キャスター! この世界に留まり続けて私といつまでも一緒にいて!」

私の願いを聞き入れたのだろう令呪は一画使用された。
これでもう多分だけどキャスターは残れるだろう。

「さて…これで後は大聖杯を消し去るだけですね。シロ、私は最後まであなたの剣であれた事を誇りに思います」
「私もだよ、セイバー…」
「第四次聖杯戦争ではキリツグとは様々な誤解がありましたが、今となってはすべてが許せるでしょう」

そう言ってセイバーは目を瞑って胸に手を添える。

「そして私はこの戦いを最後に一歩、踏み出します。これもシロのおかげなのですよ。感謝します」
「私こそ…。ありがとう、セイバー」
「はい。それでは後はアーチャーと…シロウとの別れを。後悔のなきように…」
「うん…」

見れば凛さんと兄さんもお別れができたのだろう、少し凛さんは涙目になっていた。
兄さんが私の方へと歩み寄ってきて、

「志郎…これでお別れだ。こんな時になんて言葉を残せばいいのかわからないが、会えてよかった」
「私もだよ、兄さん…ね? 兄さん…少し抱きしめてもらってもいいかな…?」
「いいだろう…」

そして兄さんは私を抱きしめてくれた。
私より数段体が大きい兄さんに抱きしめられてもうこれでお別れなんだと思って、私は涙を流してしまっていた。
そんな時だった。
兄さんは泣いている私に気づいたのだろう。
私の目尻を拭いながら、

「笑っていてくれ、志郎…志郎は笑顔が一番似合うのだから」
「あっ…」

そのセリフを聞いて私は再び涙を流してしまった。
そのセリフはお父さんの残してくれた言葉とまるで同じセリフだったのだ。
それで泣きながらも笑みを浮かべて、

「やっぱり兄さんはお父さんの子供なんだね…」
「それはそうだろう。私と志郎は同じ父を持つ兄妹なのだからな…」
「そうだね。そうだよね!」

それから少しの間、抱きしめてもらいながら名残惜しいかもしれないけど離れた。

「…さて、これでもうお別れだな」
「あっ! 待って兄さん!」
「どうしたんだ、志郎…?」
「うん…」

そう言いながらも私はこの十年間貯め続けていた私の魔力がこもった黒いリボンを解いて兄さんの腕に巻く。

「このリボンは…?」
「私の十年分の魔力が籠もっているリボンだよ。できれば一緒に持って行ってほしい…。
兄さんが挫けそうになったらこれを私だと思って…そして私の事を忘れないで…ッ!!」
「ああ…。ありがとう、志郎。ああ、必ずこの出会いの記憶を本体の元へと送り届けよう」
「うん。それじゃもうお別れだね…」
「ああ…」

そして私はセイバーへと目を向けて、

「セイバー…令呪に命じます、最後の責務を果たして!」
「はい、シロ!」

セイバーはエクスカリバーを構えて大聖杯へと向ける。
そして、

約束された勝利の剣(エクスカリバー)ーーーーーッ!!」

黄金の極光は瞬く間に大聖杯を飲み込んで破壊した。
その瞬間、確かに今まであったセイバーとの繋がりが切れたのを自覚した。
セイバーは笑みを浮かべながらも、

「それではシロ。あなたのこれからに幸運がある事を祈っています…。さようなら。マイマスター…」

そしてセイバーは光となって消え去った。

「アーチャー!」

見れば凛さんの方でも声が聞こえてきて、

「…凜。志郎を頼む。キャスターとイリヤと一緒に志郎を正しき道へと連れて行ってくれ…」
「うん。私頑張るから! だからあんたも…!」
「ああ。答えは得た。大丈夫だよ遠坂。俺もこれから、頑張っていくから…」

凛さんとの最後の別れができたのだろう、少しずつ消えていく体に無茶をして私の方へと兄さんは振り向いてきて、

「そして志郎。君の事は必ず忘れない…。君という妹がいた事を誇りに思って私もこれから頑張っていくとしよう…」
「うん。またね…兄さん…」
「!…ああ、またな志郎」

いつかまた会えるだろう約束をして兄さんは笑みを浮かべながら消えていった。
そして固有結界も役目を終えたのだろう、兄さんが消えたのを合図にもとの洞窟の中に戻っていた。

「………」

私は最後まで笑顔でお別れをできたと思う。
でも、もういいよね?
我慢しなくてもいいよね?
それで限界だったのだろう、私は声を出して泣いてしまった…。
そんな私に凛さんが無言で抱きしめてくれた。

「今は泣きなさい、志郎。きっとそれがあなたの糧になるんだから…」

こんな時でも凛さんは優しかった。
だから凛さんの胸を借りて私は泣きはらしたのであった。
それから家に帰ったら桜や慎二くん、キャスターに迎え入れられてこうして聖杯戦争は永遠に消えていった。










そんなことがあったなぁ…と思いにふけっていた。
…そして姉さん達と一緒にお父さんのお墓参りが済んだ後、

「さてと、それじゃシロ。これからどうする? セラとリン達がきっと家で料理を作っていると思うけど」
「あはは…きっとそうだね。あの二人だから桜と凛さんともめてる光景が過ぎるね」

そう、イリヤの護衛であったセラさんとリーゼリット…リズさんも姉さんと一緒にアインツベルンから勘当されてしまったから行き場がなくなってしまったので姉さんと一緒に衛宮の家で暮らすことになったのだ。
当時は酷かった。
姉さんがリハビリをしだした頃にアインツベルンからの使者が来て『小聖杯で無くなったあなたにはもう用はない』と言われてきたのだから。
それでセラさんとリズさんが怒ってその使者を殺しそうになったのは言うまでもない。
まぁ、そんなこんなで今ではセラさんがうちの家事清掃などを受け持っていたりして、逆にリズさんは元の性質からなのだろういつもだらけながらも俗世にどっぷりと浸かっている。

そして凛さんと桜はというと姉妹の仲も戻ったのか互いに最近は遠慮がなくなってきている。
私ともども魔術の師匠をキャスターはしてくれていて凛さんは神代の魔女から教えを乞う事が出来てとてもホクホク顔であったのは言うまでもない。
そして慎二くんは間桐家を今はどうするか悩んでいるがなんとか切り盛りをしていくと息巻いている。

「…とりあえず、真っ直ぐに帰ろうか。皆を待たせても悪いしね」
「そうだね」
「はい、志郎様」

それで姉さんとキャスターと三人で帰る事にした。
でもいざ家に帰ってみるとなにやら中が騒がしいことになっていた。
何事かと思っていると玄関から凛さんと桜が顔を出してきて、

「あ、おかえりなさい志郎、イリヤ、キャスター。
それよりちょっと大変なことになっているからすぐに中に来て」
「どうしたの、凛さんに桜…?」
「先輩も来てみればわかりますよ」

どこか嬉しそうな桜。
それで居間へと入っていくとそこにはもういないはずの人の後姿があった。
その人は私に気づいたのであろう。

「―――お久しぶりですね。シロ…」

私に久しぶりの笑顔を向けて来てくれた。
私は嬉しくなってその人にすぐに抱き着いたのは言うまでもない。






………思いは繋がっていく。
決して切れない絆がある。
出会いもあれば別れもある。その逆もまた然り。
だからいつか兄さんともまた会えるかもしれない。
だって、私と兄さんは“錬鉄の絆”で結ばれた兄妹なんだから…。
































………とある男は寂びれた荒野で一人腰を下ろしていた。
無言で誰とも話さない。話す相手もいない。
あるのは剣の丘と無限に地面に連なる剣達だけ。
だけど男は決して寂しくなどなかった。
絶望などしていなかった。
男は僅かに笑みを浮かべながらも腕に巻き付いているリボンを撫でたのだった。



 
 

 
後書き
こんな感じに〆させてもらいました。
私の作品をお気に入りにしてくださった皆様に感謝いたします。

最後になりますがこんな作品を見てくださり感謝します。

それではこれで『Fate/stay night -錬鉄の絆-』、完結です。

炎の剣製でした。 
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