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英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

作者:sorano
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第37話

~黒キ星杯~

”巨イナル黄昏が発動し、黒き聖獣が消滅するとテスタ=ロッサはオズボーン宰相達に視線を向けるとオズボーン宰相達目掛けて向かい始め
「まさか…………!」
「それだけは駄目だ、セドリック――――――!」
テスタ=ロッサの行動を察したアンゼリカは厳しい表情を浮かべ、オリヴァルト皇子は真剣な表情で声を上げた。

「ったく…………このタイミングで思い出すとはな。」
一方”巨イナル黄昏”が発動するとジークフリードの仮面が外れ、仮面が外れ、記憶が戻ったジークフリード――――――クロウは双銃を仕舞った。
「”七の騎神”か…………クソったれな仕組みもあったもんだぜ。」
ジークフリードである間に知った情報を思い返したクロウは厳しい表情で呟き
「ク…………ロウ…………?」
「あんた、記憶が…………」
「どうやら”黄昏”の発動と共に記憶を取り戻すようになっていたようですね…………」
クロウの様子を見たアリサとサラが呆け、トマスが複雑そうな表情を浮かべているとクロウはその場から走って最下層向けて飛び
「仕方ねぇ、付き合うか。」
「団長…………!?」
クロウに続くように最下層目掛けて飛んだルトガーの行動を見たフィーは驚きの声を上げた。

「来い、”オルディーネ”!」
「来な、”ゼクトール”!」
そして二人は最下層目掛けて落下しながらそれぞれの騎神を呼んで騎神の中へと入り、最下層に着地させるとオズボーン宰相達目掛けて剣を振り下ろそうとしたテスタ=ロッサの両腕をオルディーネが抑え込み始めた。
「コラ、ちったあ落ち着け、皇太子殿下!」
オルディーネがテスタ=ロッサを抑えているとゼクトールがテスタ=ロッサの正面に着地して格闘の構えをし
「そのまま抑えとけよ?」
剣を持つテスタ=ロッサの腕目掛けて掌底を放ち、ゼクトールの掌底によって”根源たる虚無の剣”は弾き飛ばされて近くの地面に刺さった!

「やれやれ…………愚かな息子(リィン)の”代役”を務めさせたこと、心よりお詫びを申し上げます、皇太子殿下。来るがいい――――――”イシュメルガ”。」
テスタ=ロッサの様子を見て苦笑し、恭しく礼をしたオズボーン宰相は何と”黒の騎神イシュメルガ”を自身の背後に顕現させた!
「な――――――」
「”黒の騎神”じゃと!?」
「ま、まさかオズボーン宰相まで起動者(ライザー)だなんて…………」
オズボーン宰相が呼び寄せたイシュメルガを見たオリヴァルト皇子は驚きのあまり絶句し、ローゼリアは厳しい表情で声を上げ、トワは不安そうな表情をした。

「やっとお出ましか。」
「あれが…………地精(オマエら)のご主人ってわけか?」
一方イシュメルガの登場を見たルトガーは興味ありげな表情を浮かべ、クロウは厳しい表情でアルベリヒに問いかけた。
「ああ、その通りだ。」
(やはり記憶が戻ったようだね、クロウ…………)
アルベリヒが答えている中ゲオルグは複雑そうな表情を浮かべてオルディーネに視線を向け
「クク、いるじゃねえか…………オレを圧倒してくれそうなのが。]

状況を見守っていたマクバーンは不敵な笑みを浮かべた。そしてイシュメルガの中に入ったオズボーン宰相はイシュメルガをテスタ=ロッサに近づけさせた後片腕から波動を放ってテスタ=ロッサを無力化させると共に衝撃でセドリック皇太子を気絶させた!
「――――――それでは始めるとしよう。世界を絶望で染め上げる、昏き終末の御伽噺を。」
そしてオズボーン宰相が宣言をしたその時、周囲の空間が光に包まれ始めた。

「こ、これって…………!?」
「フフ…………”星杯”が解けるか。」
突然の状況にトワが困惑している中アルベリヒは不敵な笑みを浮かべて周囲を見回した。
「通常空間への回帰!”歪み”が発生するわ!エマ…………!」
「ええ、わかってる!」
「これは…………」
「外への転位陣か!?」
一方状況を悟ったセリーヌに促されたエマは眼鏡を外して眼に魔力を込めると共に魔術を発動させた。するとエマを中心にユーシス達を魔術の光が包みこみ、それを見たガイウスは目を丸くし、マキアスはエマに確認した。

「ええ、いったん星杯の外へ飛ばします!他の方々も私達にお任せください!」
「…………わかった、頼む。」
「気を付けてね…………!」
エマの行動を知ったユーシスは頷き、エリオットはエマに声をかけるとユーシス達はその場から転位した。そして続くようにアリサ達の所へと転位した後アリサ達を転位させ、クロチルダはミュラーとアルゼイド子爵と共にその場から転位して星杯から脱出し、アリサ達を転位させたエマとセリーヌはオリヴァルト皇子達を援護したと思われる謎の人物達も転位させる為に突入地点に転位するとそこには菫色の髪の少女とエヴリーヌがいた。

「あら、見つかっちゃった♪」
「ハ…………?」
「ええっ!?貴女は確か”夏至祭”に招かれたメンフィル帝国のレン皇女殿下!?どうしてレン皇女殿下が”星杯”に…………!?」
エマ達が目の前に現れると菫色の髪の少女――――――リウイとペテレーネの養女にしてプリネの義妹でもあるメンフィル帝国皇女レン・マーシルンは小悪魔な笑みを浮かべ、レンを見たセリーヌが呆けている中エマは信じられない表情で声を上げた。
「レン、そろそろ行くよ。」
「ええ。――――――クスクス、オリビエお兄さん達とは近い内に会って話す事になると思うから、オリビエお兄さん達によろしく伝えておいてね♪」
そしてエマに伝言を伝えたレンはエヴリーヌの転位魔術によってエヴリーヌと共にその場から転位して星杯から脱出した。
「転位魔術…………それにどうしてエレボニアと敵対しているメンフィルの皇族であるレン皇女殿下がオリヴァルト殿下達の援護を…………」
「考えるのは後にしなさい、エマ!最下層にいる皇子達はロゼに任せて、アタシ達は脱出するわよ!」
「!わかったわ…………!」
レン達に続くようにエマとセリーヌも転位魔術で”星杯”から脱出した。

「――――――転位魔術で”星杯”を脱出する!全員、妾の周囲に寄れ!」
「ま、待ってください!皇太子殿下が…………!」
魔杖を取り出したローゼリアはオリヴァルト皇子達に脱出を促し、それを聞いたトワが血相を変えて意見をしたその時その場にいた騎神達は”精霊の道”によってその場から転位し、アルベリヒ達も転位魔術で転位して星杯から脱出した。
「セドリック…………」
「…………今は脱出に専念するしかなさそうだね…………」
それを見たオリヴァルト皇子は辛そうな表情を浮かべ、アンゼリカは重々しい様子を纏って呟いた。そしてオリヴァルト皇子達はローゼリアの転位魔術によって”星杯”から脱出した。


オリヴァルト皇子達が”星杯”から転位すると既に通常空間への回帰が終わり、”黒キ星杯”があった場所には元の景色――――――カレル離宮があった。

~カレル離宮近辺~

「どうやら全員無事に脱出できたようだな。」
「…………おかしいわね。想定だとこの辺りも通常空間への回帰が発生すると思っていたけど、”星杯”があった場所もそうだけどここも空間の状況が既に落ち着いているわ。それらを考えると”何者かが空間を制御した”としか思えないけど…………」
全員揃っている事を確認したミュラーが安堵の表情を浮かべている中クロチルダは眉を顰めて考え込んだが
「考えるのは後にせよ!すぐに転位で”紅き翼”に戻るぞ――――――」
ローゼリアが上空に滞空し続けているカレイジャスに向かう事を促した。するとその時アルベリヒ達を始めとした”星杯”でオリヴァルト皇子達を阻んだ様々な勢力の敵達に加えてゼノとレオニダス、ガレスが転位魔術で現れてアリサ達と対峙した!

「ええっ!?」
「”星杯”で我らを阻んだ様々な勢力の者達が勢ぞろいして、我らの前に現れるとは…………」
「その様子だと今後の障害になるかもしれない私達を”始末”する為に、勢ぞろいで現れたのかい?」
アルベリヒ達の登場にエリオットは表情を青ざめさせて声を上げ、ラウラは真剣な表情で呟き、オリヴァルト皇子は厳しい表情で問いかけた。
「フフ、貴様たちは”餌”だ。――――――”灰”の起動者(ライザー)を釣る為のな。」
「ぼ、僕達がリィンを釣る為の餌ってどういう事だ!?」
「まさか其方たちはリィンを――――――」
アルベリヒの答えを聞いたマキアスが困惑の表情で問いかけ、アルベリヒ達の狙いを悟ったアルゼイド子爵が厳しい表情を浮かべたその時!

「―――緋空斬!!」
「二の型――――――洸波斬!!」
「ブリューナク起動、照射。」
「――――――」
「唸れ、烈風――――――シルフィードキス!!」
「ハァァァァァァ…………双剋刃!!」
アルベリヒ達の左からは炎の斬撃波と神速の抜刀によって放たれた斬撃波と集束されたレーザー、右からは回転する烈風の刃と光と闇の斬撃波が襲い掛かり、左右からの攻撃に対してアルベリヒ達は散開する事で回避し
「落ちよ、聖なる雷――――――ライトニングプラズマ!!」
「光よ――――――イノセントレイ!!」
「エニグマ駆動―――――エアリアル!!」
「エニグマ駆動――――――テス・スパイラル!!」
更に続けて放たれた様々な魔術やクラフト、アーツによる追撃はゾア=バロールやナグルファルが協力して大型の結界を展開して防いだ。すると左右からリィン達が現れてアリサ達を守るようにアリサ達の前でそれぞれの武装を構えた!

「リィン――――――ッ!」
「セレーネにエリス、エリゼも…………!」
「アルフィン…………!それにクルトとミルディーヌ君も…………!」
「それと話には聞いていたけど、ホントに”黒兎(ブラックラビット)”がそっちの仲間になっていたんだね。」
「ったく、ようやく姿を見せたわね…………!」
リィン達の登場にアリサとガイウス、オリヴァルト皇子は明るい表情を浮かべ、リィン達の中にいるアルティナを見たフィーは興味ありげな表情でアルティナを見つめ、サラは苦笑していた。

「アハハ!メンフィル側についたとはいえ、”予想通り”昔の仲間のピンチには駆け付けたようだね!」
「ったく、メンフィルについても”ツメ”が甘いのは変わっていないみたいだな。」
「「…………」」
一方カンパネルラは声を上げて笑い、レクター少佐は苦笑し、クレア少佐とクルーガーは目を伏せて黙り込み
「ま、予定を大幅に前倒しにする事になるけど、この戦力差なら問題あらへんな。」
「クロスベルで受けた屈辱、ここで返させてもらおう…………!」
ゼノとレオニダスは戦意を高めてそれぞれの武装を構え、ゼノ達に続くようにアルベリヒ達もそれぞれ戦闘態勢に入った!

「リ、リィン君達が現れる事が”予想通り”って…………」
「まさか…………リィン君を皇太子殿下のようにそちらの今後の活動に利用する為に、私達を危機的状況に陥らせたのか!?」
カンパネルラが口にした言葉を聞いたアリサ達がそれぞれ血相を変えている中トワは不安そうな表情をし、アンゼリカは厳しい表情で問いかけた。
「――――――その通りだよ、アン。」
「皇太子を”真なる贄”の代用にしているとはいえ、想定外(イレギュラー)続きであるこの状況では何が起こるかわからないからな。今後起こりうる想定外(イレギュラー)に備えて、”本来の真なる贄”である灰の起動者(ライザー)である貴様は今ここで無力化し、捕える必要がある。その為にも”少々”戦力過剰とはいえ、そちらを完全に制圧できる戦力を用意させてもらった。」
アンゼリカの推測にゲオルグは答え、アルベリヒは不敵な笑みを浮かべて答えた。

「”真なる贄”じゃと…………?」
「恐らくは”巨イナル一”に関連しているとは思いますが…………」
「考えるのは後にしてあたし達も加勢するわよ!」
アルベリヒの言葉を聞いたローゼリアとトマスが真剣な表情で考え込んでいる中、サラはアリサ達にリィン達の加勢を促したが
「――――――その必要はありません、サラ教官。敵が俺の身柄が狙いで、アリサ達を危機的状況に陥らせて俺を釣りだす事は”メンフィル・クロスベル連合軍は既に想定済みで、それに対する反撃(カウンター)も実行済みです。”」
「何…………!?」
リィンが静かな表情で加勢を断り、リィンの話を聞いたアルベリヒが驚いたその時ステルス機能を解除したメンフィル帝国軍の”ヴァリアント”がカレイジャスの隣に姿を現した!

「な――――――」
「あの戦艦の紋章はメンフィル帝国軍…………!って事はまさかとは思うがクロスベルの時のように――――――」
ヴァリアントの登場にアリサ達、アルベリヒ達の双方がそれぞれ驚いている中クレア少佐は驚きのあまり絶句し、レクター少佐が厳しい表情で推測を口にしようとすると、戦艦の甲板で待機していたリアンヌ率いる鉄機隊とその協力者であるオリエ、更にプリネ、ツーヤ、レーヴェ、エヴリーヌ、そしてジェダル達が転位魔術によってリィン達の周囲に次々と現れた!
「――――――リアンヌ!?」
「鉄機隊を率いているあの人物が”鋼の聖女”――――――いや、”槍の聖女”…………」
「まさに伝承通りの姿だな。」
「”神速”と同じ甲冑という事は、あの二人が残りの”鉄機隊”のメンバーか。」
「ハハ…………まさかここで、プリネ皇女達が加勢しに来るとはね…………」
継母上(ははうえ)…………」
リアンヌ達の登場にローゼリアは驚きの声を上げ、ラウラとアルゼイド子爵は真剣な表情でリアンヌを見つめ、ユーシスはデュバリィ達に視線を向け、オリヴァルト皇子は苦笑し、ミュラーは複雑そうな表情でオリエに視線を向けた。

「バ、バカな…………クロスベルに続いて、今回の作戦すらもこちらの行動を読まれて対策を取られただと…………!?」
「アハハハハハッ!面白くなってきたじゃん!」
「クハハハハハハッ!今後はテメェらが纏めてかかってこいや、アリアンロード、レーヴェ!!」
一方リアンヌ達の登場にガレスが狼狽えている中、シャーリィとマクバーンは不敵な笑みを浮かべて戦意を高め
「やれやれ…………まさかこんなにも早くリターンマッチの機会が訪れるとはな。」
「………………………………」
ルトガーは苦笑しながらジェダルに視線を向け、視線を向けられたジェダルは何も答えず、ルトガーを睨み返した。

「来い――――――メサイア、ベルフェゴール、アイドス、ユリーシャ!!」
更にリィンはメサイア達を召喚し
「ええええええええっ!?」
「パント大使閣下やヴァイスハイト陛下の話からメンフィル帝国に向かったリィンさんはメサイアさん以外にも使い魔契約を交わした異種族の方がいる事は予想していましたが、まさかメンフィル帝国側についてから新たに3人もの使い魔契約を交わした異種族の方達を増やしていたなんて…………!」
「しかもどの連中もとんでもない霊力(マナ)を秘めている上、”天使”まで使い魔にしているじゃない…………………!」
「………………………………」
メサイア以外のリィンの使い魔達――――――ベルフェゴール達の登場にエリオットは驚きの声を上げ、エマは信じられない表情で呟き、セリーヌは目を細めてベルフェゴール達を見回し、アリサは驚きのあまり口をパクパクさせていた。
「馬鹿なっ!?あの茜色の髪の女性は……………!」
「…………ハハ………本当に私達の知らない間に一体何があったんだい、リィン君…………」
アイドスの容姿を見てある人物――――――かつて”影の国”で出会い、”影の国”から脱出できるようになった際にエステルの魂と同化した”正義の大女神アストライア”であるサティア・セイルーンの容姿と非常に似ている事にすぐに気づいたミュラーは血相を変えて信じられない表情で声を上げ、オリヴァルト皇子は呆けた後疲れた表情で呟いた。

「――――デュバリィ、エンネア、アイネス、そしてオリエ殿は”子供達”の相手を。私は”灰色の騎士”達と共に”劫炎”の相手をします。」
「「「イエス・マスター!」」」
「――――――了解しました。」
「リィンさん!”黒のアルベリヒ”と”銅のゲオルグ”の相手は私達が担当します!」
リアンヌはデュバリィ達とオリエに指示をし、プリネはリィンに自分達が戦う相手を申し出た。
「お願いします!メサイアとベルフェゴールは”道化師”とシャロンさんの相手を頼む!」
「はいっ!」
「任せて♪」
「ジェダルさん!ジェダルさん達には”猟兵王”達”西風の旅団”の相手をお願いしてもいいですか!?」
「――――――いいだろう。」
「フォルデ先輩はエリゼ達と共に”赤い星座”の相手をお願いします!」
「おうっ、任せときな!」
「アイドスとユリーシャは俺とサンドロット卿と共に”劫炎”の相手だ!」
「ええ!」
「了解しました、我が主!」
そしてリィンが仲間達に次々と指示を出すと、リィン達は散開してそれぞれが相手をする敵達と対峙した。

「”鉄機隊”に加えて”ヴァンダール子爵家”のオリエ夫人までメンフィル帝国軍についていたなんて…………!」
「おいおい…………2対4で、全員執行者か達人(マスター)クラスとか卑怯じゃねぇか?」
「フン!”鉄血宰相”の野望の為に様々な暗躍をし続け、自治州や小国をエレボニアの領土として取り込む手助けをしてきた貴方にだけは言われる筋合いはありませんわ!」
「音に聞く”鉄血の子供達(アイアンブリード)”…………相手にとって不足はない!」
「ふふっ、”双剣のヴァンダール”の極み、とくと見せてもらうわね。」
「――――こちらこそ、現代の”鉄騎隊”の実力、この目でしかと見せて頂きます。」
デュバリィ達と対峙したクレア少佐は信じられない表情で呟き、疲れた表情で文句を言うレクター少佐に対してデュバリィは鼻を鳴らして答え、アイネスは戦意を高め、エンネアに視線を向けられたオリエは静かな表情で呟いて自身の得物である双剣を構えた。

「――――――貴方達”地精”の目的と今まで行ってきた非道…………メンフィル皇女として…………私個人として、とても許せるものではありません。――――――貴方達が行った非道、心の底から後悔させてさしあげます。」
「”第二のハーメル”まで生まれさせようとした事で買った”剣帝”の”怒り”…………貴様ら自身に叩き込んでやろう。」
「まさかトールズに通っていた(セレーネ)がお世話になった上級生である貴方まで”そちら側”だった事には驚きましたが…………――――――だからと言って、容赦するつもりはありませんので、覚悟してください。」
「くふっ♪エヴリーヌ達メンフィルを敵に回せば、そっちの計画は絶対に失敗する事を教えてやるよ♪」
アルベリヒ達と対峙したプリネとレーヴェは静かな怒りを纏い、ツーヤは真剣な表情でそれぞれの武装を構え、エヴリーヌは不敵な笑みを浮かべ
「舐めるな、想定外(イレギュラー)共が…………!クロスベルでは後れを取ったが、これ以上貴様ら想定外(イレギュラー)の好きにはさせん!」
「――――――僕達にも”地精”としての”誇り(プライド)”がある。そう何度もプライドを傷つけられる訳にはいかないから、何が何でも切り抜けさせてもらう…………!」
「――――――」
「――――――!」
一方アルベリヒはプリネ達を憎悪の表情に睨み、ゲオルグは厳しい表情でプリネ達を睨んだ後それぞれの戦術殻を戦闘態勢に入らせた。

「まさかあれ程アリサさんを大切にしていた貴女まで”そちら側”につくとは今でも信じられませんが…………――――リィン様が覚悟を決めた以上、リィン様の障害となる貴女も一切の容赦なく制圧させて頂きます…………!」
「…………返す言葉もありませんわ。結社の残党の”執行者”として存分にお相手してさしあげます。」
静かな表情で呟いた後決意の表情を浮かべて自身の得物である聖剣を構えたメサイアに対して答えたクルーガーは自身の得物を構え
「ハア…………ただでさえ内戦終結の時から想定外(イレギュラー)の出来事続きなのに、”灰色の騎士”が彼女以外にも使い魔を増やしていたなんて想定外だよ…………この調子だと、そっちにはまだ僕達も知らない想定外がありそうだね?」
「うふふ、もしその貴方達も知らない”想定外(イレギュラー)”とやらがあったとしても、”敵”である貴方達にわざわざ教えるようなおバカな事をする訳がないでしょう?――――――今は”貴方達にとって絶望的な戦力差であるこの状況”を切り抜けられるかどうかを心配すべきね♪」
疲れた表情で溜息を吐いたカンパネルラに問いかけられたベルフェゴールは答えを誤魔化して自身の戦闘スタイルである格闘の構えをした。

「―――リリカ、ユリーシャ、フルーレティ、フィア。お前達はおまけの二人を任せる。猟兵王は俺一人で相手する。」
「わかりました、ジェダル…………!」
「我が主の一騎打ちは邪魔させませんので、存分に武勇を振るってください!」
「ふふっ、”戦術オーブメント”だっけ?私達はあのヴァイスハイトとかいう皇帝から今回の依頼の”報酬”として前払いしてもらったこの世界の魔導具の”実験台”代わりに遊んでおくけど、”実験台”が潰れたら私達も”そっち”の戦いに混ぜてもらうね。」
「うわあ~…………敵を”実験台”って…………これじゃあ、どっちが悪役かわからないよね~。」
ジェダルの指示にリリカは頷き、守護天使ユリーシャはジェダルに激励の言葉をかけ、不敵な笑みを浮かべてゼノとレオニダスに視線を向けたフルーレティの言葉を聞いたフィアは表情を引き攣らせて呟き
「俺達が”おまけ”や”実験台”扱いやと…………!?」
「しかも一人で団長を相手にするとは、随分と舐められたものだな、西風の旅団(おれたち)は…………!」
「ま、実際クロスベルでは俺達は情けなくも敗北して尻尾を巻いて逃げちまったからな…………クロスベルの時と違って、相手の数は少ないとは言え、油断するなよ、ゼノ、レオ!」
一方ジェダル達が自分達を”格下”扱いした事に怒りの表情を浮かべているゼノとレオニダスに苦笑しながら指摘したルトガーは表情を引き締めてジェダルを見つめながらゼノとレオニダスに忠告した。

「クッ…………2対8か…………!クロスベルで戦った時よりは数は減っているとはいえ、恐らく相手の戦力は”特務支援課”と同等です!油断はしないでください、シャーリィ様!」
「はいはい、それくらいわかっているって~。それにしても、たった二人相手にその4倍もの数で挑ませるなんて灰のお兄さんも、”特務支援課”のリーダーみたいに容赦ないねぇ!」
フォルデ達と対峙したガレスは唇を噛み締めてシャーリィに警告し、警告を軽く流したシャーリィは不敵な笑みを浮かべた。

「いやいや、クロスベルでは今の倍以上の数相手にしても制圧しきれなかったんだから、リィンは当然の判断をしただけだと思うぜ?」
「”執行者”は数の優勢はあまり意味がない事は今までの戦いで十分理解しています。全力を持ってお相手してさしあげますわ…………!」
「兄様を支える妹の一人として…………”八葉一刀流”の剣士として、全力で挑ませてもらいます…………!」
「音に聞く二大猟兵団の隊長クラスに兄上の話にあった結社の”執行者”…………どちらも今の僕にとっては余りにも強大な相手だ。ヴァンダールの一員として、一人の剣士として、全身全霊を持って挑ませてもらう…………!」
シャーリィの言葉に対してフォルデは軽い調子で答え、セレーネとエリゼ、クルトは決意の表情で答えた。

「フフッ、私とクルトさんにとってのメンフィル帝国軍でのデビュー戦となる相手として不足どころか、過剰過ぎる相手でありますので、フォローはお願いしますわね、私達よりも既に豊富な経験をしている”先輩方”♪」
「ミュゼ、貴女ね…………」
「本当に貴女はブレないわよね…………」
「リィン少佐達はともかく、わたしやアルフィン様に関してはその経験が貴女やクルトさんよりたった1回多いだけなのですが…………――――――それはともかく、クロスベルの時よりもこちらの戦力が低下していますので、敵戦力を上方修正して挑みますよ、クラウ=ソラス。」
「――――――」
いつもの調子で自身の得物である魔導騎銃を構えたミュゼの発言に脱力したエリスとアルフィンは呆れた表情を浮かべ、ジト目で指摘したアルティナはクラウ=ソラスに忠告した。
(クロスベルの時と違ってフォルデ先輩とエリゼさんが加勢しているのですから、例え二大猟兵団の隊長クラスであろうと必ず”隙”を見せるはず…………最低でもどちらかは必ず今回の作戦で討ってみせます、リィンさん…………!)
一方高い崖の上にある森の中に潜んでいるステラは狙撃銃(スナイパーライフル)を構えてシャーリィかガレス、どちらかを狙撃できるように静かに銃口をシャーリィ達に向けていた。

「クク…………おい、灰の小僧。テメェ、Ⅶ組のガキ共と別れてから”マジで何があった?”以前まで”混じっていた”テメェの”力”は消えてはいるが、”それ以上の別の力”を感じるぜ?」
「…………やはりアンタには誤魔化せないか。まあ、敢えてわかりやすく言うとすれば”女神の御加護”と言った所かな?」
自分達と対峙して不敵な笑みを浮かべたマクバーンの問いかけに対してリィンは苦笑しながら答え
「あん?」
「神気――――――合一!!」
自分の答えにマクバーンが眉を顰めるとリィンは自身に秘められている”慈悲の大女神”の力を解放した!

「以前のレグラムで見せた”力”とは全く逆の性質を持つ”力”は一体…………」
「ええっ!?な、何なのリィンのあの姿は…………!?」
「”鬼の力”を解放した時のリィンとは違う――――――いや、それ以上の”風”を感じる…………!」
「しかも”鬼の力”を解放した時のような禍々しい”力”は一切感じられません!いえ、それどころか今のリィンさんから感じるあの”力”は…………」
「どちらかというと我々守護騎士(ドミニオン)聖痕(スティグマ)に近い――――――いえ、それも遥かに超える”清浄なる力”ですね。」
”慈悲の大女神”の力を解放したリィンの姿――――――アイドスと同じ髪と瞳の色をしたリィンを見た仲間達が驚いている中アルゼイド子爵は目を丸くし、アリサとガイウス、エマは驚きの声を上げ、トマスは真剣な表情でリィンを見つめた。そしてリィンは神剣アイドスを構えた。

「テメェ、その姿に”剣”は一体…………」
「――――――これが”今の俺の全てだ。”今回の反撃作戦(カウンター)で今後メンフィル・クロスベル連合にとって最も危険な障害になりうるアンタはここで必ず討つ――――――劫炎のマクバーン。」
自分の姿と神剣アイドスに驚いているマクバーンに対してリィンは神剣をマクバーンに向けて宣言した。
「――――――――星芒より出でよ、”真実の十字架(スティルヴァーレ)”!!」
更にリィンに続くように異空間から膨大な神気を纏わせた神剣を現わさせて自分の片手に収めたアイドスは全身から莫大な神気を解放し
「戦を求める哀れなる狂人よ…………”オリンポスの星女神”の一柱にして”慈悲の大女神”たる私がこの場で浄化し、救済してさしあげましょう……!」
「”慈悲の大女神”に仕えし天使にして”慈悲の大女神”に寵愛されし我が主の”守護天使”として、我が主と女神に害なす”神敵”はこの能天使ユリーシャが滅します…………!」
「元結社”身喰らう蛇”の蛇の使徒が第七柱”鋼”にして、”英雄王”リウイ・マーシルンと”聖皇妃”イリーナ・マーシルンの守護騎士リアンヌ・ルーハンス・サンドロット……我が主と戦友達の道を阻む者を討ち滅ぼさん。」
リィンのように神剣をマクバーンに向けて宣言し、アイドスに続くようにユリーシャとリアンヌもそれぞれの武装を構えると共に魔力や闘気を全身に纏った。

「”オリンポス”の一柱――――――”慈悲の女神”じゃと!?」
「伝承上の神々の中でもとんでもない大物の”神”じゃない…………!という事は今のリィン(アイツ)のあの”力”や”剣”はアイツが言っていた通り、”慈悲の女神”の加護によるものなんでしょうね…………」
「”神”だと!?という事はローエングリン城で会ったあの謎の女は”女神”で、その女神がメサイアのようにリィンの使い魔になったというのか!?」
「ひ、非常識にも程があるぞ!?」
「やはりあの茜色の髪の女性は”女神”だったか…………名前もそうだが扱う神剣からして、サティア殿ではなかったようだが…………」
「容姿がサティアさんに非常に似ている事やサティアさんと同じ”オリンポス”の神の一柱である事からして、恐らくサティアさんと何らかの関係のある女神なんだろうね、”彼女”は。そして彼女が”女神”という事はメサイア君と共にいるカーリアンさんのように刺激的な格好かつ魅力的な女性はパント大使閣下の話にあった”魔神”なんだろうね。ハハ………確かにパント大使閣下の話にあったように、あんな”その気になればエレボニア帝国軍全てを滅ぼせるような戦力”を保有するリィン君達なら今後の戦争での戦いで誰一人欠ける事無く勝利し続ける事が決まっているようなものじゃないか…………」
「フフ…………確かにあれ程の戦力なら、さすがのマクバーンも本気で不味いかもしれないわね。」
アイドスの宣言を聞いたローゼリアは信じられない表情で声を上げ、セリーヌは驚きの声を上げた後目を細めて推測し、ローゼリアとセリーヌの話を聞いたユーシスは驚きの声を上げ、マキアスは表情を引き攣らせて声を上げ、真剣な表情で呟いたミュラーに指摘したオリヴァルト皇子は疲れた表情で呟き、クロチルダは苦笑しながらリィン達を見つめた。

「ハハハハハハッ!上等だっ!!」
一方マクバーンは好戦的な笑みを浮かべて声を上げて笑った後”火焔魔人”と化すると共に異空間から魔剣(アングバール)を取り出して構え
「全員喰いでがありそうだ!――――――とことん愉しもうじゃねえか!」
リィン達を見回して戦意を高めると共に魔剣をリィン達に向けて宣言した。
「エニグマ、リンク・オン!!総員、これより敵戦力の制圧を開始する!」
「おおっ!!」
そしてリィンの号令を合図にリィン達はそれぞれの相手との戦闘を開始した――――――!
 
 

 
後書き
という訳で次回はリィン達無双となる戦いの話です!なお、空間を落ち着かせたのはアイドスとフィアです。アイドスもそうですが、フィアはあんなのでも女神(オイッ)で、原作終了後のフィアならそのくらいはできるかと。そして次回の戦いは何気に以前宣言した”戦鬼”対決のようにジェダルVSルトガーという”傭兵の王”対決という夢の対決話が実現する事になります♪なお、今回の話の終盤でリィンが力を解放した場面からのBGMは閃4の”Unlikely Combination”か戦女神ZEROの”聖なる裁きの炎”、グラセスタの”あの日の誓いを胸に秘め”どれかで、そのBGMが次回の戦闘BGMだと思ってください♪
 
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