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戦国異伝供書

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第五十二話 籠城戦その三

「是非に」
「二万五千の軍勢で、おじゃるな」
「攻めましょうぞ」
「大軍でおじゃるな」
「織田家も兵は少なくないので」
「六十万石でおじゃるな」
「はい、一万五千です」
 織田の兵はというのだ。
「それだけいますし」
「二万五千で、でおじゃるな」
「一気に攻めて」
 そしてというのだ。
「尾張を手に入れ」
「そのうえで美濃でおじゃるな」
「あの国も手に入れ、若しくは」
「伊勢でおじゃるな」
「あの国からです」
「伊賀、そして近江でおじゃるな」
「とかくまずはです」
 今川家から見ればというのだ。
「尾張です」
「あの国を抑えてばでおじゃるな」
「我等は上洛への道が開けます」 
 そうなるというのだ。
「ですから」
「わかっているでおじゃる、ではでおじゃる」
「この度は兵を出しますが」
 しかしと言うのだった。
「それまでで」
「戦はないでおじゃるからな」
「それで利を得て」
 そのうえでというのだ。
「済めばよしです、それとですが」
「それと?何でおじゃるか」
「はい、長尾殿はこれからもです」 
 雪斎はさらに話した。
「武田殿とはです」
「戦うでおじゃるか」
「おそらく睨み合うでしょうが」
「その睨み合いをでおじゃるか」
「仲裁することもです」
 そうして睨み合いという戦を終わらせることもというのだ。
「すべきかと」
「そしてでおじゃるか」
「はい、長尾殿にも武田殿にも。特に武田殿にです」
「恩を売ってでおじゃるな」
「血が流れることもです」
 ここでもだ、雪斎はこのことについては眉を曇らせて語った。
「避けるべきです」
「和上はとかく血が嫌いでおじゃるな」
「必要とならば拙僧も戦の場に出ます」
 彼は戦になれば僧衣の上に具足を着けて先陣を務める、彼もまた戦国の世に生きる者の一人ということだ。
「ですが」
「出来る限りはでおじゃるな」
「血を避けて」
「そしてでおじゃるな」
「戦国の世も」
 これ自体もというのだ。
「早く終わらせるべきです」
「その為にでおじゃるな」
「お館様は上洛され」
「そしてでおじゃるな」
「途中東海を完全に手中に収められます」
 そうもなるというのだ。
「そして近江の南に山城となりますと」
「今当家は百万石でおじゃる」
 駿河、遠江、三河を合わせてだ。
「実は百六十万石とも言われているでおじゃる」
「はい、確かな見地を行えば」
「それだけあるでおじゃるな」
「今は。そこに尾張と美濃で」
「会わせて百四十万石、近江の南と山城ともなれば」
「四百万石に届くまでになるので」
 そこまで力があればというのだ。
「当家は天下人になれまする」
「そこまでの力を備えるでおじゃるな」
「はい、そして」
 そのうえでというのだ。 
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