魔法少⼥リリカルなのは UnlimitedStrikers
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第41話 ファーストコンタクト、そして、惹かれた理由を
――sideフェイト――
転移ポートを潜って、しばらくぶりの海鳴。やっぱりここの空気は落ち着くなぁって。だけど……。
「……やっぱここ何か居るよなぁ」
「まだ言ってるの? 出張で無いって分かったでしょう?」
「いやまぁ……うーん」
海鳴に着いてから腕を組んで首を傾げる響に皆少しだけ心配する。本人もそこまで気にしてないみたいだけどちょっと不安。
さて、私達がいる場所は前に出張で来たコテージ。すずかのお屋敷に出るって選択肢もあったけれど、今回はアリサと共に海外へ行ってるみたいで使用は出来なかった。エイミィが車で迎えに来る事になってるからそれを待つ。その間に。
「今回は旅行って言うより、ちょっと遊びに来たって感じだから2人はつまらないかもしれないけど」
「いえ、全然」
「誘われなかったら今頃部屋でダラダラしてましたよ。だからありがたいですし」
とは言ってくれたものの、きっと2人にも何か予定はあっただろうし、申し訳ない気持ちもある。だけど。
「それよか一応休みですし、お互い肩の力抜きましょう。な、エリオもキャロも?」
「「うん!」」
よしよしと自然な手つきでエリオとキャロの頭を撫でる響が少しだけ羨ましい。少し前にもっと甘えて欲しいと2人に告げて、2人からももっと頼って欲しいと言われてから関係は前にも増して、良くなったと自覚してるけど……。
響に向けられる感情とは少し違うのが……何ていうか……。
「フェイトさん?」
「え、あ、奏? どうしたの?」
「いえ……ちょっと怖い顔されてたので」
「なんでもないよ。ごめんね?」
そう返すと、キョトンとした後にニコリと笑ってくれる。ふと、視線を窓へ向けると。
「ふぇいとー」
……え?
「アルフッ!?」
慌てて外へ出てアルフを連れて中へと戻る。そう言えばここに来てからまだ外に出てなかったね……。
「おかえりフェイト。エリオにキャロも……うん?」
響と奏をじっと見て。
「……新しい兄妹?」
「「違います」」
「おっまたせー……あれ?」
タイミングよくエイミィが入ってきたけど、何ていうか……変な空気だった。
――sideはやて――
「あ……あっかーーーーーん!!!!!!」
「「「「部隊長うるさい」」」」
即座にロングアーチに編入してきた4人に言われる。せやけど……せやけど!
「……言わんとしてることはわかります。けどこれは仕方ないことでしょうよ」
デスクで頬杖つきながら渋い顔の優夜。でも、この情報をグリフィス君に見せたら、卒倒しそうな位顔色悪くなったし。せやけど、この4人はなんでこんな落ち着いてるんや?
「いつかいつか、必ず来るなと思ったらこのタイミング。最悪っすね」
「そうだねー。最悪。よりにもよってフェイトさんが居ない時に……あ、だから来たのかな?」
煌と紗雪も嫌そうな顔だ。それ以上に優夜の隣に座る時雨が不思議そうな顔でポツッと。
「……の割には誰が来るとか記載されてないのが変。普通の査察ならこれでいい。だけど今回のは部隊長査察。誰が来るって記載されないのはおかしい」
確かに。言われてみれば変な話や。本局をわざわざ通してきた今回の査察。それなのに、来る人員の名前を書かないのは変や。しかし、よりにもよってこのタイミングかー、部隊長査察。査察をするように命じられた隊長が、他の部隊の隊長と共に部隊を調べる。普通なら査察官が担当するものを各隊長が行うことで、その部隊をより良く調べる。これが表向き。
せやけど、実際は人によっては私みたいなのを嫌ってる人も多々居るわけで……。そういう人達で固められて、ここに来られたら……正直詰む。無いことを言われる心配はない。だけど、見られるのは私の隊長としての器を否定されたら……。
……アカン。
「……あ、はやてちゃん本局から追加連絡で。はやてちゃんの端末に送ります」
「ありがと、リイン……どれどれ」
えーっとなになに。査察に来る人員は4名で、3人が隊長……しかもこれ最悪や。空も海も僻地からも来る。
って、本局第6武装隊、陸士201部隊、辺境警備部隊……。
この三部隊って確か……。あ、この人らって!
――side響――
エイミィさんと、アルフさんの挨拶もそこそこに。皆で車に乗ってフェイトさんのご実家と言われる場所へ到着。
さて、少しここで復習。今回行くにあたって、まず今車を運転してるのが、エイミィさん。そして、フェイトさんの使い魔であるアルフさん。そして、フェイトさんのお義母さんである、リンディ総務統括官。あとはクロノさんとエイミィさんの子供である双子のカレル君と、リエラちゃん。
よーし、今更ながら思ったことを。
安請け合いしすぎだろうが、俺の馬鹿!
「いやーそれにしても驚いたよー。フェイトが急に帰ってくるって聞いて、エリオとキャロ以外も連れてくるなんてー」
「そ、そうかな?」
「そうだよー。母さんから聞いてフェイトちゃんが男女連れてくるって聞いて驚いたもん」
「「あはは」」
ふと視線を横に向けると、奏と目が合う。
―――安請け合いしました。どうしよう?
―――や、それは仕方ないでしょう。嫌だった?
―――まさか。エリオもキャロも喜んでるし全然良いと思うけど。いざここまで来ると、ね?
―――そうだね。あ、もう着くみたいだよ?
そこまででアイコンタクトを終える。そして、車を駐車場へ止めて、お家の玄関の前まで行って……うん。エリオやキャロは映像越しでなら会ったことはあるけど、ここで合うのは初めてらしい。
「あ、そうだ。クロノ君も休み取ったらしくてね。今日明日居るってー」
「そうなんだ、良かった」
あ、そうなんだ。へー。忙しい立場なのに凄いなー。
なんて考えてたら、ガチャリと扉を開いて、玄関へ通されて。パタパタと向こうから人がやってきた。
「おかえりなさい。フェイト、そして、エリオもキャロも……あら?」
……まず目が合って思ったことを一つ。あ、優夜のお母さんを思い出しました。
何がいいたいかというと。色んな意味で頭上げられないタイプだこれ。
いや、違う。まずは。
「初めまして。機動六課で、フェイト隊長と同じ小隊員の緋凰響です」
「同じく。天雅奏です」
敬礼をしてから、直ぐに頭を下げる。すると。
「はい、初めまして。フェイトのお義母さんをしております。リンディ・ハラオウンです。よろしくお願いしますね? あと、こういう場です。気楽にして下さいね?」
「「はい」」
とりあえず、客間に俺とエリオの荷物を置いて。フェイトさんのお部屋にキャロと奏が寝るらしい。ちなみにクロノさんは夜に帰ってくるらしく。お二人の子供である双子ちゃんは今寝てるらしい。で。
リビングルームで、それぞれ会話なう……なう何だけど。エリオとキャロはアルフさんと会話で盛り上がり、奏はフェイトさんと、リンディさんと会話で盛り上がり。
こっちはと言うと。
「……いやあの、震離が変なことしてないか心配したんですが……いやーなんと言うか、すいません」
「そんなことないよ~。だって、色々情報流れてくるし。流君可愛いし」
馬鹿が横に情報流してました。なんて言えばいいんだこの場合。最初にミルクと砂糖の入った緑茶渡されたけど、エイミィさんの震離とメッセージのやり取りしてるって聞いて、もう味なんか分からなくなった。
あのバカ、なんで……つーか、ハァ!?
「他にアイツこの辺で連絡取ってるって人わかります?」
「美由希ちゃんかなー? 私も美由希ちゃんからの紹介でメル友になったし」
あ、頭が痛くなってきた。いやまぁ。交友関係増えるのはいいんだけど、お前話のネタが流の写真って……流が知ったら泣くぞ。そして、多分この前の件この人達知ってそうだしよー。
「まぁ、それもそうだけど、さ。何ていうか、見てて危なっかしいと思っちゃってねー」
「? 情報漏洩的な感じでしょうか?」
「ううん。そういうのじゃなくて……なんて言えばいいんだろうね。とにかく心配っていうこともあったんだ」
今一納得出来ないけど……まぁ、変に睨まれてるわけじゃないみたいで少しだけ安心。
「それにクロノ君から、君達の事聞いたからっていうのもあるかな」
「う゛、それは……なんというか。その節はどうもとしか……」
「あはは、責めてる訳じゃないから気にしないで」
あー、うん。出張の時はあんまり絡まなかったけど……なんというかやり難いなー。のらりくらりと躱されるというか、正面切って相手にできないというか。
まぁ、それもある意味当然なのかな? あのクロノ提督を支えてきた人だし。あのリンディさんが提督時代に一緒に仕事していたらしいし、それでかな? 隠すものも無いけど、下手な事したら一気にひっくり返されそうだわー。
「そうだ。響達に会ったら聞きたかったことがあるんだけど。いいかな?」
「答えられるものでなら、喜んで」
「良かった。で、聞きたかった事って言うと……響達が魔法に出会った時の事を聞きたくて」
ピクリと向こうで話してた奏が反応した。と言うより、皆の視線がこっちに集まったのを感じる。これは……いや、悪い方向に考えるのはよそう。
「いいですよ。そうですね……あれは――」
――――
思い出すのは10年前のあの日。秋から冬になろうとしていた晩の事。その日はたまたま母さんが出かけると言って、家を空けていて、優夜の家にお邪魔して、食事を頂いた後かな。家へ向かって帰った時にそれは起きました。
元々人通りの少ない道だったんですが。不意に真っ暗……というわけではありませんでしたが、周りから生き物の気配が消えて。不思議だなーとか思って歩いてたら。
空から人が降りてきました。一本の長剣を持った……女性が。それこそゲームに出てくるような騎士の格好をして。
そして、俺の前に降りてきて言いました。
「……君の魔力を貰いたい、最初に言っておく。すまない」
と。瞬時に背後を取られて拳が振り下ろされましたが。間一髪で拳を払って、一撃を与えて。
「……騎士だ、カッケー! でも不意打ちだー!」
と叫びました。
一撃を与えたと同時に距離を取った。今思えば完全に気を抜いてくれてたから出来たことでしょう。もしくは、子供がそんな動けるなんてっていうこともあったでしょう。
当時の俺は本心から騎士かっけー!ってなったと同時に。その一打で気づきました。
あ、勝てないこれ。
子供心ながらに、騎士……当時のシグナムさんとの実力差が分かりました。当時から母から色々教わって、優夜や煌とじゃれ合いと言う名の取っ組み合いしてましたし。
だけど、そんな人が曲がりなりにも本気? で来ていることだけはわかりました。今思えば本気だけど、力は全然だったと思いますけどね。
当時は優夜のお父さんも、うちの母も教えてくれる事はあっても手合わせで本気なんか出すことはありませんでした。
だからでしょうね。本気でやってみたいって欲求が何処かにあって。何か騎士が言っている言葉を半分くらい無視……というか、理解できなかったですけど。それでもはっきりと。
「よくわかんないけど。騎士様ー? 俺に勝ったら持ってけば?」
「……分かった。ならば、そうしよ……何!?」
不意打ちをされた、相手が獲物を持ってたという理由だけで、先に仕掛けました。踏み込んでの掌打。
だけど、弾かれるのを見越して、もう一度踏み込んで、手を腹部に添える。
「なんだ……?」
「持ってけ」
瞬間的に衝撃を通す。同時に騎士様が膝をついた。追撃として、落ちてくる頭……いや、顎を真下から蹴り上げる。無理やり後方へ下がろうとする騎士様を追撃。
それを見越してたから、剣を不安定な姿勢のまま振り下ろされたけど、それを払って。もう一度懐まで踏み込んで……。
そこで意識が落ちた。
――――
「……え?」
「えぇ、文字通り。多分ですけど、踏み込んだ時空いてた手で俺の後頭部でも殴ったんじゃないですか? 聞いてないからわからないし、10年も前のことですし、シグナムさんも覚えてないかもですけど」
リビングルームに集まった皆さんの目が丸くなるのを見て思わず笑ってしまう。奏にはこの事を再度伝え直してるとは言え、それでも可笑しいらしく笑ってる。ただ、エリオとキャロが当時の兄さんも強かったんだっていうのはちょっと違うと思うんだけどなーって。
「その後はですね……俺からシグナムさんが魔力を吸収した直後辺りに、うちの母さんが介入して救出したみたいなんですよ。オマケで優夜の父さんも来て、2人で何かしたみたいで、それ以上はしないで帰ったみたいです」
「ん? じゃあ響のお母さんと優夜?のお父さんも魔道士なのかー?」
ソファーの上で胡座で座るアルフさんが首を傾げてる。フェイトさんもそう言えばと首を傾げてるけど……あ、そうか。俺の母さんの事は前にちょっとだけ話したけど、優夜の件は全くノータッチだったなぁって。
「や、優夜のお父さんである愁夜さんとお母さんの優弥さんは魔力はありません。ただ……ただ。愁夜さんは達人と呼ばれるレベルの人です……それこそ、外歩いてた俺の気配が消えたからって槍持って飛び出す程度に」
そう伝えると若干引かれた。うん、俺もおかしいだろって思うし。魔力ありだからガキの頃いい勝負出来たのであって、無かったら勝負にならないどころか。完封されてたからなぁ……本当におかしいってあの人。
あ、やべ。思い出したら若干震えてきた。ミッドに行く前の最終試験って名目で俺と優夜と煌とで、三対一で勝負したら、マジで押しきれなくて、最終的に全方位から攻撃してようやく打ち勝ったってレベルだし……。
ん? 何か皆さんの視線が不思議そうに……って、あれか、俺が黙ったからか。こほんと咳払いをして。
「まぁ、その話は一端置いといて。目が覚めて母から何があったか聞かれて、説明したら慌てて当時魔力を既に保有していた俺達3人……震離は色々あって一端離れて。3人に伝えられました。勿論優夜の両親にも。魔力があるということ。ベルカ式と言う術式があって、シグナムさんはそれを使っていたと」
「待って、それじゃあ響のお母さんはベルカ式を知ってたの?」
小さく手をあげながら、目を丸くしたエイミィさんの言葉に同意するようにアルフさんも、リンディさんも頷いてる。
「えぇ、どういうわけか結局わからないままでしたけどね。まぁシグナムさんと出会ったから魔法について俺達は一定の知識を得ることが出来たんです」
今も思い返せば不思議な事ばかりだ。夜天の書の事を知ってたり、古代ベルカ式を只のベルカ式と言っていたり。本当に古代ベルカに関わってたかもしれないな。
それにしても、何か皆さんの表情が優れないけど。何故に? あ、そうか。
「別に恨むつもりも無いですし、実際負けて取られた。ただ、それだけです。だから気にしてませんよ」
それにその一件がなければ俺達……少なくとも男3人は魔法に関わることなかったかもしれないし……ってことは伏せとこう。せっかくの休暇を変な空気にするのも良くないし。
「うん、そうだね。それにしてもニアミスだよねぇー。だって皆の出身って山を隔てた隣町でしょう? もっと早くに捕まえてたら色々出来たかもしれないのにー」
うわぁーっと背伸びしながエイミィさんが少し悔しそうに言うのを聞いて思わず苦笑する。
「なるほど、それは確かに」
背後から男性の声が聞こえて、ピシリと俺と奏の動きが止まる。ギギギと変な音が出てるんじゃないかってくらいぎこちない動きで背後を見れば。
「や、皆。いらっしゃい」
「「お、お邪魔しておりますクロノ提督!」」
勢い良く奏と共に立ち上がって敬礼。理由はシンプルに一つ。気づいてなかったから。
「ハハハ、そんなにかしこまらなくていい。気楽にしてくれ」
「は、はは……了解です」
ちらりと視線を周囲に向けると、エリオとキャロは気づいてたみたいだな。しかし、どのタイミングでいらしたんだ? マジで気づかなかったし、挨拶してなかったしで申し訳ないわ。それにしてもこの一家ってよくよく考えなくても凄いよなー。
「しかし、君たちがここに居るという事ははやてには何か秘策があったのかな?」
エイミィさんの隣に座りつつ、にこやかに何か不穏なことを言うクロノさんに、俺と奏、フェイトさんの3人は首を傾げる。え、今六課に何か起きてんの?
その仕草に気づいたのか、俺達3人の顔を見ながら。
「え、機動六課は明日、隊長査察だろう?」
……えーっと。は?
――sideフェイト――
クロノから話を聞いて、3人で卒倒しそうな位気分が悪くなった。多分それの通知が行ったのは私達が出た直後か、その少し後か。どっちにしてもこれは……。
「……まぁ、休みの許可出して未だに連絡来ないってことは……きっと大丈夫でしょう、ねぇ!」
……響、声が震えてる。でもその通りだ。緊急事態になったら直ぐに連絡するように伝えてあるし、それが無いってことは……うん。大丈夫だと思おう。
なんて考えてると、廊下からパタパタと足音が聞こえてきて。
「「あ、お父さん。いらっしゃい!」」
「ゴフッ」
あ、お昼寝から起きてきたカレルとリエラの一言でクロノが倒れた。最近はずっと帰ってこれてなかったみたいだし……仕方ないのかな……?
「「え、エリオにーちゃんとキャロねーちゃんだー。いらっしゃーい」」
「おっきくなったねー」
「ほんとだ」
あぁ、エリオとキャロがカレルとリエラと仲良くしてる……ここに連れてきてよかったなぁって。何時もは通信越しでしか会えてないもんね。2人と遊んでもらっていると、ふと響と奏に気づいて目が合った。
暫く沈黙が流れる。正直いきなり知らない人が家の中に居ることに驚いたのか、それとも嫌がって泣くのか。色んな事が頭を過る。人見知りでは無いけど、だけど……。
4人の間に緊張が走った……様に見えた。
「「侍と芸者だー」」
「「なんでやねん」」
あ、心配なさそう。
――――
あれからエリオとキャロ。そして、カレルとリエラとアルフを連れて響とクロノが外へ散歩へ。カレルとリエラが遊びたいと言うのを聞いて、それじゃあ外で遊ぼうかと7人で行った。アルフがついていったのは響からの願いで、一人で万が一逸れたりしたらシャレにならないので、是非とお願いされてた。
アルフもまかせろーとついていってくれてよかったよ。クロノもたまには父親らしい事をって一緒に行ったし。
そして、残った面子はと言うと。
私、奏、母さん、エイミィ。
うん……碌な事にならない気がするよ……。
――side奏――
「さて、偶には女性だけのトークをしようじゃないかー!」
乾杯のノリで始まった女子会? この場を仕切るのはエイミィさん……というか、リンディさんはこういう事は……あ、あの方完全に話聴くだけの方向で固めてらっしゃる……。
キャロが居たらなー。もう少し……もっと軽い空気なのになー。響に引っ付いて遊んできますーって凄い年相応のテンションでついてったもんなー。なんかなー。
「さて、フェイトちゃん? 奏……いや、奏ちゃん?」
……不味い。私にまでちゃん付けになった。
「どっちが何処まで進んだか教えてー? 好きなんでしょ響の事?」
ボンッとフェイトさんが赤くなった。私も顔が熱くなったことから、意識してしまった……いやー、ダメだね。まぁ、私はここについてきたのは……きっとオマケだろうし。本当は響だけ連れてきたかっただろうし、仕方ないのかなー。
ちらっとフェイトさんを見たら、目がバッチリ合った。あれ、何か怒ってるような……? 何か手が伸びてきて……って。
「へいとさんいたい!」
何か突然両頬を引っ張られてるんですけど、なんですか!? パッと離してくれたけど……凄く痛いです。と言うかなんで?
「今、こう考えたでしょう? 私はオマケでここに呼ばれたって」
……バレてるー。
「い、いえ……そんな事無いですヨ?」
不味い……声が裏返ってしまった。そして、フェイトさんの目がどんどん細くなって来た。
「キャロのお願いされて着いてきたって考えてると思うけど……。キャロに奏を誘って欲しいって頼んだのは私」
……ん?
「えーっと……な、なんでまた?」
「……ゆっくりお話がしたかったからだよ」
……不味い、なんでそういうことを言うのか全然わかんない。なんでまた?
――――
その頃の散歩組は公園へ。
「あ、兄さん! カレルとリエラが走ってった!!」
「エリオ、それくらいで騒ぐ……うっそ、バリ早いんだけど!? ちょっとー!?」
「お兄ちゃん、クロノさん倒れたー!」
「あ、すまんキャロ、助けてて俺追いかけるからー! つかめっちゃ早いんだけどー!?」
「「あはははー」」
――――
――sideフェイト――
ゆっくりお話……と言うより、お仕事関係無しで話をしてみたかったっていうのは本当だ。六課で奏や響と話をしようとするとどうしても誰かの目があるし、2人も私を上司としてしか接してくれないし。
つい最近までエリオもキャロも頼ってくれなかった私だけどね……。
でも、私もこの展開は予想外だったけどね。
「文字通り今回ここに来たのは、響と奏と仕事以外でのお話がしたかったからだよ」
「……ぅ、でもあの……なんというか」
「エイミィも言ってた通り、気楽にして、ね?」
目を丸くしながら私をみる奏。視線を右、左と泳がせてから、ため息を一つ。そして。
「わかりました。この場合先輩とでも呼びましょうか?」
「呼びやすいならそれでいいよ」
ニコッと互いに微笑んだ。
「よぉーし、それじゃあ色々お姉さん達に話して貰おぅかー?」
お酒でも入ってるのかなっていう位のテンションで話すエイミィに言われるまま。奏がこれまで合ったことを話してくれた。それはいつか聖王教会で話してくれたあの内容と同じ事を。ゆっくりと懐かしむように。
――――
その頃の散歩組
「あ゛!? 二手に別れやがった!? マジカヨ!?」
「「ここまでおいでー」」
「くっそ、なんでこんな……クソぅ!」
――――
「……ということが合って、色々な部隊を回ってそして六課へ……って、どうしました!?」
慌てる奏の様子を見て、エイミィと母さんに視線を向けると、二人共ポロポロ泣いてた。
「……いや、なんというか。大変だったんだねぇって。まだ17なのに。だって皆まだ務めて5年でしょ? それなのに……うっ」
「え、あ、いや、その……でも巡り巡ってここに居るので結果オーライというか、ねぇ先輩?」
……先輩? あ、私か。
「そ、そうだよ! だから、母さんもエイミィも泣かないで?」
慌てて二人がかりで慰めて、少し時間がかかって。さて。
「よぉーし。涙も拭いたし。それじゃあ奏が惹かれたのもなんとなく分かった。ずっと一緒に居るんだもんね。その気持ちはよく分かる!」
グッとサムズアップするエイミィに照れ笑いを浮かべてる。私だってそう思う。ずっと一緒に居たら惹かれるよ、響には。
「それじゃあ、次はフェイトちゃん! フェイトちゃんは何が合って惹かれたの?」
「……うん、私はね――――」
そこからゆっくりと説明した。まず始めにエリオとキャロを何事もなく受け入れてお世話をしてくれた事。私が嫉妬して襲っても特に怒るわけでもなく普通にしてくれた事。流石にこの部分はエイミィと母さんから少し怒られた……と言うよりツッコミを入れられちゃったけど。
だけど、響達がスパイですという連絡を受けた事も話した。これには奏も苦い顔をしてた。だけど、私はそれで響を疑おうとしてしまった。だけど、エリオとキャロが悲しむと思った。けど、色んなことが重なって、響を連れて調査任務をすることになって。
そこで私は……私とエリオの生まれの事を話した。人造魔導師だという事を。
これには奏も驚いてたけど、直ぐに。
「それで何かが変わるわけはありません。今まで通りですよ先輩」
そう言ってくれて、改めて涙が出てきた。あの時もそうだったけど、響も奏も簡単に受け入れてくれた。正直すごいなぁとさえ思ってしまう。
そして、その後。私やなのはでさえ気づかなかった問題に早く気づいてた。そして、私達を信じてたからこそ解決するように待っていたのに、私たちはそれを裏切ってしまった。あまつさえ響の信頼を失うことをしてしまった。
響が謹慎になってから部隊は少しギクシャクした。そんな空気は嫌だと私は響の元を訪ねて話をしようとしたけど、聞いてもらえるはずもなかった。行動で示そうと模擬戦を申し込んで、戦った。話をしようと、想いを伝えようと。
そして、驚いたんだ。あんなに強いって、あんなに戦えるって。
その時かな。私が響を意識し始めたのは。その後だったよね。遺跡で流の事が合ったけど、奏から宣戦布告されたのは?
確かに、私は奏と……幼馴染の皆と比べると付き合いは浅い……1年どころか、半年もない。だけど……。
「わかります。だからこそあの人の周りには人が集まる。ドン底に落ちても這い上がれるだけの力があるんだと思います」
その通りだと思う。実際に優秀だと思う。だけど、それ以上に人を引き寄せる何かを響は持ってる。
聖王教会で話を聞いた時、涙が溢れて止まらなかった。陽の光を浴びる場所ではないにしろ、それでも得た地位を奪われ、失意の底に落ちても、周りの助けを得てなんとか這い上がってきた。
「……っていうことがあって、私は響に惹かれたのかな……って、母さん!? エイミィ!?」
さっきと打って変わって、号泣してる。なんで!?
「……奏ちゃんの話で過去を知って、フェイトちゃんで六課での話を聞いて。ますます大変な事になってたんだなぁって。お姉さんは感涙して、もう」
「私も歳ね……最近涙脆くって」
慌てて2人で宥める。
――――
その頃の散歩組
「「捕まっちゃったー」」
「……アルフさん何時もこんなんですか?」
「……誰に似たのか分からないけど。すごいでしょ?」
「まじすごいっす……身体強化はなしって決めてたんスけど。途中使ったろうかと思いました」
「……私も狼フォーム解禁しそうになったなーって。帰ろっかクロノも死んでるし」
「そうしましょ。双子ちゃんは楽しかった?」
「「楽しかったー」」
――――
なんとか2人を宥めて、遅くなったけど皆で乾杯。色んな意味が含まれてるけど、私としては久しぶりに帰ってきたことを込めて乾杯。
「……正直軽い気持ちで聞いてごめんね二人共?」
「「いやいや」」
申し訳なさそうにいうエイミィの言葉に同時に否定する。その仕草がお互いに面白くて。笑ってしまった。
本当に思うよ。もっと早くに出会っていたらもっと良い関係を結べてたんだなって。だからこそ。
「改めて。負けないよ奏?」
「コチラこそ。負けませんよ先輩?」
カチンともう一度2人で乾杯する。まだ勝負は始まったばかりだから。
その後、響がクロノを肩で支えながら帰ってきて、エリオとキャロとアルフで、カレルとリエラを連れて来たけど、皆クタクタになってたのが可笑しくて皆で笑ってしまった。
後書き
長いだけの文かもしれませんが、楽しんで頂けたのなら幸いです。ここまでお付き合いいただき、感謝いたします。
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