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ソードアート・オンライン ~白の剣士~

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武装換装

4勝4敗1分–––––

それが現在までの十番勝負の戦績である。
こうしてみれば一進一退の攻防にも聞こえるかもしれない。
この十番勝負、形式は様々で釣りや崖登り、はたまたウルトラクイズなどといったものまでやっていた。

しかしこれを戦闘、即ち1対1のデュエル形式にとなるとシオンの戦績はこうなってくる。

全5戦中–––––





1勝3敗1分(・・・・・・)

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「ハァッ!」

「フッ!」

シオンの上段からの振り下ろしをシュタイナーは右拳で受ける。
シュタイナーはすかさずボディを狙うものの、寸前のところで躱され、乱暴に振り抜かれた左足を貰った。

「チィッ!!」

体勢がやや崩れながらも左を振るう。
それを剣で受け止めるも、あまりのパワーにシオンの身体は小島の端まで吹っ飛ばされた。

「体勢崩してもコレかよ」

剣を握っていた手にはまだ痺れが残っており、軽く手を振りながら悪態をついた。

「やっぱ、あの馬鹿力をどうにかしねーとな・・・」

「どうした?あんな啖呵を切っておいてその程度かい?」

「ハッ!馬鹿言え。お前こそ、鈍ったんじゃねぇか?拳に全然キレがねぇぞ?」

シュタイナーの挑発に軽口で返すシオン。ゆっくりと歩を進める2人の実力は拮抗していた。

「いつもの覇王の拳はどうした?」

ここまで覇王槍拳流を繰り出していないシュタイナーに対し、シオンは疑問を投げかけた。
いくら実力があるとは言え、出し惜しみして勝てるほどの相手ではないことは分かっている。にもかかわらず使わないのはシオンにとってあまりにも不自然だった。

「使わないよ。使う必要がない・・・」

「その理由は?」

「僕はね、僕を殺してくれる人を求めている。この戦いに応じたのも、君が僕を殺してくれるのを期待したからだ。だから本気を出さない、覇王の拳も使わない」

冷淡に答えるシュタイナーにその場にいた者は声も出なかった。
今まで見てきたどんな表情にもない感情を無くしたような冷めた目付き、しかし彼から滲み出る強者としてのオーラはいつも以上だった。
ヒリつく空気、再び詰める距離。
重くのしかかるプレッシャーに立たされたシオンの顔は遠目からはよく見えなかった。

「なるほどな、いやぁ俺も随分甘く見られたもんだねぇ。その程度で倒すとか・・・」

しかし見えずとも分かる。今の彼は–––––

「屈辱にも程があるぜ」

明らかにキレていた。

「お前が何と言おうと勝手だがな、そんなふざけた願いのために俺は剣を振るうつもりはない」

「ならどうする?ここで降参する?」

「それこそふざけた話だ。降参はしねえ、させねえ!本気で来ねぇってんなら、お前を本気にさせて完膚無きまでに叩きのめす!!」

シオンは一気に間合いを詰め、切り替えた両手剣でまるで殴り飛ばすかのように薙ぎ払う。
シュタイナーに受け止められるも、すぐ様短剣に切り替え素早く切り刻む。
ガードした腕に付いた切傷エフェクトにも目もくれず更に攻め込む。

「オラッ!!」

今度はハンマーでシュタイナーの左腹部に思い一撃を入れ、そのまま吹き飛ばす。

「ぐぅッ!」

苦痛に顔を歪ませ、地面を転げ回る。

『金剛毘沙の能力の1つはウインドウの操作を必要とせず、武装の変更が出来ることだ。武器変更のロスをほぼゼロにすることで怒涛の攻撃が可能となる、高速武装換装機構』

「まさに燃え盛る炎」

「すごい・・・」

一部の隙を与えない怒涛のラッシュに観戦しているキリト達は息を飲む。

「これならもしかしたら!」

「もしかするかもしれません!」

期待を口にするリズとシリカ。
他の面々も口には出さないものの、目の前の光景に期待を寄せずにはいられなかった。
このままいけばシオンは勝てる、そう思っていた。

「・・・・・」

一部の者を除いて。

「おかしい・・・」

そう呟いたのはシノンだった。その言葉にリズベットが不思議そうに尋ねた。

「おかしいって、どういうこと?」

「確かにシオンの攻撃はすごい。あれをどうにかするのは容易なことじゃない。でも・・・」

「でも?」

「シューは一度もカウンターを使っていない」

同じことを思ったのか、シノンの言葉に付け加えるようにエリーシャが続けた。

「それに《聖槍》も・・・」

「確かに使用に時間のかかる技だけど、それでもあそこまで一方的な展開になるのは考えづらい」

「わざと負ける気なの?」

「いや、多分それはないよ。アスナ」

「ユウキ?」

アスナの疑問の声にユウキはキッパリと否定した。

「シュー兄は確かに無謀な事には首を突っ込まないけど、一つだけ確かなことがある」

そう言うユウキの顔は、何処か悲しそうな表情だった。

「自分の思いだけは曲げたことはない」

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

いつからだろう、(バーデン)に飲まれるようになったのは。
はじめはバランスよく成り立っていた。彼が僕を、僕が彼をそれぞれ支え合っていた。
しかし、そのバランスは突然崩れ去った。
彼の力が徐々に強くなっていき、それに比例するように僕の力は弱まっていった。
そしてシオンと対峙したあの日、僕の身体は完全に所有権を奪われた。




魂ってのは基本的に1つの身体に対し1つだ。だが、世の中には俺たちのように魂を複数持つものもいる。
その中には入れ替わっている事に自覚がなく、その間の記憶は入れ変わった側にしか残らない場合もある。
そう言う意味では俺たちはかなり特殊なのかもしれない。
身体の所有権の割合は人によってランダムであり、5:5の場合もあれば1:9の場合もある。
俺たちは最初、5:5でバランスを保っていた。
だが、ある日を境にクソガキの力が弱まっていったのを感じた。
そしてあの野郎と殺し合ったあの日、アイツは身体の所有権を放棄した。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「オラッ!」

右装備全壊、左装備半壊。

「チィッ!」

左腹部裂傷及び打撲
HP損耗率62%、なおも継続中。

戦闘データ解析–––––

「焔星剣流、一の太刀・・・」

解析完了–––––

「昴ッ!!」

ガンッ!!

「なッ!」

斬撃から繰り出されるはずのない音にシオンは困惑した。
刃は掴まれ、タイミングは完全に読まれていた。

「ここまで我慢してやったんだ。いい加減俺も混ざっていいだろ?」

「お前ッ!?」

「こっから先、はッ!」

掴んだ刃を無理矢理引っ張り、目の前に来たシオンの顔面を思い切り殴り飛ばす。
小島の巨大樹に叩きつけられたシオンの意識は一瞬飛び、受け身を取れずそのまま地面に崩れ落ちた。

「第2ラウンドだ!!」

フラフラと立ち上がったシオンはニヤリと笑みを浮かべ剣を突き立てた。

「ハッ!上等じゃねぇか!」









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