ある晴れた日に
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624部分:桜の枝を揺さぶってその二
桜の枝を揺さぶってその二
「それは」
「だからファッションなんだよ」
しかし野本はあくまでこう言うのだった。
「何か兵隊さんの服にしてみたくてな」
「それでその格好なんだ」
「そうだろ。いいだろ」
笑いながらまた言う。
「こういう格好もよ」
「ううん、それは」
桐生は口篭るだけだった。しかし他の面々は。
「はっきり言って最悪だよな」
「相変わらず趣味悪いな、おい」
「何考えてるのよ」
「冬でもないのにコートなんて」
こうした評価だった。やはりかなり悪い。
「まあこれが野本っていうか」
「わかりやすいけれど」
「あんまりにもセンス悪いから」
「相変わらずボロクソだな、おい」
流石にここまで言われては野本も機嫌を悪くさせた。
「何なんだよ、そこまで悪いかよ」
「はっきり言って有り得ないわよ」
今度は咲が言ってきた。
「今のあんたの服はね」
「ちっ、御前まで言うのかよ」
「そうよ。悪い?」
「ああ、悪いよ」
咲のそのファッションを見ての言葉だった。見れば彼女も。
「そのソフトバンクの帽子はいいよ」
「これは外せないわよ」
得意げな言葉である。やはり咲にとってホークスは絶対だった。
「何があってもね」
「それはいいよ。ただな」
「ただ?」
「野球帽にゴスロリはねえだろうがよ」
見れば今の咲は黒をベースにしたかなりクラシックなデザインである。まさにゴスロリと言うに相応しい服装をしているのである。
「それは何でもよ」
「そんなに悪いっていうの?」
「しかも何だよ、リュックかよ」
それも背負っているのだった。
「黄金のよ」
「これは御利益があるのよ」
「御利益!?」
「そう、御利益がね」
それがあるというのである。
「だって金色じゃない」
「趣味悪いよな」
「そうよね」
「この金色は」
まるで下着の如き金色である。リュックのそれではない。
「どう見てもこれは」
「滅茶っていうか」
「それもかなり」
「それが御利益があるのよ」
しかし咲はにこりと笑ってなおも話す。
「黄金は幸せだし。それに」
「それに?」
「黄色じゃない」
金色は黄色である。これは言うまでもない。
「それも幸せだしね。だからいいのよ」
「幸せの色」
「それでそのリュックなのかよ」
「咲が幸せになるんじゃないのよ」
ここでその言葉が強いものになった。
「咲じゃなくてね」
「未晴ね」
「やっぱりそうなるのね」
五人がそれをすぐに悟った。
「それでそのリュックかよ」
「何かって思ったけれど」
「ファッションとしても好きだけれど」
ここではその悪趣味さが出てはいた。やはり咲の服の趣味は悪い。
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