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人徳?いいえモフ徳です。

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五十二匹目

ポップコーンを売り始めて二月ほど経った。

中々に売れ、貴族や商人にも広まったらしい。

が、それ以上に庶民に売れている。

まぁ、安いしね。

なので最近では人を雇ってもいる。

「で、どうなの? シュリッセル家は?」

「特に変わりなく、かな」

学園の食堂で、昼食を取りながら近況を話し合う。

「そうよねぇ。シュリッセル家って浪費しないものね」

「寧ろ余りすぎてすり寄ってくるアホに困ってる始末ってお婆様が言ってた」

「で、そのお金を更に増やしつつあるお坊っちゃまはどうなの?」

「それってお金の使い道聞いてる?」

「そうよ」

「うーん………」

特に使い道があるわけじゃないしなー。

宝石は錬金してるし、これと言って食べ物に執着が有るわけでもない。

美容とかどうでもいいし、服なんて機能重視だ。

「狐君。金を溜めるだけでは不健全だぞ」

「シャクティに賛成。経済はお金を回してこそ。
ぬいちゃんがずっと持ってても意味がない」

「はっきり言うね……」

でも本当に使い道ないんだよなぁ。

「僕お小遣いもらってないし」

「え? でもぬいちゃんお金結構もってるよね?」

「シラヌイが普段使ってるお金は全部スライム狩りの分よ」

くーちゃんの言うとおり普段使うお金って殆どスライムの討伐報酬だし。

それでも子供のお小遣いにしては結構な額なんだけどさ。

ま、まぁ…貴族子女としては少ない方なんだろうけどね。

「ポップコーンの利益はどうしたのよ?」

「お婆様はポップコーンの利益は僕のだって言ってるけど、あれは家に納める気だったからねぇ。
そういうくーちゃん達はどうなの?」

「私に使われるお金は多いのだけど、私はあまり使ってないわ。
中身の無い話なら貴方達としてるほうがいいからお茶会もしないし、わざわざ自分からドレスを買ったりもしないわ。
お父様やお祖父様には少し心配されてるけど」

「メリーちゃんは?」

「私も同じ。あ、でも本は買う」

「私もあまり使わないぞ! 金のかかる趣味はもってないからな!
それに剣なら狐君がくれたこれがあるしな!」

とシャクティが腰に下げた刀を叩く。

この間刀身を最新型と入れ換えた。

「ほら、みんな同じじゃないか」

「「「持ってる桁が違う!」」」

「え━━…………」











その日の昼過ぎ。

放課後に王宮に来ていた。

「という訳なのよボーデン。シラヌイに何かしらお金を使わせる方法は無いかしら?」

「いや言いたいことはわかるが…」

王宮の中の、ボーデンの執務室。

そこのソファーに四人で座っている。

「そもそもシラヌイは金のかかる宝石やら武具やらは自分で作っちまうからなぁ」

「僕もそう言ったんだけどねー」

「ふーむ……。金のかかる趣味…。娼館はシェルム先生が許さねぇだろうしなぁ」

「行くわけ無いじゃん」

「だよなー。じゃぁ土地を買うとか…。いや待て。シラヌイ、お前どれくらい金持ってる?」

「さぁ? ポップコーンの売り上げはお婆様が管理してるし。そもそも僕もそのお金は家に納めるつもりだったから把握してない」

「なら先にタマモ様に聞いてこい」

何故か乗り気なくーちゃんに連れられて、今度はお婆様の執務室へ向かう。

「おー? 何じゃお主等? テンションの差有りすぎじゃが?」

要するにくーちゃん達三人が僕をつれ回しているので女子三人と僕のテンションに差がある。

「タマモ様、シラヌイって幾ら持ってるの?」

「んー? なでそんな事を聞くんじゃクーよ」

「今日のお昼にお金の使い道の話をしたから、さっきボーデンの所に行ったのよ。
そしたらボーデンがシラヌイが幾ら持ってるのかを確認してこいって」

「ふむ………確かにのぅ……」

お婆様が俺をジーっと見つめる。

「浪費はいかんが若い内から節約し過ぎるのものぅ……」

「ですがお婆様。僕は現状で満足してますよ?
研究費だって実質ゼロですし」

僕がやってる魔法の研究は金のかかる物ではない。

「そーじゃのぅ……」

お婆様が持っていた羽ペンを置き、腕を組んで考え始めた。

「シラヌイ」

「はい」

「お主の金じゃが、現状なら事業一つくらいならできなくも無さそうな程はある」

「いや、僕まだ六歳ですよ?」

「前世含めればもう成人じゃろ」

「そうではありますけど…」

「三日やろう。何か面白い物を考えておくのじゃ。
失敗してもよい。何かやって見せよ」

「はい」

お婆様の執務室を出て一言。



「いつの間にか趣味から事業の話に変わってたんだけど?」

「「「たしかに‼」」」
 
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