戦国異伝供書
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第五十一話 関東管領就任その九
「このまま」
「左様ですな」
「それでは諸港の方々とも力を合わせ」
「そのうえで」
「小田原に向かいます」
これが政虎の考えだった。
「よいですね」
「そしてですね」
直江が言ってきた。
「鎌倉では」
「はい、鶴岡八幡宮で」
そこでと言うのだった。
「関東管領にです」
「なられますね」
「そこで」
「やはりです」
直江は政虎に強い声で述べた。
「関東管領になられる場は」
「あの場しかないですね」
「はい、鶴岡八幡宮でなければ」
どうしてもというのだ。
「なりません」
「左様ですね」
「では小田原を攻める前に」
「まずはです」
何といってもというのだ。
「鎌倉に入りましょう」
「それでは」
政虎も頷いてだった、そのうえで。
彼は上杉の軍勢に関東の諸勢力の兵達も加えていきつつそのうえで武蔵を南下していった。そして相模に入る頃には。
その数は十万になっていた、それで斎藤も驚きの声をあげた。
「何と、十万とは」
「これまでになるとは」
北条も驚きを隠せない顔だった。
「思いませんでしたな」
「全く以て」
「越後を出た時は二万」
「それが増えに増えてですからな」
「今や十万」
「まさに関東管領の軍勢ですな」
こう言ったのは本庄だった。
「東国の仕置きをする」
「全くじゃ」
「この大軍ならば」
柿崎も強い声で言った。
「小田原の城も」
「攻め落とせるかも知れませぬな」
「左様ですな」
柿崎は斎藤にも応えて述べた。
「これだけとなれば」
「はい、そしてこの大軍がですな」
「鎌倉に入り」
そしてというのだ。
「殿は関東管領になられる」
「その日は間もなくです」
本庄は思い極まるものを感じつつ言った。
「相模に入りました故」
「さて、北条方は鎌倉からも去ったといいますし」
北条は敵の話をした。
「ならですな」
「このままですな」
「鎌倉に入り」
「そこで殿は」
関東管領に就任するとだ、斎藤も感極まる声であった。実際に北条家は籠城するばかりで出て来ることはなかった。十万の大軍は北条家の領内を素通りするだけだった。
その間政虎は十万の兵を手足の如く自由に使いこう命じていた。
「民達そして街や田畑にはです」
「一切ですね」
「そうです、手出しをしてはなりません」
こう命じていた。
「例え何があろうとも。それは武士のすることではありません」
「だからですか」
「若しその様なことを行えば」
民や街、田畑を傷付ければというのだ。
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