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ある晴れた日に

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621部分:やがて来る自由の日その十一


やがて来る自由の日その十一

 見れば下着姿のまま手を後ろに縛られ口には轡がされている。そのうえで身体のあちこちから血を流し腫れ上がらさせられている。
 男はその上からだ。彼女の顔も腹も脚も次々に蹴る。その度に鈍い音がし血が出たりもする。
「僕の奴隷なんだよ。それが偉そうにするなんて」
「おい哲也」
 ここで部屋の扉の向こうから声がしてきた。
「何かあったのか?」
「あっ、パパ」
 暗いその部屋のなkで扉に顔を向ける。
「何もないよ」
「そうか」
「おもちゃで遊んでいただけだよ」
 そしてこう言うのだった。
「それだけだよ」
「そうか。いつも通りなんだな」
「うん、そうだよ」
 本当に何でもないといった返事だった。
「それだけだよ」
「そうか、ならいい」
 彼もそれで納得するのだった。
「それならな」
「そうなの。それでパパ」
「今度は何だ?」
「またおもちゃ探して来るね」
 ここでも何気ないといった言葉であった。
「またね」
「ああ、好きにするといい」
 ドアの向こうの吉見は優しい声で彼に告げた。
「いいか、人間はな」
「いつも言ってるよね、パパが」
「そうだ。自由なんだ」
 よく言われることである。確かに自由は必要なものである。しかし吉見はここでこんなことを部屋の中にいる我が子に対して言うのだった。
「自由とはだ」
「それもいつも僕に言ってくれてるよね」
「そうだ。何をしても許される」
 こう言うのである。
「それが自由だ」
「そうだったね。自由は何をしてもいいこと」
「そうだ」
 まさにべ平連の時代の愚か者達の言葉である。実際に小田実という男はこの言葉をある場所において堂々と宣言していたこともある。
「だからだ。御前は自由を楽しめ」
「今まで通りだね」
「そして好きなことをしろ」
 こう続けるのだった。
「いいな。人間としてだ」
「人間は自由を楽しむものだよね」
 今度はナイフを出していた。それで女の子の手や足に少しずつ刺していく。そのうえで刺したその場所から赤いものが出て来るのを見ていた。
「人間だけが」
「そうだ。だから人間はそれを楽しむ権利がある」
「自分のしたいことは何でも」
「法律はだ」
 その弁護士としての言葉である。
「何の為にあるかだ」
「自由を守る為だよね」
「その通りだ。その為にはどんな解釈でもしていいのだ」
 これが彼の法律への考えなのだった。弁護士である彼のだ。
「私は権威だ」
「法律のね」
「その私がテレビや雑誌で言えばだ」
「どんなことでも通るね」
「今度あの雑誌に書く」
 その何気ない言葉は続く。
「週刊木曜日にだ」
「パパってあそこの編集委員の人達と仲がいいよね」
「同志だ」
 まさにそうだというのだ。
「私の永遠のな」
「それじゃあパパ」
 哲也は彼の言葉を聞きながら述べていく。
「この娘だけれど」
「楽しんだ後でか」
「またパパに回してあげるね」 
 言いながら今度は。その上に覆い被さるのだった。
「またね」
「楽しみにしているぞ」
「そうしておいて。それじゃあこの娘に飽きたら」
 相変わらず醜く弄びながらだ。彼は言葉を続けて出していく。
 
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