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戦国異伝供書

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第五十一話 関東管領就任その三

「だからでおじゃる」
「そうされますか」
「左様でおじゃる、あのうつけ殿も」
「尾張を攻め取られた後は」
「麿の家臣にするでおじゃる」
「左様ですか」
「真の大うつけなら隠居させるでおじゃるしな」
 やはり命は取らないと言うのだった。
「そうするでおじゃる」
「ですか」
「とにかく麿は甲斐はどうでもいいでおじゃる」
「尾張ですな」
「そちらに向かいやがては」
「上洛を」
「果たすでおじゃるよ、ではでおじゃる」
 ここまで話してだ、義元は板垣にあらためて話した。
「武田殿への返事はでおじゃる」
「はい、是であると」
「伝えて欲しいでおじゃるよ」
「わかり申した、では」
「縁戚の話はでおじゃる」
 この話はとだ、こう話してだった。
 今川家も武田家との申し出をよしとした、晴信は戻って来た甘利と板垣からその話を聞いて笑みを浮かべて言った。
「これでよしじゃ」
「これで、ですな」
「当家は憂いがなくなりましたな」
「東海からも関東からも」
「攻められることはないですな」
「うむ、心おきなく信濃を治められて」
 そしてというのだ。
「越後から来る長尾家と対せてな」
「やがてですな」
「美濃にも向かえますな」
「その手筈が整った」
 両家との盟約でというのだ。
「では後はな」
「はい、北条殿に姫様を送られて」
「太郎様に、ですな」
「今川家から姫様を迎えられる」
「そうされますな」
「今川殿は北条家から姫を迎えられる」
 嫡男氏真が氏康の娘を妻に迎えるというのだ。
「そうなる、これでな」
「三家の盟約が成りますな」
「ここで」
「そうじゃ、しかしよく考えたものじゃ」
 ここで晴信は家臣達の中にいる山本を見て言った。
「お主もな」
「はい、当家のことを考えますと」
 山本は晴信に確かな声で答えた。
「やはりです」
「北条、今川とじゃな」
「手を結ぶ、しかもです」
「強くじゃな」
「そうすべきであり」
「三つの家がそれぞれ婚姻を結びか」
「その強さを確かなものにすべきと思いまして」
 それでというのだ。
「この度のことお館様に申し上げさせて頂きました」
「成程のう」
「それで、ですが」
「うむ、今はな」
「両家との縁戚の話を進めていきましょう」
「そちらもな」
「内の政も大事ですが」
「外についてもな」
 こちらもというのだ。
「だからじゃな」
「進めていき」
「どちらも万全にしてこそな」
「お館様の望まれる様にことを進められます」
「その為の手筈じゃな」
「左様であります」
「そうであるな、しかし縁組をしていないとはいえ」
 晴信はこうも言った、ここで。 
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