魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~
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第7章:神界大戦
閑話17「絶望の淵で」
前書き
視点変わって司達の話。
=司side=
「ッ……!」
あれから、どれだけの時間が経ったのだろうか。
数時間?数十分?それとも、それ未満?
時間の概念から外れている神界じゃ、体感時間しか当てにならない。
その体感時間において、私はかなり長く感じていた。
「っ、はぁあああっ!!」
闇を塗り固めたような触手を避け、即座に砲撃魔法を放つ。
同時にジュエルシードからも魔力弾を放っておく。
「(阻まれる。なら……!)」
だけど、それは瘴気による障壁に阻まれた。
間髪入れずに次の手を打つ。まずは用意しておいた転移魔法で転移。
「光よ、闇を祓え!」
〈“Sacré clarte”〉
障壁の死角から砲撃を放つ。
「まだ……!」
直撃とまではいかないけど、当たった。
その反応としてなのか、のたうち回るように瘴気の触手が振り回される。
それを何とか回避しつつ、さらに用意していた術式を解放する。
「圧し潰せ!」
〈“poussée”〉
五つのジュエルシードをアンラ・マンユを包囲するように展開。
そして、広範囲に強力な重力を掛ける。
神界だからこその出力で、アンラ・マンユを抑えつけた。
「これで!」
〈“Sacré étoile filante”〉
その上から、残りのジュエルシードから砲撃魔法を放つ。
20個のジュエルシードによる、強力な砲撃魔法の連発だ。
瘴気で防いではいるけど、防ぎきれていないようだ。
でも、少しすれば重力ごと吹き飛ばされるだろう。
そんな力が集束しているのを感じる。
「(だから、その前にもう一手打つ)」
シュラインを眼前に構え、魔法陣を構築する。
それに重ねるように、霊術の陣も構築。二つで一つの術式にする。
「(……きっと、以前戦った時よりも強くなっているんだろうね。でも、この神界において、私はそれをさらに上回った)」
アンラ・マンユの力は明らかに以前より強かった。
あの時は瀕死の私でも抑えられる程だったけど、今は全力で拮抗していた。
何かを守る必要がないために、こうして優勢になれた訳だけど、確かに強くなっていた。
「祈りは天に、夢は現に。想いを束ねて形と成せ」
詠唱を始める。未だに重力魔法と砲撃魔法は止んでいない。
アンラ・マンユは抑えつけられたままだけど、内に溜まる力が高まっていく。
「霊と魔をここに。二重の光を以て闇を祓え!」
霊力と魔力を同時に扱う事は並の苦労で済んだ。
でも、それらを混ぜ合わすというのは非常に難しかった。
優輝君すら負担を掛けずに使えなかったのも良く分かる。
……だからこそ、一つの術式にだけに集中力を割く。
「祈祷顕現、霊魔祈祓!」
〈“闇祓いし天巫女の祈り”〉
重なり合った二つの陣が輝く。
光が溢れ、それが大きな極光となってアンラ・マンユを撃ち貫いた。
障壁で防ごうとしたみたいだけど、容易くそれも貫いていた。
「……倒した、かな?」
苦戦はしていた。
途中までは千日手のように思える程、砲撃と瘴気の触手の応酬が続いていたから。
でも、“負”のエネルギーを集めた存在とは言え、そこに自我は存在しない。
なら、“意志”によって限界を超えられる私の方が有利だ。
その事に気付いてからは、こうして常に優勢に立って戦えた。
「……よし」
闇は消え去っていた。間違いなく先程の極光で消滅出来たようだ。
「本当に、以前より強くなってた……」
〈見立てによりますと、以前の戦いより遥かに強いですね。それでも、マスターの遠い先祖が戦った時には劣りますが〉
「……その時の天巫女って、凄い強かったんだね……」
今のアンラ・マンユよりも強いのを、たった一人で倒した当時の天巫女……。
私も強くなったと思っていたけど、さらにその上を行くんだね……。
〈はい。ただ、当時はほぼ相討ちでしたが〉
「それでも倒した事には間違いないよ」
私の場合は、神界の法則がなければ千日手だったんだから。
「(とりあえず、奏ちゃんか緋雪ちゃんを助けに……)」
こちらの戦いは終わった。
休む暇はないため、すぐにでも二人を助けにいこうとする。
「ッ……!」
―――“Barrière”
その瞬間、悪寒が私を襲った。
咄嗟に控えておいた魔法を展開。障壁を張る。
「嘘……!?」
信じられなかった。
不意打ちとして飛んできた攻撃は防げた。それは問題ない。
でも、その攻撃と放った存在が信じられなかったのだ。
「なんで?今、倒したはず……!?」
〈確かに反応は消えていました!……突如出現したとしか思えません!〉
そこには、倒したはずのアンラ・マンユが佇んでいた。
距離はある。だけど、そんなのは関係ない。
今、確かに倒したのだ。“闇”の気配は消えていた。なのに、復活した。
「あそこまでやって復活……もう一回相手をする事になるなんて……!」
そこまで言って、ふと引っかかった。
“もう一回”、その言葉が気になった。
そもそも、さっきのアンラ・マンユはどうやって現れた?
「……いや、まさか……?」
〈マスター?〉
「復活したんじゃなくて、もう一体存在した……?」
そうだ。あのアンラ・マンユも、邪神イリスが生み出した。
彼女はアンラ・マンユを“簡単に複製できる”と言いきった。
……それなのに、なんで私は一体だけだと信じていたの?
「……最悪、これだけで終わらないのかもね」
複製。つまりコピー。それが二体だけに収まるとは限らない。
もしかしたら、まだまだいるかもしれない。
それらを、私は倒し続けないといけないのだ。
「……やるよ、シュライン。ここで負ける訳にはいかない」
〈……はい……!〉
諦められない。ここで諦めたら、何のために優輝君を逃がしたの?
諦めなければ、“負け”はないんだから、私はここで倒れる訳にはいかない!
=奏side=
「くっ……!」
〈“Delay”〉
避ける。駆ける。躱し、反撃を放つ。
周囲に味方はゼロ。司さんと緋雪は遠く離れてしまった。
敵である“天使”の数は軽く百人を超える。
それに加え、神も援軍として数十人はいた。
合計すれば千に届くかもしれないわね。
立ち止まれば、たちまち身動きが取れなくなるでしょう。
「ッ!」
光の槍や剣が四方八方から襲い掛かる。
私が地面と認識している場所から生えてくる事もある。
地面という概念もなく、認識が曖昧な神界だと、障害物などないのと同じなのね。
「ぐっ!?」
攻撃を躱し続けていると、急に身動きが取れなくなる。
神の誰かが能力を行使したのでしょう。
「(ガード、スキル……!)」
〈“Syncopation”〉
神の能力は複雑に見えて単純な部分があるのを、ここまでの戦いで理解した。
この抑えつける力も、単に抑えつける概念をぶつけているだけに過ぎない。
しかし、重力魔法ならいざ知らず、これだと転移魔法では逃げられない。
そのための、“位相ずらし”。
私という存在そのものを、空間や座標から“ずらす”。
効果は全く長持ちしないとはいえ、これで一時的に神の力から抜け出せる。
「(神界でなら、長持ちさせる事は可能。でも、そうすると対応される)」
身動きできない状況から脱し、移動魔法でその場から大きく離れる。
そう。空間や座標をずらした所で、神達はそれにすら対応してくる。
だから長時間使っても意味はない。
……裏を返せば、短時間ならこうして有効な手になる。
「ふっ!ッ!」
〈“Delay”〉
至近距離から繰り出された光の刃を紙一重で躱し、同時に“天使”の首を斬り飛ばす。
実際に首は飛ばなかったけど、殺気の籠った一撃なために怯ませた。
その隙に服の一部を掴み、移動魔法に巻き込む。
……今更なのだけど、神や“天使”もほとんどは服を着ているのね。
とこよさん達が相手にした神は、裸だったみたいだけど。
「ぐっ!なぁっ!?」
「っ……!」
移動魔法が終わった瞬間、服を掴む腕を引き寄せる。
当然、服に引っ張られて“天使”は体勢を崩した。
間髪入れずに二撃程切り裂き、私と位置を入れ替える。
直後、襲来する神達の攻撃。私は、その“天使”を盾にした。
「ッ、これで、10人目……!」
盾にしつつ攻撃も叩き込み、吹き飛ばした所を転移してから下に向けて叩きつける。
一撃一撃に“意志”を込め、ここまで攻撃してようやく倒せた。
多数が相手でも、一人に的を絞って攻撃し続けないといけないのは、相当きついわね。
「(後、何人……!?)」
攻撃後の隙を狙った一撃を、辛うじて躱す。
閃光が炸裂した際の爆風で、体が吹き飛ぶも、すぐに体勢を立て直す。
追撃してきた“天使”の刃を防ぎ、その“天使”を次のターゲットにする。
「っづ……!?」
移動魔法で周囲からの攻撃を躱し、“性質”による妨害も位相ずらしで抜ける。
そのまま“天使”に攻撃を放つも、カウンターで反撃を食らってしまう。
「(オーケストラは既に発動済み。これ以上は、気持ちの持ちようなのだけど……)」
これ以上の加速を、私はできない。
加速の極致である魔法は既に発動してしまっているからだ。
“意志”の持ちようで、さらに上に行けるのでしょうけど……現実的じゃないわ。
「(別の魔法を……神界だからこそできる、事を……)」
自分の使える魔法、霊術を振り返る。
何か使えないか、打開策はないか、攻撃を躱しながら考える。
そして、一つの魔法に思い当たった。
「(これなら……!)」
思い立ったが吉日。
目の前に“天使”が迫ってきたのを皮切りに、魔法を発動させる。
「ガードスキル……!」
〈“Harmonics”〉
ハーモニクス。私の能力の元ネタにおいて、分身するスキル。
分身体も分身する事ができるから、実質無限に分身を増やせる。
デメリットとして、元に戻る際に分身の記憶もフィードバックする。
殺されたり、重傷を負った記憶もフィードバックされるため、多用しすぎると元に戻った瞬間に脳が負荷で焼き切れてしまう。
「(でも、神界なら……!)」
しかし、ここはそんな本来の法則が通用しない神界。
デメリットを“ないもの”として扱えば……!
「数には数」
「……ここから、反撃させてもらうわ……!」
元々、単騎で戦う必要はなかった。
こちらも数を増やして対抗すればいい。
幸いにも、分身一人一人にも“私”としての自我はある。
鼠算式に戦力を増やせば、十分に対抗できる……!
=緋雪side=
「ぐ、ぅあっ!?」
私の二倍分の力で、振るったシャルが押し切られる。
……当然だ。相手は、偽物とはいえ私二人分なのだから。
「(身体能力はまるっきり同じ。違う所といえば、理性が狂気に振り切れているのと……後は、利き手とかが反対な所かな)」
ここまで戦って、大体が分かった。
身体能力、耐久力、その他諸々はほとんど私と同じだ。
鏡に映した私をそのままコピーして複製したのだから、当然といえば当然だけど……。
「(弱点も同じなんてね……!)」
不幸中の幸いか、この偽物たちはちゃんと“殺せば”倒せる。
神や“天使”と違って、心を挫く必要はない。
でも、私を殺すには、普通の人間より手間がかかる。
性質としては吸血鬼が近いのだけど、頭と心臓を潰さないといけない。
一度お兄ちゃんに殺された時は、生物兵器として弱っていたから、首を切り飛ばすだけで済んだけど、幽世で鍛えてからは確実に両方を潰さないといけなくなった。
「っ……!」
―――“Zerstörung”
振るわれたいくつもの大剣を跳んで避け、複数の“瞳”を握り潰す。
……心臓と頭はどちらも捉えられなかった。でも、これで怯みはする。
「ふっ!」
爆発の煙幕の中を突貫。偽物の内一体の心臓を手刀で貫く。
そのまま貫いた体を振り回し、反撃を受ける前に蹴り飛ばす。
その体は、別の偽物の攻撃によって切り裂かれた。
「(理性がなく、相手が複数なおかげで、上手く行ってる。これなら……!)」
理性の有無によって、その分技術の差が出てくる。
つまり、一見コピーした私の偽物でも、実際には私本人には劣る。
一対一なら確実に勝てるぐらいには、差があるんだ。
「(本体は……!)」
迫りくるいくつもの偽物の攻撃を避ける。
避けて、偽物の一体を盾にして、砲撃魔法で一掃する。
倒しきれていなかろうと、ずっと構っていても仕方がない。
先に偽物を生み出した神を倒さないと、いつまでもこの戦いは続く。
「(私と同じ姿をしていた事から、多分“性質”は鏡に関すると思うけど……)」
“破壊の瞳”で狙われる。
すかさず、狙っている偽物との間に、別の偽物を挟む。
間一髪。その偽物が代わりに爆発した。
「っ、くっ……!」
まさに暴力の嵐。いくらなんでも、その場に留まるなんて出来ない。
腐っても私と同じ身体能力なんだ。
まともに受けていたらたちまち押し潰される。
「ぐっ!しまっ……!?」
そんな事を考えたからか、空中から叩き落された。
受け身は取ったけど、立ち止まった事には間違いない。
狂気に満ちた偽物達が、私へと殺到する。
「っづ、ぁ……!?」
何撃かは逸らして防いだ。でも、多勢に無勢だった。
一撃、剣の直撃を避けたけど拳が直撃した。
吹き飛ぶ体に、別の偽物の大剣が叩きつけられた。
辛うじてシャルでガードしたけど、次は間に合わない。
「ッ、ぁあああああああ!!」
―――“霊魔爆炎波”
迫りくる大剣。魔力弾。砲撃。
それらを回避する事も、防御する事も叶わない。
出来るとするならば、迎撃のみ。
それを、私は躊躇なく選んだ。
「っ……!ッ、ふっ!」
「ぐっ……!?」
それは、ほぼ自爆みたいなものだった。
霊力と魔力を混ぜ合わせる霊魔相乗を、攻撃に転用。
力のうねりを爆発させ、迫りくる魔法ごと、偽物達を吹き飛ばした。
私自身もその爆発に巻き込まれ、吹き飛ばされていた。
でも、吹き飛びながらも体勢を立て直し、別の偽物の攻撃を躱しつつ蹴りを入れた。
「そこかぁっ!」
〈“Scarlet Arrow”〉
その時、偽物に紛れる神を見つけた。
すかさず魔法の矢を放つ。
だけど、その矢は鏡によって反射された。
「(読み通り!)」
当然、そんなのはとっくに承知。
あれは牽制でしかなく、私は既に転移魔法で間合いを詰めていた。
死角を取り、勢いよくシャルを振りぬく!
「ッッ!!?」
“ギィイン!!”と、大きな音が響き渡る。
同時に、私は仰け反るように後退した。
「(魔法だけじゃなくて、物理攻撃も反射するの……!?)」
鏡だからって錯覚していた……!
私の剣が届く前に鏡が割り込み、その瞬間、私は同じ力で押し返された。
重さも鋭さも、全く同じ力が返って来たのだ。
だから、私は仰け反る程に後退した。
「ちっ……!」
追撃しようにも、偽物に妨害される。
思わず舌打ちしてしまうが、思考を休める暇はない。
「ふっ!」
挟み撃ちを狙われる。それを、私は敢えて前進する。
前の偽物の攻撃を避けつつ、すれ違う。
後ろにいた偽物が間合いを詰めてくるが、今すれ違った偽物を魔力弾で突き飛ばす。
私を狙っていた後ろの偽物の攻撃に巻き込まれ、吹き飛んだ偽物は切り裂かれる。
「ッ!」
〈“Zerstörung”〉
転移で他の偽物から逃げつつ、“瞳”を二つ、掌に収める。
そして握り潰し、先程の偽物を倒しきる。
“瞳”はそれぞれ頭と心臓を対象にしていた。
ここまで複数となると狙いが甘くなるが、一人に絞れば十分狙える。
「(どうする!?偽物の対処は問題ない。でも、物理も反射する相手を、どうやって倒せばいいの!?)」
この場において、一番の問題はそれだ。
全ての攻撃を反射する相手を、どうやって倒せばいいのか。
あらゆる攻撃を反射するなら、それはもはや無敵ではないのか。
「(……そんなはずない。問答無用で攻撃を反射出来るのなら、この神界でも無敵に近い。……それなら、邪神イリスに洗脳される事もないはず……!)」
全て反射できるのなら、洗脳すら反射ないし弾けるはずなんだ。
なのに、こうして邪神イリスの配下になっていると言う事は、何か“穴”が、弱点とも言えるものがあるはず。
「ッ……!」
偽物に包囲される。躱すのは不可能と判断。
すぐさま斬りかかって来た一体の攻撃を躱しつつ、すれ違いざまに一閃。
包囲を抜けた所を、別個体が襲って来た。
「ぐっ……!」
躱せないし、シャルを振り切った隙がある。
咄嗟に片腕に強化を集中させ、斬られずに防ぐ。
でも、勢いに吹き飛ばされてしまう。
「こ、のっ!!」
吹き飛ばされながら体勢を立て直し、追撃に対して一閃を放つ。
追撃は阻止され、すぐに間合いを取った。
「はぁっ!!」
やる事は変わらない。
偽物達の攻撃を凌ぎつつ、本体の神を倒す。
神本人も強力な攻撃を仕掛けてくるけど、肉薄は可能だ。
後は、反射の弱点を見つけるだけ……!
「あははははは!!」
「そー、れっ!!」
「っ……!」
戦闘中ずっとだが、偽物達の笑い声が響いている。
狂気に満ちた偽物達は、何がおかしいのかずっと笑っている。
……いや、狂ってた当時の私も笑っていたけどさ。
「うるっさい!!」
〈“Zerstörung”〉
さすがにうるさい。
笑い声をかき消すように、大爆発を起こす。
辺りが爆風に包まれる。
「(あそこ……!)」
爆風の一部が反射されたのを、魔力で感じ取る。
「ッ!」
〈“Alter Ego・Schöpfung”〉
即座に術式を構築。
戦闘中も並行して構築していた甲斐もあって、すぐに術式は完成した。
そのまま四体の分身を出し、それらを転移させる。
転移先はもちろん本体である神の近くだ。
「ッ、はっ!」
「(………なるほど……)」
目的は、神の反射の特徴を掴むため。
神が一喝するように力を放出し、同時に分身達の攻撃は反射された。
だけど、見えた。反射のカラクリが。
「(遠距離攻撃はそのまま反射。物理はやっぱりちょっと違ったんだ)」
予想通りなのか、“鏡”としての性質が強いらしい。
ゲームなどでも、魔法などは反射されたりするが、あの神も同じなのだろう。
もしくは、ゲームなどでの性質にあの神の“性質”が引っ張られているのか。
まぁ、それはどちらでもいいだろう。
問題となるのは物理攻撃の方だ。
あれも、同じように反射しているかと思ったけど、そうではなかった。
「(ベクトルの反転による反射なら、物理攻撃も効かなかった。でも、あれは飽くまで“鏡”として反射している。だから、攻撃自体は通っている)」
分身達の渾身の一撃は結局反射されて弾かれていた。
でも、神も同じように仰け反っていた。
まるで、衝撃までは反射出来なかったように。
「(……つまり、私が捨て身で攻撃すれば、ダメージは通る!)」
反射してなお、返しきれない攻撃を叩き込めばいい。
その際、反射で私の方もダメージを負うけど、まぁそこはしょうがない。
これで、どうやって倒すかは分かった。
「(攻略法はこれでいい。後は……)」
偽物の集中で、分身達が倒されてしまった。
でも、対処法は分かっているから、やる事は一つ。
「(偽物達の攻撃を凌ぎつつ、捨て身で攻撃する!)」
そのためにも、まずは偽物の包囲を何とかしないとね……!
後書き
Sacré étoile filante…サクレ・クラルテを流星群のように放つ魔法。かなりの魔力を使うが、威力・殲滅力共に高い。
闇祓いし天巫女の祈り…霊力と魔力を合わせた司の今の切り札。どんな攻撃にも変化させる事が出来、今回は砲撃にした。名前は“祈り”と“悪魔祓い”のフランス語。
Syncopation…音楽用語より。空間座標や位相を一時的にずらすオリジナルガードスキル。ごく短時間しか効果は続かないが、効果中はあらゆる攻撃が効かない。
霊魔爆炎波…霊魔相乗を応用した攻撃技。今回はほぼ自爆技だったが、本来は遠距離技として扱える。かなりの威力を誇るが、力の集束が分かりやすく、避けられやすい。
“鏡の性質”…緋雪が相手にしている神の“性質”。相手を映し出し、偽物を作ったり、攻撃を反射したりと言った事が出来る。本編では確定していないが、緋雪による“性質”の推測は完全に当たっていた。
今回は比較的文字数が少なめですが、ここまで。後は本編に繋げます。
緋雪の考えた攻略法ですが、要は自分もダメージを負うような攻撃でごり押せばいいという訳です。遠距離攻撃はともかく、直接的な攻撃は反射した事で相殺しているのですから、跳ね返された所で相殺しきれない攻撃にすれば、そのまま通じます。
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