狂女
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第二章
「実にお美しい方だった」
「そうだっやのですね」
「だが結婚されてな」
「フィリップ様でしたね」
「あの方と結婚されたが」
「それからですか」
「あれは急なことだったのは知っているな」
その時のことはとだ、老侍従は侍女だけでなく自分の周りにいる若い者達に話した。
「そうだな」
「はい、何でもです」
「身体を動かされてから冷たい水を飲まれて」
「そして、でしたね」
「その時にでしたね」
「まさに急にだ」
その時のことをさらに話した。
「亡くなられた、そうしてからだ」
「あの様になられたのですね」
「何でもフィリップ様がお休みだと思われて」
「亡くなられたと思わずですね」
「ご遺体の羊と共に国中を彷徨い」
「よくご遺体に話しかけられてですね」
「お食事もお休みも共だったとか」
このことは若い者達も知っていて話した。
「そうしてでしたね」
「前王様に王宮に連れ戻されてですね」
「今に至るのですね」
「そうだったのですね」
「思えばご夫君がおられた時からだ」
結婚した時からだというのだ。
「フィリップ様は享楽的な方だったからな」
「何でも随分女性がお好きだったとか」
「そう聞いていますが」
「実際にそうであられて」
「その時からですか」
「女王はフィリップ様を愛し過ぎておられたのだ」
遠い目になってだ、老侍従は話した。
「そしてだ」
「そうしてですか」
「激しく嫉妬されてです」
「女性の方に手をあげられたり鋏で髪の毛を切られたときいていますが」
「事実だったのですね」
「全てな、そしてだ」
そうしてというのだ。
「あの方は次第に心を病まれてだ」
「フィリップ様が亡くなられ」
「そして遂にああなられた」
「そうなのですね」
「そうだった、しかしあの方についてだ」
老侍従は周りにこうも話した。
「スペイン王でもあられる皇帝は言っておられるな」
「はい、今もです」
「先日も言っておられました」
「女王を頼むと」
「ご自身が王宮におられない間も」
「皇帝は立派な方だ」
皇帝、彼はというのだ。
「女王、ご自身のお母上をな」
「大事にされていますね」
「何かあるとすぐに見舞われますし」
「王宮を出られて帰られた時は必ずです」
「常にそうされています」
「非常にお優しい方だ、我等に対してもそうであるしな」
こう周りに言うのだった。
「それでだ」
「女王も見舞われていますか」
「その様にされますか」
「これからも」
「そうされますか」
「そうだ、ならば我々もだ」
皇帝に仕える自分達もというのだ。
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