ある晴れた日に
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588部分:誰も寝てはならぬその六
誰も寝てはならぬその六
「公園でお花切り裂いてて」
「実際にやってたっていうのかよ」
「それを」
「うん。それでね」
さらに話す彼女だった。
「妖気っていうのかな、あれ」
「妖気って」
「それなの」
「それ、はっきりと感じたのよ」
顔は青いどころではなくなってきていた。まさに白だった。雪の如き生気のない白い顔になってそれで一同に話していくのである。
「もうね。それでわかったのよ。未晴が」
「近くにいるって」
「そいつがまさか」
「ねえ」
ここで奈々瀬はその白くなってしまった顔で皆に言ってきた。
顔をあげている。その表情は憔悴しきり狼狽さえしているものだった。
「無理よ、やっぱり」
「おい、無理って」
「何がよ」
皆今の彼女の言葉に怪訝な顔で返したのだった。
「何が無理だっていうんだ?それで」
「それだけじゃわからないけれど」
「警察だって動けないんでしょ?」
彼女がまず言うのはそのことだった。
「警察だってあいつを捕まえられないんでしょ、確か」
「そうだね」
彼女の今の言葉に応えたのは竹山だった。
「父親が弁護士でしかも怪しいとんでもない団体とつながってるから」
「その連中が味方にいて警察に圧力かけるからよね」
「嫌がらせというか職務妨害みたいなことをしてね」
そうしたことができるのが現実なのである。
「それでだけれどね」
「それにあいつの妖気って」
次に言ったのはこのことだった。
「無理よ、あんなの相手にできないよ」
「大丈夫よ」
「私達がいるのよ」
「だから安心しろよ」
静華も凛も春華もこの時は普段の奈々瀬と対していた。
「別に焦ったりすることないって」
「証拠掴んでそれでとっちめてやったら」
「未晴の仇取れるんだよ」
「だからそんなのできないわよ」
しかしなのだった。奈々瀬は普段の奈々瀬と違っていた。明らかにであった。
「あんなのの相手って」
「あんなのって」
「そんなにやばいのだったの」
「私、嫌よ」
その蒼白の顔で明日夢と茜に言い切った。
「っていうか無理よ、相手なんかできないわよ」
「ってちょっと」
「あんた何言ってるのよ」
「未晴の仇どうするんだよ」
咲以外の五人の仲間達がすぐにその奈々瀬に言ってきた。
「あんた未晴のこと大事なんでしょ」
「小さい頃からずっと一緒だったじゃない」
「うち等よ。そうだっただろ?」
「けれど」
しかしだった。奈々瀬のその現状は変わらなかった。表情は強張り今にも割れてしまいそうだった。どう見ても普段の彼女とは違っていた。
「その未晴も」
「未晴も?」
「何だっていうのよ、今度は」
「もう。無理じゃない」
そして言ってしまったのだった。
「あんな風になったら。もう無理よ」
「無理っていうのね」
「もう。あれじゃあ」
今度は横からの恵美の言葉に言うのだった。
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