魔法少⼥リリカルなのは UnlimitedStrikers
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第22話 機動六課のある休日、その中の仕事人。
前書き
幕間を見ていると、ちょっと楽しめるかも知れません。其上で楽しんで頂けたら幸いです。
――私には何が出来るだろう?
ここの所、ずっと考える。高町隊長の話を聞いた時、あの遺跡に居た人は、私の体――、いや、あの人の体だったものだ。それを聞いた時酷く動揺した。勝手に作って捨てたウィンドベルの人の関係者だと思って動揺した。
だけど、何故だろう。初めてあの人を見た時。あの人と目を合わせた時、胸の奥……心が熱くなった。
あの日の晩。ギルとアークが私にずっと声を掛けてくれた。掛け続けてくれた。だけど、何故かずっと涙が溢れて止まらなかった。わからないはずなのに、知らないはずなのに。
だけど、不思議と――あの人を見て、悟った。私の技術は私のものではない。この際、そんなことはどうでもいい。
ギルとアークを、大剣と長銃を見て思う。きっと、こうじゃないだろうと。
今まで一緒に居たこの子達にも話していない。だけど、自然と気づいた。私の中にはまだ知らない領域があると。なら、私の得意分野。戦える部分はなんだ?
これがわからない。そのせいで、最近は周りに迷惑を掛けているのが分かる。かと言ってこれを相談出来ることなのだろうか? 形どころか、その一端もつかめていない、見えても居ないものを、相談なんて……。
「流! 前見ろ前!」
「ッ!?」
声が聞こえたと同時に、突然目の前に空が映る。先程まで自分が居た場所を蒼い閃光が通り抜けた。
そうだ、今は。
「し、失礼しました!」
私の腕を引っ張る緋凰さんを見て、自然と言葉が出る。
「謝罪は後。作戦は覚えてるな?」
「だ、大丈夫です。やれます」
「おう、昨日煽ったせいか、ティア達すげぇ気合入ってるからな。じゃ足止め頼む」
空から降りて、適当な木々の間で別れる。
いけない、今は4対4のチーム戦の最中だ。緋凰さんから伝えられた作戦。それは。
(流、コチラの用意はすんだよ。キャロとティアを補足。向こうからは気づかれてない。位置情報送るね)
(了解です。コチラも初めます)「アーク、カートリッジフルロード」
天雅さんからの念話を切り、完全に修復されたアークを構える。カートリッジが宙を舞うと同時に。そして、真上に向かって飛翔し、私の目の前に魔法陣が展開される。位置情報を参考に視線と魔法陣をそちらへ向ける。
『スターズ5より各員へ。これより指定座標へ散弾状の砲撃を放ちます』
『『了解!!』』
『次いでライトニング6より、指定座標へ直射砲をタイミングをずらして撃ちます』
淡々と連絡をする。改めて銃口を向け――
「撃て」
[All right.]
トリガーを引くと同時に、反動に襲われる。砲撃が魔法陣へ当たったと同時に広範囲の散弾となり前方の林へ降り注ぐ。全て着弾した後。左前方の遥か先の高い木の上から白銀の光が奔る。地面に着弾する直前、わずかに白銀の光が止まった様に見えたが、直ぐにそれも無くなる。
そして、試合終了を告げるブザーが鳴り響いた。
――side響――
「あ~~~~く~~~~や~~~~し~~~~い~~~~!」
目の前で膝を抱えてゴロゴロ転がるスバルを……見下す。冗談抜きで見下す。今回の模擬戦。少し趣向を変えて、俺をガードウィング、流をセンターガードに、震離をフロントアタッカーに変更してティア達と戦った。
昨日言った通り、既にタイマンでエリオを捕まえるのは少し骨が折れた。捕まえたと思ったらスバルとスイッチ。そして、一撃を貰い、更に食い込まれてしまった。ここまでは良かった。震離をティアとキャロの射撃で足止めてる間に俺の元へ来たわけだし。すぐに体制を立て直して、2人より前へ出ようと移動を開始。だが、この後がまずかった。
流と奏による二重砲撃がエリオに直撃……。空に上っている流の姿が見えてたのか、その砲撃は紙一重で交わしたけれど、その回避先を奏の砲撃が走りダウン。これは2人の誘導と言うか良いコンビネーションだった。
次に、センターガードである流と同じ高度へ登ったスバルの砲撃。必殺のディバインバスターを放つ。だが、流は前を見ているようで、どこも見えてなかった。慌てて、流の腕をとって地上へ下ろす。声を掛けたと同時に、スバルの迎撃へ。
それぞれ真っ直ぐ移動する。ウィングロードを発動しているスバルと高度をあわせる。間もなく接敵する前に、スバルはリボルバーナックルを振りかぶる。ぶつかる直前に、盾代わりに構えていたスバルの左手首の袖をまず左手でつかみ、同時に右手で、スバルの防護服の左襟を掴む。そのまま足を止めて、スバルに背を向けると同時にに、体勢を低くしてそのまま地面に向かって投げた。
派手に土煙が上がり、煙が流れるとそこには目を回したスバルがそこに居た。その間に模擬戦も終了、ダウンしたスバルをおぶって、流にエリオを運んでもらって。
そして、今。ダウンした2人も復活して、なのはさんからの評価。途中までのスイッチや、震離を押さえたことは評価されてたけれど、スバルに関しては。初めて模擬戦した時と同じ手段で倒されてると指摘されて、理解した瞬間。一番悔しそうに地面を転がってる。
それを今、見下してみている。
「どんな気分だ、お? 一番最初と同じ手段で、今度はダウンした気分は?」
「ぅぁー、最後までシールド張って突っ込めばよかったー、悔しいー」
相変わらずゴロゴロしてる。いい加減汚れ付くぞ? そう考えてると、気がつけば珍しく4隊長が揃ってる。なのはさんが小さく咳払いをしたと同時に転がってたスバルもピタッと止まり、元いた位置へ座り直す。
「はいっ。今朝の訓練と模擬戦も無事終了。お疲れ様っ」
けど、普通にバテてるティアナ達には返事を返す体力も残ってない。まぁいつもに比べて、今日の訓練は特別で、いつも以上にきつかったからな。
「でね? 実は何気に、今日の訓練が第2段階クリアの見極めテストだったんだけど」
「えぇ!?」
……正直に言おう。抜き打ちって怖いよね。しかも終わってからとか余計に怖いよ。まぁ、俺には関係ないから笑っていられるけどね……っと。これ以上は良くない。ヴィータさんに睨まれた。
「どうでした? 隊長さんと教官さん?」
「合格」
「はやっ!」
うん、普通に動きがいいんだもん。ダメとか言われたら逆に俺が聞くわ。
「ま、こんだけみっちりやってて問題あるようなら、大変だってこった」
「あ、あはは……」
ヴィータさんの一言で、4人が苦笑いを浮かべてる。まぁ、ここ数日のティアナ達の伸び方は凄かったもんなー。気づいてないかもしれんけど。昨日伝えたからか、今日は特に気合入ってたし、良かったかもな。だけど、もう応用の段階へ入ったのか……流石に凄いと思うよ。
「わたしもみんな良い線いってると思うし。じゃぁこれにて第2段階終了っ!」
「やったぁ~っ!」
おぉ、座ってたのに一気に立ち上がってガッツポーズとか取ってる。まぁ、いよいよ応用とかになるとうれしいよね。俺もそうだったし。
「デバイスリミッターも一段解除するから、あとでシャーリーの所に行ってきてね?」
「明日からはセカンドモードを基本に訓練していくからな」
「はいッ! ……ん?」
元気よく返事をした後、間ができて。
「……え、明日?」
スバルよ、首を傾げながら言うなよ……。ん? 明日だと? え、そのパターンって。
「あぁ。訓練再開は、明日からだ」
「今日は私たちも、隊舎で待機する予定だし、みんな入隊日からずっと訓練浸けだったしね」
「はぁ」
ライトニングの隊長ズの言葉を受けて、気の抜けたような返事。しかし、隊長陣の顔見てると、成長してるが分かるからか、凄く良い表情だ。そのうち俺なんか目じゃないほどのレベルに達するんだろうなぁ。
「ま、そんなわけで。」
「今日はみんな、一日お休みですっ! 街にでも出かけて、遊んでくるといいよ」
「はーい」
ん~、この流れだと奏達は自由待機かな。さすがにFW全員休ませるわけには行かないだろうし。
「お兄ちゃん。一緒にでかけましょう!」「何処か連れてって下さい!」
おや。ハラオウン隊長の様子が……? ってか絶対にBだろう! ランクが人から、金色夜叉に進化とか無い無い。ってかやめて!? そしてエリオにキャロよ。そんな眩しい目で俺を見ないでってかBボタンキャンセルが! やめて、バルディッシュ構えないで! シグナムさんもなんでレヴァンティン手元に出してるんすか!?
「ごめんね、エリオ、キャロ? 私達は休みじゃないよ」
心のなかでBボタンを押してたら。奏が助け舟を出してくれた。マジでありがとう。やっとBボタンが動いたよ。現にハラオウン隊長は落ち着いたし。シグナムさんも残念そうな顔しないで下さい。もう俺じゃ勝てないんだから。
「え、でも」
「さすがに隊長達が居るからって、FW全員放出したらアウトでしょう」
奏だけじゃなくて、震離も助け舟出してくれた! マジでありがとう!
「ま、そういう事だ。とりあえず楽しんできたらいいよ。と言うより、そもそも俺調査任務あるし」
「……分かった」
……ごめんよ本当に。今度行列の出来る上手いカフェに連れてくから。そこのチョコパフェおごるから。正直、かなり心が痛くなりました。もうヤダ。
そして、何だかんだで。
「……んだよ、優夜達休みかよ」
文字通りで、事務員のシフト表を見ていると、希望休でも入れたのかなと言うくらい、4人の休みが被ってる。いいなぁ、また皆でなんかうまい飯でも食べたいもんだ。さて、と。
「震離も奏も流もどっかに行ったし、さっさと行くかね」
……いけない。口に出したら凄く寂しい人に見え始めましたよ。ぼっちでも時間潰せば寂しくないし。
さっさとギンガと合流するかぁ。面倒だわぁ。
――side流――
私も自由待機、だそうで。事務仕事を片付けようとしましたが、ヴィータ副隊長に止められ。
訓練シミュレーターの点検をやると言えば、高町隊長にちゃんと休んでねと言われ。
あまり役に立ててないということをしっかりと受け止めながら。六課の近くにあるベンチに座って、ギルとアークの内部データを展開する。
最近の私の動きと、先日の叶望さんを襲おうとした動きを出して、弱い場所を見ようと思ったんですけれど。
「キュク?」
「……こんにちは。フリード」
いつの間にやら、ルシエさんのパートナーのフリードがそこに居ました。
「……置いて行かれたんですか?」
「キュク~」
ちゃんと竜を見たことがないから、ちょっと気になる。手を伸ばせば、興味を持ってくれたのか近づいてきて……。
「フリード~どこ~?」
「キュク、ル~」
一瞬ルシエさんの居るであろう方向を見て、私に視線を向ける。
「ごめんね。時間取っちゃったね。いってらっしゃい」
「キュクル~」
そう言うと一礼してから、声のする方へ飛んでいった。流石は竜というか、人に慣れているんだなと。
そのままもう一度展開して、ここ最近の動きを確認すれば……穴だらけの上に、同僚に刃を向けるという事をしている自分が嫌になる。
しかし、波の音と、カモメの声が心地いい。気を抜くと一気に眠ってしまいそうだ。
――――
「――――」
遠くで声が聞こえる。どうも眠っていたらしい。
何処まで何をしたっけ? いや、駄目だ憶えてない、そもそもした憶えもない……最悪。
「――――、―――? ――――じゃん、にゃがれ!」
……!?
その名前で呼ぶのは……六課には居ない。慌てて目を開けるけれど、あぁ。日光が目に当たって眩しくて……軽く目を閉じる。で、目が慣れて、その声を掛けた人物を見ると。
白いワンピースに、可愛らしいバックを掛けて、赤いツインテールの……
「フレア!?」
「やっぱりにゃがれだー」
私の隣に座ってニコニコと笑う。というかフレア?
「……どうしてここに居るの?」
「……?」
――――
……とりあえず分かったことが、フレアの家って言うよりフレイさんの住んでる家が一応六課の側にあるそうで。今日は幼稚園がそうりなんとかでお休みだから、一人で遊びに行こうと思ったらしい。ただし街へじゃなくて海沿いのこっち側に来た。それで散歩がてらぶらぶらしてたら、ベンチで座ったまま眠る人がいて、近づいてみたら私だとわかって喜んだそうで。
はい、突っ込むところは数点あるけど。それよりも。
「1人でこんな所まで来たら危ないよ?」
「ぅ……ふふ、くすぐったぁい」
フレアの頭を撫でる。女の子が……私より小さい子がこんな真昼間に散歩して、熱中症で倒れたら洒落にならない。見たところ水筒なんて持ってないみたいだし。
「でもこんな所までなんで? 1人で散歩っていう距離じゃないと思うよ?」
「うん、きどーろっかって所ににゃがれが居るって、お母さんから聞いたからー」
「フレイさん……お母さんは知ってるの?」
「うん、本当は今日お休みだからって一緒に出かけようとしてたんだけど……なんか、お仕事のほうが大変になったって、今日慌てて行っちゃった……」
「そっか」
そうでしたね、一応フレイさんも管理局員なんでした。そういえば本局でフレイさんの名前出したら繋がるとか言ってたけれど……そう考えるとフレイさんって、もしかして。
「ねぇフレア?」
「ん~? なぁに?」
「お母さんの……その、階級とかって分かる?」
「……かいきゅう?」
あ、駄目だわかってない。うん少し説明してダメだったら諦めようかな。
「なんていうかその、お母さんはどれだけえらいとかそう言うの」
「ん~、あ、上から数えたほうが早いよ~」
「……そ、そっか」
しまった。きちんと調べておくべきでした。え~と、落ち着いて私。そう思った瞬間。
『流』
「はい!? へ、あ……震離さん」
なんか目の前にモニタが開いたと思った瞬間、血相を変えた叶望さんの顔が。
『流ごめん。私と奏、ちょっと出ることになった。や、もう街まで出てるんだけど。ゴメンだけど出撃とかあったら駆けつけるけど。1人にしてごめんね』
「……え、あ……はい」
それを聞いた瞬間、ちょっとさみしくなる。そうか、今六課に隊長陣と私しかいないのか、と。
だけど。
『こちら、ライトニング04。緊急事態につき、現場状況を報告します』
叶望さんとの通信中にまた別の通信が開く。そして、ルシエさんからの通信の内容は。モンディアルさんと訪れていた『サードアベニュー』の路地裏で、レリックの入ったケースを発見したというもの。しかも、ケースを持っていたのは小さな女の子だそうだ。
現在は意識不明で、話だけだけど、その女の子がレリックを運んでいたのは間違いない。高町隊長から通信が回り、私はヘリに乗って合流する指示が下された。少女を見る為に救急スタッフも向かうようで、診るまでわからないがほぼ問題ないだろう。で問題が一つ。
「フレア、ちょっとごめんね」
「わ、わ、お姫様抱っこ!」
うん、文字通りフレアをお姫様だっこして、宿舎に向かって走る。そして、身体強化で一気に宿舎の屋上を訪れて。
「すいません。トライトンさん! この子ちょっと預かっててください。終わったら私が家まで送り届けますので!」
「え、え、流さん!?」
「にゃがれまたねー」
突然の訪問に驚いて、洗濯物を握ったままで固まるトライトンさん。はい、いきなりでごめんなさい。そして、フレアを下ろして、六課の隊舎にまた向かう。
急いで屋上へ向かおうとしたときに。
一瞬で、身が凍った。いや頭が冷えた。
―――いや見た瞬間。体が竦んだ。
通路の角から出てきたその人を見て。なぜかわからないけれど、体が強張る。対して角から出てきたその人は私の顔を見て笑った。初対面で、いい人と思わせるような笑みなのに。
何故? ――どうして?
「あら、はじめまして。風鈴流空曹? 私の名前は――」
知っている。氷輪の二つ名を持ち本局所属だと言うのに、地上をメインに動く地上屈指の実力者の1人。
アヤ・アースライト・クランベル三等空佐。
なのに、何故私はこんなに怯えているんだ?
――side優夜――
――同じ頃。廃区画を走る自動車が一台いた。
「最悪だな」
「そうだね。こりゃ……直ぐに紗雪を……いや、あの子ならきっとこっちに向かってる筈。煌、何時でも行けるよね?」
「もち。一応隠してたデータ全部引き出して、連結、展開してる。六課に着く頃には完成するよ」
後部座席でモニターを展開して、2年掛けて集めたデータを組み合わせてる煌。助手席では、紗雪から送られてきたデータを大急ぎで纏めてる時雨。運転する俺も内心焦ってる。なんて言ったって。一発で響と奏を縛っている鎖を外して、助けられるカードを手に入れたんだからさ。
だけど――
「やっぱりおかしい」
「ん?」
時雨が不意に呟く。
「だって、今まで優夜の情報網に掛からなかったのに、潜入してまで調べてる紗雪でも掴めなかったのに、何で急に……」
悔しそうに、歯を食いしばりながら言うのを横目にしながら。
「そうだな。時間を掛けて、信憑性の確認をとりたかったけれど、時間がない」
「……分かってる」
まぁ、その手札を切って、相手がどう動くかは分からない。もしくは分かっててやったかもしれない。どういう意図があってかは知らないけども。
「とりあえず、廃墟街通ってるからバレたらアウトだが……いいよな?」
「当たり前だろ」「何を今更」
煌と時雨からの力強い返事に、つい笑ってしまう。ショートカットとはいえ、立ち入り禁止地区だもんな。ここ通ったほうが六課までは早いんだよなー。なんて考えてたら。
『いきなりですいません。こちらフレイ・A・シュタイン――』
「……え?」
なんか見知った人の顔が出たなぁとか思って、フレイさんが名乗ったわけなんだけど。フレイさんの階級聞いた瞬間。思わずハンドルを握る手から力が抜けて事故りそうになった。
――side響――
――少し前に遡る。
ギンガと合流したと思えば、近くで横転事故があったらしく、廃棄区画を通ってる場所でも有るからと、そこに来たわけなんだけど。
「妙だな」
「うん。事故は大したこと無いのに、運転手さんすごく怯えてる」
視線を向ければ高速管理センターの警備の人に心配されている。代わろうかと言ったんだけど、管轄外だろうって突っぱねられた。
まぁですよねーと。一応事故ってる関係で、そっち方面の管理局員が飛んでくるんだけど、もうちょっと時間かかりそうだし。
その割にはえらく怯えてるのが気にかかる。
「ギンガ、ちょっと見てて。現場見てくる」
「うんお願いね」
現場検証というか、保存しなきゃいかんから代理でしようと荷台の方へ来たわけだが――
「ギンガ! 直ぐに全面封鎖要請! ガジェットドローンの出現と、それを撃破するだけのアンノウン有りと!」
「……嘘。わかった!」
目の前には既に破壊された、ガジェットドローンの残骸。しかも5機。トラックを襲うには多すぎるし、廃棄区画に迷い込んだものじゃない、意図的にトラックを襲ったものだ。
しかも、未だにスパークしているということは、まだそこまで時間はたっていないが……それを破壊できるだけの何かがいたということ。
「響。連絡して全面封鎖してくれるって。これ、どう捉える?」
「……第3勢力か、もしくは」
視線を荷台のあった場所を見れば……木箱の残骸の中に見える機械的なポッド。大人ならば膝を抱えた姿勢なら入りそうな……いや、子供位なら余裕で入る程のもの。
「……入ってた何かかもしれない」
生体ポッドがそこにあった。
まだ乾いて無い事から、先程まで何かが入ってたということ、それが何かはわからないが……。
視線をずらせば、ギンガの顔色が悪い。きっと、色々想像しているんだろう……人が入っていたら、と。
流石にこういうのを見るのは初めてだったか。暫くそっとしようかね。
……それにしても。
生体ポッドが、えらく綺麗に破壊されていること。まるで、安全に外に出す事を目的としたように、綺麗にクリアパーツを切り抜いてる。
周りのガジェットも、何かに斬られてるようだし……しかもこれ。
[主、これって]
「分かってる。頼むから言うなよ? 唯でさえ俺の立ち位置不味いんだから」
……俺だったらこう斬るっていう場所だった。
やだーもー。ギンガと一緒にいるとは言え、お前だろって決めつけられたらしんどいなー。
その上……。
「何か引きずっていったのは、わざと持っていったのかな?」
視線を下に向ければ、何かを引きずったような跡が複数あり、それは、地下高速の避難経路に向かって真っ直ぐに伸びていた。
このまま追跡するにせよ、事故現場をそのまま放っておく事はできない。
そして、そこに休みのはずのキャロから連絡があった。
『こちらライトニング4。緊急事態につき、現状を報告します』
切羽詰まった声を聞いて察した。
これに関係あるな、と。
『サードアヴェニューF23の裏路地にて、レリックと思わしきケースを発見。ケースを持っていたらしい、小さな女の子が一人』
『女の子は意識不明です』
キャロに続いて、エリオからの女の子の状態を聞いて。
「……大当たり、女の子かぁ」
……嫌な思い出が蘇る。あー……くっそ。
「響? 大丈夫、顔色悪いけど……?」
「ん? あぁ。平気、ちょーっとな。こういうの苦手なもんで」
……さ、切り替えよ。
「ちょっとフェイトさんに連絡入れる。ちょっと調べててくれる?」
「うん。お願いね」
花霞を使って、フェイトさんに通信飛ばして。
『響。直ぐにギンガを連れて……って、何処に居るの? なんだか暗いけど?』
「地下高速です。いつもどおりのギンガと廃棄区画捜査だったんですが、事故があったので確認していましたが……そこで嫌なものが。花霞、データ送って」
[了]
通信の合間にこちらで見つけたデータを送ると、画面の向こうでフェイトさんの顔色が変わる。
あの人にとって、これが何を意味をするのか直ぐに分かったんだろう。
『了解、こちらに合流できそう?』
「えぇ、まもなく管轄の局員が来る頃合いなので、引き継いでから向かいます」
『わかりました。気をつけてね』
「ありがとうございます。失礼しました」
通信を切ろうと思ったけど、心配そうにこちらを見てるのが気になって。
「……あの、何か?」
『いや、あの……大丈夫? 顔色悪いようだけど?』
……あぁ、顔に出てたのか。駄目だなぁ。
「……モニターの反射光ですよ。そちらもお気をつけて」
『そ、そう。うん。じゃあまた後で』
敬礼してから、今度こそ通信を切って。一息ついてから。
「響、管轄の部隊の人たちに引き継いだわ。何時でも行けるよ」
「流石ギンガ。助かるよ」
「気にしないで。さて、2人でこうして出るのは初めてね」
「まぁ、なんとかなるだろ――よろしく頼む」
「――こちらこそ」
同時にバリアジャケットを纏う。ギンガはいつもの、俺は花霞……ではなく、いつもの方を。ちゃんとした出撃と、未だにきちんと魔力還元が上手く出来てないからというのが理由だ。
さて、行くか。
後書き
長いだけの文かもしれませんが、楽しんで頂けたのなら幸いです。ここまでお付き合いいただき、感謝いたします。
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