| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

戦国異伝供書

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第四十九話 小田原へその八

「関東攻めにあたっても」
「力を貸してくれますか」
「そうなりますので」
 それ故にというのだ。
「この度はです」
「やはり受けるべきですか」
「はい、必ず」
「殿が正道を歩まれるなら」 
 柿崎の声は誰よりも強いものだった。
「関東管領になられるべきです」
「必ず」
「ですから」 
 それでというのだ。
「どうかです」
「上杉様の申し出を」
「お受け下さい」
「そなたもそう言うのですね」
「左様です」
「そうですか、ではこのことに異の者は」
 是非にという意見ばかりだ、それでだ。
 ここで景虎は逆にこの件について反対の者はいるかと問うた。だがどの者も確かな声で彼に言うばかりだった。
「殿、ここはです」
「受けられて下さい」
「そしてそのうえで、です」
「上杉家の主、関東管領となられ」
「そしてです」
「正道を歩まれて下さい」
「正道を歩まれて」
 兼続も言ってきた。
「そのうえで」
「天下をですね」
「正して頂きたいのです」
「その為にも」
「はい」
 まさにというのだ。
「この度はです」
「左様ですね、では」
「上杉様にですね」
「後日です」
 日を置いてというのだ、これはさらに考えて結論を出すということだ。こうした時は景虎は熟考するのだ。戦では果断であるが。
「返事をします」
「では」
「その様に」
 こう言ってだった。
 景虎は暫し日を置いてそうしてだった、自ら憲政のところに赴きそのうえで彼に対して直接言った。
「先日の返事ですが」
「家督のことですな」
「はい、そのことで」
 上杉家のことでというのだ。
「是非です」
「返事をですね」
「させて頂きたいのですが」
「ではです」
 それならとだ、憲政も応えて述べた。
「お聞かせ下さい」
「それでは」
 景虎は一呼吸置いてそのうえで憲政に答えた。
「慎んで受けさせて頂きます」
「そうして頂きますか」
「そしてです」
「関東管領としてですね」
「東国の公を戻します」
「幕府の下において」
「関東公方様を戴き」
 関東管領として、というのだ。
「その様にさせて頂きます」
「有り難きこと、それでは」
「はい、これからはですね」
「貴殿は上杉家の主です」
 そうなるというのだ。
「そしてです」
「関東管領となり」
「東国の仕置きをして頂きます」
「それでは」
「その様に」
「宜しくお願いします」
「そしてですが」
 憲政はさらに言った。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧